27 早めの計画
俺はレベル3になって手に入れた『聞き耳Mod』を使って、審判とケイトの会話に耳を澄ませていた。
【審判:ひとつ、お伺いしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?】
目の前に会話の内容がアーカイヴスに展開されたので、Modを使用したままその表示に目を走らせる。
【ケイト:な、なんだ?
審判:さっき、ポール選手を素手で殴り飛ばしたように見えましたが、あれは魔法ですか?それとも体術ですか?】
その審判の質問に、俺はある仮説が思い浮かんだ。
たしか、ケイトのレベルは1だが、ステータス上はレベル2と同じ数値だったはずだ。えっと、先天性チートなんとかってModのせいだろう。
たぶんだけど、その影響であんなに吹き飛んだのだと思う。
【ケイト:困ったな……。
審判:そこをなんとか!今回のあれが魔法だった場合、ポール選手の点数に後々影響が出るんです。貴女だって、長い時間お話ししたくはないでしょう?】
あぁ、ようやくわかった。
つまり審判は、ポールとかいう選手の魔法で、魔力の動きがよく見えなかったから、彼女が魔法を使ったかどうかの判定に悩んでいるんだ。
審判は公平な立場で審査をする必要がある性質上、不安定な要素があると後で苦情が来たりして厄介なことになる。
【ケイト:影響って、例えば?
審判:貴女の順位が、わずかな誤差で生徒会に選ばれたり選ばれなかったりですかね】
ケイトは思案するように眉値を寄せると(レベル3取得『鷹の目Mod』による視力強化で確認)肩を竦めた。
【ケイト:今回のは体術ということにしておいてよ。
審判:……承知しました】
彼は少しがっかりしたように了承すると、元の席へと戻っていった。
俺はModをOFFにすると、聞こえてくる主催者の声に耳を傾けた。
「それでは、勝負の結果が纏まりましたので、お伝えいたします!勝者、ケイト・ハートフィリア選手!第二回戦進出です!それでは、次の対戦相手は──」
ざわざわした観客席の中、俺は苦笑いを浮かべた。
全く、こんな雰囲気の中でよくやるものだよ。
「ご主人様、あの、お手洗いに行きたいです」
「あ!じゃー、ワタシもイクデース!まーくんはどうするデスか?」
不意に尋ねてくる幼女二人に、ついでに俺も済ませておくと言うと、三人はその会場をあとにした。
用を済ませて、トイレの前で待っていると、ようやく二人が姿を表した。
「ケイ、ちゃんと手を洗ったか?」
「ご主人様、レディにむかって失礼ですよ!」
冗談混じりに言った言葉に、ケイがほほを膨らませて注意してくる。
「アハハ!まーくん、怒られてるデス!」
そんな様子のどこが面白かったのか、マフユは指を指して笑っていた。
「にしても、驚いたよなぁ。まさか、最後に素手で決着つけるなんてさ」
「帰ったらお祝いしないとですね、ご主人様!」
マフユの反応をスルーする二人に、若干拗ねたのか、彼女はケイに飛び付きながらこう言った。
「じゃあ、そのパーティーにはワタシも参加するデス!ホラ、前にマーケットでした約束覚えてるデスか?」
あぁ、たしかそんなこともあったような気もするなぁ。
「ソレ、今日ヤるデス!」
すると、そんな彼女に干戈を取られたのか、ケイはそれに賛成する旨を伝えた。
「それじゃあ、あとは問題はユウカだな……」
アイツが、俺たちがこっちに観戦に来ている間に、食糧を全て食い尽くさないか心配だ。
そういえば最近、狩りでレベリングの他に魔界に潜入するための資金稼ぎも行っていたためか、生活費に充てている分にも相当な潤いがある。
今日くらい、この生活資金でケイトを祝ってやってもいいだろう。
そんな時期早々な計画をたてながら、二人は観客席へと戻っていった。




