22 防御魔法は難しい
「──ということで、今日からは魔法祭に向けて、防御魔法について説明しようと思います。1時限目は座学にて、防御魔法とは何かを学び、続く2時限目からは、ナツメ先生の指導で、外に出て実際に防御魔法を実践します。ここまでの授業内容に質問のある人は居ますか?」
翌日。
教卓の前には、所謂ブルマなるものを着用した、ジャージ姿のレイチェル先生がいた。
なぜブルマ……。とかいうそういう疑問以前に、この世界にもそういうモノがあったことに驚いた。
「はいは~い!レイチェルせんせー、その服装寒くないんですか?」
お前が言うか!
と、思わず突っ込みそうになる心を必死に抑えながら、俺は後ろを振り向いた。
半袖半ズボン。ブルマでない分まだマシとでも言えるかも知れないが……。
でも、その指摘をケイトがするのはどうかと思うぞ、正直。
「問題ありません。私くらいの腕前になれば、このくらいの寒さなんかちっとも……へっくち!」
金髪巨乳の盛大なくしゃみが、教室に少しの沈黙を迎え入れた。
その振動で、ぷるんとその両胸が上下に揺れる。
多くの人が釘付けになる中、ロリコンな俺はそれに対して興奮することはなかった。
やっぱり寒いんじゃないか……。
それを見て苦笑するクラスメイトたちに、頬を紅潮させるレイチェル先生。
すると彼女は、こう言った。
「……い、今のは……そ、その……そうです、花粉症。最近、トウスグの花が咲き始めたでしょ?」
【トウスグ:冬から春にかけて咲く、六色の六枚花弁をもつ花を咲かせる被子植物。
花が散る夏ごろに実を落とし、先端についた曩と呼ばれる部分から花粉を散らす。
散った花粉は風に運ばれて雌の木に運ばれていく】
なるほど、わからん。
っていうか、自動でQ&Aが発動するのってちょっとうっとうしいかな……。
「設定、変更した方がいいかな……」
ふと、俺はアーカイヴスに呟いた。
すると、レイチェル先生が、真っ赤な顔をさらに赤らめた。
防御魔法とは、物理的作用から精神的作用まで、あらゆる攻撃や害などから身を護るための魔法のことをいう。
魔力には火、水、風、土、光、闇の六属性がある。
例えば、火魔法に対する防御魔法を構築したいとしよう。
この場合に用いられる防御魔法は、火に強い水の属性を使用して、魔法の進路を阻むように壁を設置する(水壁)。
このように、相性の良し悪しを考えて壁を作ったりするのが、物理攻撃に対する防御魔法である。
精神攻撃の場合も同様だが、この場合は精神復活と呼ばれる。
「──そして、この防御魔法を構築する時、その防壁の強度も重要となります。ケイトさん、この時に使用される公式は何ですか?」
「え!?え、え~っと……ごめん、ウィル。なんだっけ?」
小声で後ろから答えを求めてくるケイトに、俺は小声で答えを教える。
「魔力の循環公式。A-(B×C)」
「えっと、魔力の循環公式です!ありがとな、ウィル。助かった」
「どういたしまして」
彼女のお礼に、小さく答える。
最初に来たときは、この式の意味がよくわからなかったが、アーカイヴスを理解した今の俺にならば、この意味は理解できる。
この式はつまり、自分の放った魔法の攻撃力は、『自分の放った魔法の魔力』から、『『場の魔力』と『相手の使用した防御魔法の魔力』を掛け合わせたもの』を引いたもの、っていう意味だ。
掛け算する理由は、これが場の魔力と融合して、消費した部分が霧散するからである。
つまり、魔力は最終的に、場の魔力に帰るということだ。
この公式の解がマイナスの場合、防御は成功するが、プラスになった場合、防御は打ち破られる。ゼロの場合は相討ち。
……簡単に説明すれば、自分が相手より強けりゃ、まず問題ないってことだ。
上手な使い方をする人は、ここにライデンフロスト現象やマイスナー効果といったものを利用するものだが……。
まぁ、そんな難しい話は置いておくとしよう。
やっぱり魔法って難しいってことがわかれば、それでいいんだし。
そんなこんなで、1時限目終了のチャイムが鳴った。
次は外で防御魔法の実践である。




