紫煙の霹靂
この話に役者は登場しない、
湧き起こる悲鳴、逃げ惑う人々。赤い絨緞に横たわる生気の失せた死体は、凶器から逃れようと必死な者達の些細な障害となりその足を躓かせ。『あっ』と思う間も無く、刎ねられ、斬られ、鮮血を撒き散らした。また一人、牙に掛かる「…くっ…」競り上がった血液が染み一つ無い服を濡らす。白が赤に淘汰された、
しかし、床に伏した彼らは(招待客の)一部でしかなく。一方的な惨殺劇を容認できる筈も無い、武器を取り応戦する手練れも大勢いた。何せ、数(=武力数)とするなら圧倒的に闖入者の絶対数が少ないのだ。一時、奇襲によって被った悲劇も巻き返し形勢は逆転した。破砕して乗り込んできた連中を押し返し、戦線も後退していく…。(一方的な恐怖は払拭されつつあった、)
一発の銃声が入り乱れた騒音を切り裂く、天に向けられた得物にある者は不利を悟り、ある者は呆けた(一瞬の差が明暗を別ける)。逸早く反対方向へ駆け出す幾らかの議員。身内だけを的確に連れ出すあたり、さすがと言えよう。若しくは大人しく標的にされた若者(彼は偶然居合わせただけの一般人だった)。大多数を混乱に陥れない為の苦肉の策(間接的)とは言え犠牲を支払う選択だった。
突如、肉といわず身が飛び散った相方に目だけが隣を窺い。ゆっくりと瞬いた、同時に降り注ぐ“何か”そう『血』だ。憶えず拭い掛けてはたと停止する「い…、いやああああああああああああああああああ」劈く声は一体何者の発する音か。愛した過去を捨てて、女は一目散に訳も判らず迫り来る危機から逃げ出していた。
俄か騒然となった会場、誰もが我先にと他人を押し退けてでも生きようと試みた。人間究極の選択、追い詰められた実際問題、己の信念を貫くだけの強靭さを持ち合わせているのだろうか?愛を嘯き後悔する未来等という不幸を確信する日が待ち侘びていた等と、少なくともこの場で無残に殺された紳士淑女達は束の間の安寧をひたすら信じていたのだろう。
幸いにもこの際、死傷した要人はわずかばかりで政治体制は依然、維持されている。(最悪、大多数が死傷しても後釜を入れ替えるだけ)大した震撼も齎せなかった“賊徒襲来”は、また一つ人類の愚かさを露見させ。手痛い教示としてそれぞれに知らしめたのであった。
後々、加筆修正。




