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反逆の心臓  作者: だいふく丸
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第2話【3】

「井口少佐、ここからは私が代わります」


 ミラー越しに様子を伺っていた、ニンジャ家系の証、桜家紋の額当てをする心霊公安官が姿を現した。両腕には術式が刻印されている小手を装備する。


 心霊公安部きっての若手キャリア、桜ノ宮勇月さくらのみやゆづき少佐だ。  


 彼は三ノ宮の一角、桜ノ宮の血筋だ。クリーニングされたばかりか、制服から石鹸のいい香りが漂う。


「やっぱり、犯人は桜ノ宮少佐ですか」


 井口と松永がすれ違い、部屋を出ていく。朝食を取りに外食へと行くようだ。


 二人きり、近藤は眠いのか目ヤニを取る。向かいの席に座る公安官はつららのよう、細く冷たく鋭い視線を送った。


「私に向かって犯人とは……この反逆者のガキが、身の程を知れッ!」


 その怒声に眠気が吹き飛ぶ。


「ああ、暗殺者の子供ですよ。そうやって霊道院時代も差別されてきたっけ?」


「その御託は聞き飽きた。暗殺者の子供は事実だ」


「御託じゃねーよ。俺が国家霊道士となった理由にして、俺が生きる最大の動機だ」


「そして、私と同じ心霊公安官に出世し、ゆくゆくは護神庁長官になりたいと」


「ああ、そうだ。三ノ宮ではない人間が護神庁長官になる。史上初だ。殺人者のガキが行政機関の長官なんて、ありえないよな。途中で暗殺されるかもな」


 おどけるよう両手を広げて、近藤は皮肉を込めた。事件当時の憂鬱だった自分と今の自分は違う。慈愛を示す、右手中指のハートの指輪が彼の信念だ。


「護神庁長官になるべく、出世のために許可なく死神と戦ったと言うのか?」


「それは違う。報告する時間がなかった。不可抗力だ」


「煙幕弾を撃ち、私が来るまで戦闘態勢を整うこともできたはずだが?」


 新たな取調官の主張は一理ある。アカバネノカミがピンチだったため、近藤は冷静さを欠いて戦闘を行った。しかも相手は死神、自分の実力を試したかったかもしれない。心霊公安部に通報したのは警視庁刑事課の沖田翼管理官だ。


 唇を噛んで黙ってしまった相手に、公安官は淡々と主張を続ける。


「死神案件は保安部ではなく、公安部の仕事だ。悪霊案件とはわけが違う。しかも、奴が殺神隊に関わっていたなら、広域重大事件だ。ショッピングモールでの立てこもりを陽動に使い、心霊保安官を帯び出したあと赤羽神社を襲撃し、カミを殺そうとした。これは計画的犯行だろう。その理由が近藤愛之助を殺神隊の仲間にすること。なぜ、殺神隊はラブ助、お前を欲しがったのか?」


「俺だって知りたいよ」


「理由は立てこもり犯が叫んだ『不死山が噴火する』に関係すると推察しよう。お前の父親、近藤金之助が処刑台でそう辞世の句を叫び、新興カルト教団『GFE』が誕生した。二年前、GFEは大和江戸城を襲撃し、その後で教祖は自死した。残党となった幹部、御多福幸子おたふくさちこが殺神隊を設立した。GFEの残党組織同士が同盟を結び、きっかけとなった男の息子、近藤愛之助を仲間にし、国内最大級のテロ組織を結成する。近藤金之助は大統領暗殺事件を起こす前に、水面下でGFEを設立すべく動いていたとすれば、何か大いなる計画のために、お前を……」


「意義あり」と、右手をあげた。


「俺の父さんは絶対にカルト教団やテロ組織の創設者でも協力者でもないし、父さんの部下だった土方さんや沖田さんがそう証明している。時系列がめちゃくちゃだぞ。GFEは父さんが処刑される前に設立されているんだぞ?」


 そうか、と勇月は気にも留めずに主張を続ける。


「怪しい動きがあったとも証言している。事件前、近藤金之助は財閥の資産家や元大統領、さまざまな学者とたびたび密会していた。そして、そのうち四人は自殺だ」


「それこそ怪しいだろう。お前の両親を暗殺した女みたいな陰謀論だよ」


 近藤金之助が大統領を暗殺する一年前、代々木神宮本殿内にて桜ノ宮勇月の両親は謎の女に暗殺された。母親は次期天守様候補とされる、桜ノ宮の姫様であった。暗闇の中の犯行であり、女について詳細は不明だ。その翌年に起きた大統領暗殺事件の衝撃さゆえ、国民から忘れられつつある事件でもある。


 


「私の父と母の事件は、お前の父親との事件とは関係がない」


「大ありだ。父さんは大統領室の前で銀髪の女と会ったと証言した。そして、部屋に入ってすぐに気絶したと。気が付いたら、大統領を暗殺したということで池袋神聖堂の監獄にいた。その銀髪の女が何かしたって考えて何がおかしいんだよ」


「その女は、二つの事件に関わっていると言いたいのか?」


「俺はそう信じている。父さんの刀が紛失したのも、その女が持っていったからだ」


「さすが陰謀論者だな」


 やれやれ、と旧友は両手を広げた。


「お前だってそうだろうが……負けました、降参です」


 言い合いに疲れたのか、再び机に顔を埋めた。冷めたい鉄の板が頭に上った血を下げていく。言い負かしたと誇らしげに旧友はほくそ笑む。


「俺の顔に毛虫でもいたか? 近藤家の遺伝だよ、この太眉は」


「いや、すばらしいチャームポイントだよ」


 灰色の上着をパイプ椅子にかけ、代わりに相手のハットを被る。


「三原部長がお前に怒り心頭なんだ。殺神隊の尻尾を捕まえるチャンスを逃した暴れまくっているんだよ。しかも、六色の死神だったと……どうすんだ、ラブ助」


 端的に言えば、虹彩の色は美徳と大罪に比例する。国家霊道士や心霊保安官は一色が多いが、死神は二色以上を持つ場合が多い。


 ちなみに、ラブ助とは勇月が付けた近藤の愛称だ。他に使う同期生はいないが。


「そうだな……あのときみたく護神庁の前でワンワン吠えて、命乞いでもしよう」


 顔を埋めたままの近藤は耳の穴をほじる。ふてぶてしい態度に、旧友はため息一つ、昔話を思い出した。


 


 二人は似て非なる境遇を持つ。両親を暗殺された被害者遺族の桜ノ宮勇月、大統領を暗殺した加害者遺族の近藤愛之助、彼らは父親同士の縁で幼馴染だった。


 二人は十六歳で霊道士養成機関である霊道院に入学した。だが、入学してわずか三か月後に大統領暗殺事件が起きてしまう。当然、近藤愛之助は院内で嫌われた。


 二人は暗殺事件の犯人について何度も激しく議論した。やがて、あるときから勇月は近藤の疑念と覚悟を理解していき、彼とある目標を共有するようになった。


 きっかけは霊道院一学年生のとき、霊能力を競い合う真夏の代々木神宮大会で二人はチームを組んで上級生と戦って勝利してからだ。


 戦闘直後、上級生は処刑された反逆者の子供ということで愛之助を侮辱する。


 だが、彼は十二守護神将が見守るモニターカメラに向かって高らかに宣言した。


『俺は護神庁長官となって、絶対に暗殺事件の真相を明らかにする! それは俺が生きる最大にして、最悪な大罪なんだよ、バカヤローがッ!』


 この《バカヤロー宣言》は護神庁内の上層部で物議をかもした。


 その後、近藤が霊道士国家試験に合格したとき、反逆者の子供を国家霊道士にするとはどういうつもりだ、と当時の護神庁長官に苦情の電話や手紙が多数きたが、


『霊魂を憎んで、美徳を育てる』という護神庁の原則を貫き、長官は許可した。


 この言葉は今を生きる人間を憎まず、それまで穢れてきた霊魂を憎み、美徳を持ってその穢れを晴らすよう生きれば、社会が健全化する意義が込められている。


 この長官は現在の十二守護神将を統括する天将、戌神様の桜ノ宮清太朗さくらのみやせいたろうだ。彼は暗殺された桜ノ宮の姫様の父親で、勇月の祖父にあたる。また、現在の護神庁長官は桃ノ宮の当主が務めている。


 祖父が重んじる勤勉の美徳に、孫は友として近藤愛之助を見守ることにする。


 そして、新米護神隊員となった二人は大和江戸城前で同じ目標を定めた。


『お前より先に、護神庁長官になる』と――。




 ニンジャの証、桜の額当てを外す旧友は過去の自分を振り返る。


「処刑から五年か。改めて考えてみれば、事件をめぐる怪しい情報が多い。当時の自分がいかに感情的になっていたかよくわかる。未だに愛月あづきはラブ助を信用していないが」


 愛月とは勇月の妹だ。桜ノ宮正統継承者であり、未来の天守様候補、姫様だ。


「一般的に考えれば、俺は大統領を殺した犯人の子供だ。そりゃそうだ」


「今や、大統領暗殺事件を調べるのは公安部内でもタブーだが、久しぶりに『不死山噴火』を聞いて、君を挑発してみたんだよ」


 勇月はどこか憎めない笑みを浮かべる。彼がモテる理由だ。


「だから吹っ掛けてきたのね。公安部が嫌われる理由がよくわかるよ」


「公安官たるもの、弁も腕も達者でなければならないからな」


「じゃあ、お詫びにかつ丼を出してくれ」


「かつ丼は出せないが、そのお詫びにその不死山噴火男、西田潤にしだじゅんのことを話そう」


 西田潤とは、赤羽ショッピングモールで立てこもり事件を起こした犯人だ。


「何かわかったか?」近藤の問いに、渋い顔だ。


「結論から言えば、西田潤は別人だった」


「べ、別人?!」結論からでは理解ができなかった。


「仮面に憑依した悪霊が西田潤だったんだ。君の麻酔で眠っていたが、日付が変わる前に目覚めたので、取り調べをした。そこで明らかになったのは、西田潤とされた男は、池袋の会社に勤める社会人で名前は多田野良一ただのりょういち、GEF信者でもない。つまり、仮面の悪霊がGFE信者の西田潤で、多田野は乗っ取られた肉体だ。百聞は一見に如かず、顔写真を見せよう」


 近藤がタブレット画面で確認する。西田潤の顔と立てこもり犯の男の顔が並ぶ。


「多田野曰く、ぬいぐるみを拾ったお礼にキレイな女性から仮面をもらったと。試しに付けたら、西田の心霊に肉体を乗っ取られて制御できなかったと」


「ぬいぐるみを拾ったお礼って……清水スプレーが効かない仮面を?!」


「その通り。ここで重要なのは、清水スプレーが効かなかった仮面を多田野にあげた女がいることだ」


 と、手持ちのタブレット画面を操作する。供述調書を読みながら話す。


「君の取り調べが長い理由は、多田野の取り調べと裏取りに時間がかかっていた。君の反応と同じく、先輩たちは混乱している。なんたって、悪霊を仮面に憑依させる《仮面師》が殺神隊にいるのだから。民間人へ、悪霊を憑依させた仮面をばらまかれたらサイコハザードが起きる。それで、改めて聞きたいんだが……」


 旧友は嘆息を漏らし、冷淡な表情に戻る。


「ショッピングモール立てこもり事件と神社襲撃を結ぶ、この消えた仮面について話してほしいんだよ、近藤少佐」


 階級呼びに記憶を呼び起こす。昨夜の出来事、立てこもり犯と死神の仮面を。


「調書に書いてある通りだよ。あの仮面はコロコロと表情が変わる」


「仮面の表情が変わる?」チェックするが、「書いてないぞ」


「またかよ、書記さん!」


「話したのか? 隠していたら問題にする」


「話したよ、二回ぐらい。死神は十二守護神将みたいな仮面を付けていたと」


 十二守護神将とは護神庁長官直轄部隊で十二支の式神を使役する。護神庁支部である都道府県の神城しんじょう、極悪人や死神を収監する神聖堂しんせいどうを護衛する《心霊守護官しんれいしゅごかん》から任命される。


 ちなみに、三ノ宮は桃ノ宮が申神さるがみ、桜ノ宮が戌神いぬがみ、梅ノ宮が酉神とりがみを原則使役し、十二守護神将はカミをも裁く審神者さにわの実権を持つ。


 愛之助の父、近藤金之助は梅ノ宮の諸事情により、例外的に酉神を担った。残虐非道な死神や悪魔、妖怪の親分を討伐した近藤の部隊は『七翼の武士団しちよくのぶしだん』と異名をとった。




「もう一度いうが、最初見たとき、立てこもり犯の仮面は真っ白ではなかった。能の般若のような面だった。それが心霊の状態で変化するのか、表情が変わった。神社を襲撃した死神は弟が仮面に憑依して、その仮面を付けることで強くなると言っていた。実際、虎の化け物になったし、黄金弾が通じなかった。悪魔かあれは?」


「死神と悪魔は別だ。死神は人間のままだが、悪魔は化け物そのものだ」


「悪魔と戦ったことあるから知っているって」


 霊道院生時代三学年生のときだ。嫌な記憶だ。


 勇月は唇をかみしめる坊主の友人を思いやる。


「思い出させて……すまない」


「いや、こっちこそ」近藤は疑問を口にする。「仮面師は保護されているよな?」


「仮面憑霊術は秘術だから保護対象だ。まさか、仮面師が裏切ったと?」


「そうはいってない。辞めた仮面師が協力していたらって話だ」


「言っているじゃないか。仮面師の個人情報は厳重に管理され、公安部長ですら知らない。心霊守護部の管轄だ。漏れるはずがない」


 心霊守護官は心霊公安官より格上で、主に三ノ宮の宮家や名門武家、キャリア組が務める階級だ。「なら……殺神隊が独自に仮面を作ったのか」


「そう、公安部は考える。仮面が作れるキレイな女性が突然変異で特殊型の霊道士として誕生、護神庁の諜報網から逃れ、殺神隊に流れ着いた。あり得ない話だが」


「そんな話が現実に起きたと」


「もしも襲撃した死神が生きていれば、とっとと事件の真相を把握し、殺神隊のアジトを壊滅できたかもしれない。ボスの御多福幸子を摘発できたかもしれない。が、謎のドクロ仮面がその死神を殺した。そして、その若い青年もみすみす取り逃がしたと……三原部長の暴飲暴食度が増す事件だ。おっと、すまない」


 軽く右手を挙げて無礼を詫びた。三原部長と近藤には因縁がある。


 それに由来する彼の感情が口調を強くしていく。


「怒る気持ちはわかるが、現場、とくに神社を守る側は死神どもの奇襲に対応するのがやっとなんで。そんなに文句を言うなら、いつ・どこで・誰が・なぜ・どんな能力で、どのように攻めて来るのか事前に教えていただきたいものです」


「気持ちはわかる。起こった出来事から情報を一つ一つ整理し、帰納的に相手の動機と計画を推理するしかないのが、我々護神庁の弱点だ。相手が緻密に立てた戦略には、戦術では対抗できない。さらなる戦略で根絶やしにしなければならない。こういう組織的で情報量が多い事件を解明するには、公安部とはいえ分析に時間がかかる。とくに殺神隊のボスが命じて、君を勧誘した理由は陰謀論レベルの話だ」


「御多福幸子が何のために俺を……あ!」


 近藤が思い出す。「勇月、あっちには誰がいるの?」


「誰もいないから雑談を続けているんだが……」


 今までの会話は雑談だったようだ。


 だからパソコンに記録しなかったわけだ、と近藤は緊張の糸を切る。


 指先で顔を寄せさせて尋ねる。


「『ハンスイカイ』って知っているか?」


「はくさい? 食べたいのか?」


「ちげーよ! ハン・スイ・カイだ」


 勇月は天然なところがある。これも彼が女性にモテる理由だ。


「どんな漢字だ?」


「わからない。殺された死神が言っていた。『ハンスイカイが大和をぶっ壊す』って。もしかしたら、死神の新たな組織かもしれない」


 勇月の瞳がきらり光り、ニンジャ式の合掌をした。角膜が桜ノ宮の血統の証である桜の模様に変化する。冗談抜きで尋問をするようだ。


「近藤少佐、かつ丼を奢ろう。さ、ハンスイカイについて話してくれ」


「勘弁してくれよ……帰らせてくれよ……」


 グググ~、腹を鳴らす近藤は何度も腹を鳴らし、覚えていることを何度も話した。




 グググ~、取り調べを終えた近藤の腹はラーメンが食べたいと訴える。


 江戸の中心街はすっかり夜が明けて、護神庁一階の正面玄関からの陽射しがカウボーイハットを照らす。赤羽神社に戻ろうと受付を通ったときだ。


「愛之助じゃないか。朝早くどうしたんだ?」


 と、正面から部下と護衛を従えて京都から帰庁するのは心霊保安部長、土方多歌子ひじかたたかこだ。


 土方は父親の部下だった。高身長で美形な顔立ち、ボーイッシュな髪型で女性職員の憧れだ。若い頃は護神庁のイメージアップのために雑誌モデルを務めていたこともある。年齢よりも若く見られるためか美魔女と称され、庁内外でファンが多い。


 近藤はハットを外し、直立不動で敬礼する。


「お疲れ様です、土方部長」


「聞いたぞ、赤羽で殺神隊の死神が出たとか。その報告か?」


「あ、はい。今まで桜の王子様に取り調べを受けていました」


「だから、眠そうな顔をしているのか」


「はい。徹夜でかつ丼を出さない嫌がらせを受けていました」


「なるほど。仲がいいな、お前たちは」


 あ、近藤は思い出す。「そういえば、昨日の事件で沖田さんと会いました」


「沖田か? 警視庁で元気だったか?」


「元気すぎて、『土方のババア』って言っていましたよ」


「は?」霊力が漏れ、玄関の窓ガラス、観葉植物が激しく揺れる。


「あんの、うつけもんがッ! 警視庁ではなく、鳥取県警に飛ばすべきだった。ありがとう、愛之助。人生の楽しみができたよ。では、引き続き赤羽を頼む」


 何かを決心し、土方は庁内へと消えていく。


 すれ違い際、最後尾の男が舌打ちする。


「まだ辞めてねぇんだな」


 嫌味な男だ。大島翔太おおしましょうた、近藤の同期生でキャリアだ。霊道院時代からとにかくケチ臭く、器が小さいと陰口を叩かれる。デートは割り勘派だ。


「ああ、絶賛活動中だ」


 チ、再び不快感をあらわにする。「オレは認めねぇからな」


「大島に認められなくても、出世はできる」


「何してる、大島」先輩が呼ぶ。


「すみませーん、すぐ行きます! チ!」


 その坊主の先輩も近藤を快く思っていない。一睨み利かせて上官を追う。


《バカヤロー宣言》は味方を作ったが、比例して敵も相当数増えた。


 それでも、彼は気にしない。気にする暇があれば青空を見上げて、いばらの道を生きていくと決めている。


 ハットの顎紐を結び直し、仲間が待つ赤羽神社へと帰った。

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