這いよる者とグリム・クロス
ザックフォードが所持している神格武器『グリム・クロス』は神魔属性を有しているこの世界でも珍しい武器であり、神や魔人には絶大な力を発揮するが、特攻対象ではない人間等に使用してもただの鈍器にしかならないという扱いの難しい武器であった。それ故現状相手の正体がわかってない以上ザックフォードの選択肢から『グリム・クロス』を使用するということが消えた。
前から来る何者かはゆっくりとだが着実に距離を詰めて来ていた。二人は周りに意識を張り巡らせつつ反撃の構えを取った。周りを囲んでいる魔典教団の者達は、その形を縮小化させるような素振りは見せない。
葉っぱが腐敗してふやけた柔らかい森の地面をザックフォードは踏みしめた。ぬらついた感触が伝わってくる。
アルミラとザックフォードは、漆黒に染まる森の向こう側の接近してくる何者かの気配を感じ取る。今夜の月は光輝いてはいるが、雲が多いせいで月の光を当てにするには心もとなかった。
ザックフォードは不意に「後ろに飛べ! アルミラ!」と怒声に近い大声で発した。グリム・クロスが魔法の発動を感知したらしく、ザックフォードはすぐに飛び、一瞬遅れて飛んだ。
ザックフォードは倒れている騎士団員達の合間を縫うように更に奥に下がる。後ろも囲まれているはずだが、それ以上に前から来る者を恐れている。そして次の瞬間倒れている騎士団員達が次々とメリッ、ゴリッと鈍い音を発しながら周りの木々諸共地面に押し付けられていった。
これは重力系の魔法、アルミラがそう思った瞬間さらにザックフォードが手を掴み、腕が抜けるかと思う程の力で後ろに投げた。
「お前は逃げろアルミラ!」
「しかし! 団長! 私も戦います!」そう言うと同時にアルミラが、結合精霊召喚『風水のシルフィーネ』と唱えた。そして『アイシクル・バレット』と唱えてレイピアの先から氷の弾丸を前方に向けて放った。しかしその弾丸は暗闇に飲み込まれ消え、まるで手応えというものがなかった。重力魔法を食らった騎士団員達の生死がわからない以上強力な魔法は撃ちづらい。
「お前一人なら上に飛んで逃げれるだろ!」なおもザックフォードはアルミラに対して逃げるように促す。
これ以上はザックフォードの邪魔になる、そう判断したアルミラは二重詠唱『ウィンド・フェザー&ウェイト・ロスト』を唱えて上空に飛んだ。




