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【完結】クリムゾン・コート・クルセイド Vol.Ⅱ ”平和たる軍靴"  作者: アイセル
第八章 Reckoning

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落とし前―①―

当作品の無断転載、AIを含めたあらゆる二次利用を禁止します!!

Do not reupload / use my writing for any purposes, including for AI!!

4月15日 電源カフェ "アルティザン" 午後6時17分


 ロックの目の前で、害意の牙を剥く硝子の欠片たち。


 苔色の外套(コート)を着たブルース、飴色のジャケットを着たサミュエルが前に出る。


 二人が右手を突き出すと、悪意のスパンコールが回折した。


 "命熱波(アナーシュト・ベハ)"発生時に出る特殊な電磁波の結界――"磁向防《スキーアフ・ヴェイクター》"――が、ブルースとサミュエルの背後を守る。


 "命熱波(アナーシュト・ベハ)使い"の龍之助と一平の二人も、"磁向防《スキーアフ・ヴェイクター》"を出せないわけではない。


 ただ、彼らの培ってきた経験が実戦に伴わない。


 まして、彼らの関係者で"命熱波(アナーシュト・ベハ)"を使えない、キョウコとアカリという一般人もいる。


 ロックの見る限り――丸腰の堀川と秋津の前を守ったのは、サキだった。


 彼女の"命熱波(アナーシュト・ベハ)"である、"ライラ"と"ヴァージニア"の二名が躍り出て"磁向防《スキーアフ・ヴェイクター》"を展開。


 サミュエル、ブルースとサキの覆う結界の裏で、一平と龍之助が隠し持っていた各々の"命導巧(ウェイル・ベオ)"を掴む。


 一平が両拳に"ライオンハート"を装着、硝子がまばらに残る窓際に向けた。


 矛槍型"命導巧(ウェイル・ベオ)":"セオリー・オブ・ア・デッドマン"を構えた龍之助も出る。


 硝子の雨が途絶えると、ブルースとサミュエル、サキも自分の"命導巧(ウェイル・ベオ)"を取りに戻った。


 サキが秋津と堀川に背後へ付くように、右手で促した。


 彼女が振り返りざまに、ロックを見る。


 彼女の眼に映った背(・)後(・)の(・)人(・)影(・)。


 紫電を帯びながら、電灯を破壊して現れる。


 ロックは、人型の雷鳴に右後ろ回し蹴りを繰り出した。


 ロックの鉄板を仕込んだ靴――その踵の槌が、人影の右こめかみを穿つ。


 黒縁眼鏡の角刈り男――確か、カンタ――の右側頭部が、応力に歪んだ。


「弟(・)弟(・)子(・)、下がれ!!」


 凛華の怒声とともに、ロックの前の空間を白銀が両断する。


 白銀がカンタの立っていた場所を破砕。


 しかし、紫電で炸裂したフローリングの足元から、大柄な角刈り眼鏡の男が消える。


「……腕は衰えてないようだな、姉(・)弟(・)子(・)サ(・)マ(・)?」


 ロックは右手に持っていた翼剣の"命導巧(ウェイル・ベオ)":"ブラック・クイーン"を構える。


 前を見据えると、カンタという大柄の男がロックと凛華から、離れていた。


 何故か半裸で、出入口の近くに立つ"政声隊"の一員、カンタ。


 肌の空気が冷たいのか、ロックの知るところではない。


 彼の眼が怒りと恨みの感情にあふれ、それらに震えているように見えた。


「……目(・)の(・)前(・)の視(・)覚(・)的(・)公(・)害(・)に(・)つ(・)い(・)て(・)考えたくないが、知り合いか?」


 ロックは構えながら、凛華とカンタを見据える。


 凛華の両手には、90センチほどの反った刀。


 日本刀の形状から"大太刀"と言われている。


 凛華の得物が一(・)般(・)的(・)な(・)大(・)太(・)刀(・)と(・)一(・)線(・)を(・)画(・)し(・)て(・)い(・)た(・)のは、柄(・)に(・)刻(・)ま(・)れ(・)た(・)模(・)様(・)だった。


 二尾の魚と大きな鳥。


 有機的な被写体だが幾何学的な技法により描かれたそれは、ロックの中で"トーテム"という土着信仰を連想した。


「アタシの高校生の時の教育実習生。その糞野郎は、目を付けた女子にセクハラというよりは性(・)暴(・)行(・)をや(・)ら(・)か(・)し(・)た(・)変(・)態(・)……み(・)ん(・)な(・)の(・)前(・)で(・)ぶ(・)ち(・)の(・)め(・)し(・)て(・)追い出したけど!!」


 凛華が吐き捨てる。


「アンタの所為で……教員の道を断たれたのよ!!」


「じゃかあしい!! 『テメェが女に生まれなかった』からと言って、その鬱憤をセクハラや体罰で晴らす性(・)自(・)認(・)ど(・)こ(・)ろ(・)か性(・)根(・)そのものが、ね(・)じ(・)腐(・)り(・)き(・)っ(・)た(・)ク(・)ソ(・)ゲ(・)ス(・)野(・)郎(・)!!」


「暴言よ!! L(・)G(・)B(・)T(・)へ(・)の(・)ヘ(・)イ(・)ト(・)だわ!!」


 目の前のカンタが揺らぎ、青緑の閃光がロックの眼を覆った。


 半裸の巨体を雷鳴が覆う。


 痩躯で巨大な人型の雷鳴となり、カンタが凛華を捉えた。


「踊(・)れ(・)、"悪趣(バッド・ハビット)"」


 凛華の大太刀が鞘に擦れる声と共に、刀身が煌く。


 一筋の雷霆と化したカンタに、白刃が疾走(はし)った。


 雷の"物の怪"と化した眼鏡男の身体が二(・)つ(・)に(・)割(・)れ(・)る(・)。


 閃光が晴れた時には、星屑の目元をしたロックの姉弟子の右足がカンタという大男の鼻を潰していた。


 その勢いで、凛華の右脚の一踏みが、カンタの後頭部を板張りの床に縫い付ける。


 カンタの身体には、斬閃の跡が右肩から腿の真ん中にまで達していた。


 そして、凛華の踏みつけた衝撃で、右肩の切れ目から腕が取れようとしている。


「じゃかぁしい、小悪党!! 属(・)性(・)を(・)盾(・)に(・)し(・)て(・)、テ(・)メ(・)ェ(・)の(・)悪(・)事(・)か(・)ら(・)逃(・)げ(・)て(・)ん(・)じ(・)ゃ(・)ね(・)ぇ(・)よ(・)!!」


 カンタを見下ろし、焼き尽くさんとする凛華の怒りは、さながら業火の熱に揺れる曼殊沙華を思わせる。


「ついでに言えば、テメェ……エロDVD、エロ漫画にエロ雑誌の規制を煽る真似して、通販サイトで高値に釣り上げて転売していたこともあったな!! エ(・)ロ(・)が(・)嫌(・)い(・)と(・)言(・)っ(・)て(・)物(・)分(・)か(・)り(・)の(・)イ(・)イ(・)"オ(・)ネ(・)エ(・)面(・)"で(・)女(・)性(・)に(・)す(・)り(・)よ(・)り(・)な(・)が(・)ら(・)、乱(・)暴(・)し(・)て(・)い(・)る(・)"狡(・)っ(・)か(・)ら(・)い(・)エ(・)ロ(・)オ(・)ヤ(・)ジ(・)"に対しては"ゲ(・)ス(・)"という言(・)葉(・)す(・)ら(・)も(・)"贅(・)沢(・)"な(・)ん(・)だ(・)よ(・)!! なんだったら、『勃(・)っ(・)て(・)ま(・)す(・)、掘(・)っ(・)て(・)く(・)だ(・)さ(・)い(・)!!』って描いた看板をテメェの首にぶら下げて、風(・)に(・)ゆ(・)れ(・)る(・)テ(・)メ(・)ェ(・)の(・)情(・)け(・)ね(・)ぇ(・)イ(・)チ(・)モ(・)ツ(・)の(・)付(・)い(・)た(・)下(・)半(・)身(・)を(・)駅(・)前(・)の(・)広(・)場(・)に(・)晒(・)す(・)ぞ(・)、このド(・)グ(・)サ(・)レ(・)が!?」


 ロックは、凛華と言う姉弟子について、同じ師を介してでしか知り合っていない。


 そんなに長い付き合いでもない。


 だが、彼女の感情の爆発というのを見たことがなかった。


 それでも尚、馬の合わない姉弟子に一(・)つ(・)だ(・)け(・)気(・)が(・)合(・)う(・)こ(・)と(・)。


 唯一、自分の免罪符であった"性(・)的(・)志(・)向(・)"。


 そ(・)れ(・)に(・)よ(・)る(・)女(・)性(・)へ(・)の(・)憎(・)悪(・)の(・)正(・)当(・)化(・)を(・)潰(・)さ(・)れ(・)、歪(・)ん(・)だ(・)カ(・)ン(・)タ(・)の(・)顔(・)。


 彼の私怨に満ちた眼差しで励起される、生(・)理(・)的(・)嫌(・)悪(・)感(・)が怒(・)り(・)に出力されていた。


「……回(・)り(・)く(・)ど(・)い(・)こ(・)と(・)は(・)好(・)み(・)じ(・)ゃ(・)な(・)い(・)」


 ロックの一言と共に、凛華の足元で弾ける紫電。


 切り離されたカンタの身体を雷鳴が繋いだ。


 凛華が角刈り眼鏡の肉体から右足を退けると、ロックの右脚からの蹴球蹴り《サッカーボール・キック》が炸裂する。


 ロックの紅黒の革靴の爪先が、カンタの口腔にめり込んだ。


 後頭部にまで到達した衝撃に揺らされたカンタの頭の上顎から、血と共に歯の欠片が噴き出す。


 叫び声を上げようにも、彼の下顎が外れているので血で詰まった吐息しか聞こえない。


 ロックは"駆け抜ける疾風(ギェーム・ルー)"で加速し、"ブラック・クイーン"のナノチタニウム製の刃を消した。


 刃のない籠状護拳(バスケットヒルト)だけの"ブラック・クイーン"を紅い外套(コート)の革帯(ベルト)に掛け、カンタとの距離を詰める。


 仰向けで紫電の物の怪となりながら、ロックの蹴りの衝撃に乗る、倒錯者――カンタ。


 疾走するロックの左腕が、蹴撃で外れたカンタの顎を掴んだ。


 全身の力を込めた掌底を、角刈り眼鏡の下顎にぶち込む。


 先ほどの蹴りで外れた顎の骨の入る音が、"アルティザン"に響いた。


 ロックの掌底の衝撃によって、下から上への力の流れ(ベクトル)がカンタの大柄な身体を宙へ運ぶ。


 E=MC²の力学によって"アルティザン"の扉が、カンタの巨体越しに爆砕した。

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© 2026 アイセル

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