↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】クリムゾン・コート・クルセイド Vol.Ⅱ ”平和たる軍靴"  作者: アイセル
第七章 Apple of Discord

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

85/175

不和―⑧―

当作品の無断転載、AIを含めたあらゆる二次利用を禁止します!!

Do not reupload / use my writing for any purposes, including for AI!!

「"へ(・)ル(・)タ(・)ー(・)・ス(・)ケ(・)ル(・)タ(・)ー(・)"の召(・)喚(・)……だと!?」


 ロックはブルースの一言に、歯を食いしばる。


 彼の告白によって、励起される衝動を抑えるのに必死だった。


「"命熱波(アナーシュト・ベハ)"……なの、あれ?」


 サキが思いもしない事実に、顔を蒼白させる。


「ああ……"愛されし者の右眼《ジ・アイ・オブ・ジ・ビラブド》"に反(・)応(・)し(・)て(・)た(・)だ(・)ろ(・)?」


 ブルースがシニカルな笑みでサキに応えると、


「……待て、ブルース……それだと、"ベネディクトゥス"の説(・)明(・)が(・)合(・)わ(・)な(・)い(・)ぜ(・)?」


 一平が考え込んでから、疑問を呈する。


「確か、"命熱波(アナーシュト・ベハ)"は"命導巧(ウェイル・ベオ)を起(・)動(・)さ(・)せ(・)る(・)た(・)め(・)の(・)、特(・)殊(・)な(・)人(・)格(・)と聞いたんだけど……」


「"へ(・)ル(・)タ(・)ー(・)・ス(・)ケ(・)ル(・)タ(・)ー(・)"は……"独(・)立(・)し(・)た(・)存(・)在(・)"に(・)聞(・)こ(・)え(・)る(・)……な?」


 一平の言葉を汲んだ龍之助が、ブルースの語った内容を反芻している。


「ブルース、前に"命熱波(アナーシュト・ベハ)"を"魂(・)"とも言ってたな……」


 一平が語る内容は、上万作(あまんさく)市役所での戦闘だろう。


 "政市会"と"政声隊"の戦闘に巻き添えになった者たちから、出て来た青(・)白(・)い(・)何(・)か(・)。


「ちょっと待って……カナダでも、私……見たけど……」


 サキが戸惑い、ロックを見る。


 サキとバンクーバーで初めて会った時。


 ロックが彼女を助け、バンクーバー市内に"ウィッカー・マン"が雪崩れ込んだ時だった。


 同時に"ワ(・)ー(・)ル(・)ド(・)・シ(・)ェ(・)パ(・)ー(・)ド(・)社(・)"の(・)兵(・)士(・)も(・)"ウ(・)ィ(・)ッ(・)カ(・)ー(・)・マ(・)ン(・)"の(・)犠(・)牲(・)者(・)か(・)ら(・)、出(・)て(・)来(・)た(・)何(・)か(・)に(・)市(・)内(・)が(・)覆(・)わ(・)れ(・)て(・)い(・)た(・)。


「……一平、サキ……そ(・)れ(・)も(・)"命熱波(アナーシュト・ベハ)"だ」


 ブルースが首肯する。


「"命熱波(アナーシュト・ベハ)"は……人(・)間(・)に(・)流(・)れ(・)る(・)体(・)内(・)電(・)気(・)を(・)"励(・)起(・)"させたものだ」


 ブルースから語られる言葉に、龍之助の顔が蒼白になって、


「つまり……"リア・ファイル"によって、細(・)胞(・)内(・)に(・)流(・)れ(・)る(・)電(・)気(・)を(・)"強(・)制(・)的(・)に(・)"発(・)電(・)さ(・)せ(・)る(・)……ということか!?」


「その通りだ……一(・)つ(・)加(・)え(・)る(・)な(・)ら(・)、"リ(・)ア(・)・フ(・)ァ(・)イ(・)ル(・)"が体(・)内(・)電(・)気(・)を(・)食(・)ら(・)う(・)と言っても良い……」


「どっちにしても……かなり、悪(・)趣(・)味(・)な(・)説(・)明(・)だね……」


 サミュエルがブルースの説明に皮肉を吐き捨て、運ばれたマグカップを傾ける。


 一口含め、マグカップの底でテーブルを叩くように置いた。


 彼のマグカップの中のココアが水面を揺らす。


「ブルース……それだと、"命導巧(ウェイル・ベオ)"を使える……という部分はどうなるの?」


 サキがブルースから肯定された部分を指摘した。


「サキ……"命熱波(アナーシュト・ベハ)"は体内電気を励起したものだが、そ(・)の(・)中(・)で(・)も(・)特(・)殊(・)な(・)パ(・)タ(・)ー(・)ン(・)の(・)も(・)の(・)が(・)あ(・)る(・)……」


 ロックはカナダで、自らの奥にいた存在を思い出す。


 ブルースの眼に映る思案する自身を見ると、


「そう……お前等が、"命導巧(ウェイル・ベオ)"を使えるのは、"命導巧(ウェイル・ベオ)"に適合する――つまり、ロ(・)ッ(・)ク(・)の(・)言(・)う(・)特(・)殊(・)な(・)パ(・)タ(・)ー(・)ン(・)の(・)――"命熱波(アナーシュト・ベハ)"を移植されている」


 ロックの脳裏に浮かんだのは、"命熱波(アナーシュト・ベハ)"――"洗礼者"。


 仮(・)初(・)め(・)の(・)肉(・)体(・)に(・)入(・)れ(・)ら(・)れ(・)て(・)い(・)た(・)"命熱波(アナーシュト・ベハ)"の"アンティパス"。


 カナダでの戦いで"アンティパス"の語った言葉が、ブルースの言う"魂(・)"と重なり、ロックの心の中で重く圧し掛かる。


「それは、俺たちの使う"命熱波(アナーシュト・ベハ)"の大(・)元(・)の(・)人(・)間(・)が(・)い(・)る(・)……ブルース、そういうことか?」


 龍之助の言葉に、


「正確にはい(・)た(・)、じゃないの……ブルース?」


 ブルースの回りくどさに不満を覚えたサミュエルが、彼の言葉の先を促す。


 彼の眼には――敵意というよりは――ブルースの腹の底を抉り出さんという、義憤の鋭さが宿る。


 ブルースが感情的になることなく、一息吐き出し、


「サミュエル、その通りだ……お前達の"命熱波(アナーシュト・ベハ)"――その提供者は、全(・)員(・)死(・)ん(・)で(・)い(・)る(・)」


 ブルースの言い方は、隠し事は無駄と悟ったのか、思い切ったように見えた。


 だが、ロックはこ(・)れ(・)ま(・)で(・)の(・)や(・)り(・)取(・)り(・)から、ま(・)だ(・)見(・)え(・)て(・)い(・)な(・)い(・)部(・)分(・)を(・)問(・)う(・)。


「ブルース……じゃあ、"へ(・)ル(・)タ(・)ー(・)・ス(・)ケ(・)ル(・)タ(・)ー(・)"は(・)何(・)者(・)だ(・)?」


 "へルター・スケルター"が"命熱波(アナーシュト・ベハ)"とするなら、そ(・)の(・)ベ(・)ー(・)ス(・)と(・)な(・)っ(・)た(・)者(・)が(・)い(・)る(・)。


「……ロック、"命熱波(アナーシュト・ベハ)"は何だ?」


 ブルースに面を食らったが、


「確か、人(・)間(・)の(・)体(・)内(・)電(・)気(・)を(・)励(・)起(・)さ(・)せ(・)た(・)"魂(・)"とも言える存在――?」


 ロックは引っ掛かりを覚えた。


「……待て、励(・)起(・)さ(・)せ(・)る(・)ということは……媒(・)介(・)が(・)あ(・)る(・)!?」


 ロックの言葉に対する反応は、意(・)外(・)な(・)と(・)こ(・)ろ(・)か(・)ら(・)出(・)た(・)。


「待ってください……体(・)内(・)電(・)気(・)でしたよね、それって……"リ(・)ア(・)・フ(・)ァ(・)イ(・)ル(・)"が(・)そ(・)の(・)回(・)路(・)を(・)作(・)り(・)出(・)す(・)……そういうこともあるんじゃないですか?」


 アカリが挙手して言うと、キョウコが驚嘆した。


「その通りだ」


 ブルースが肯定し、


「事の始まりは、2009年……日本の広島県で発掘された"遺跡"で発生した」


 彼が言葉を紡ぎ始める。


「"遺跡"には"リア・ファイル"に限らず"UNTOLD(アントールド)"に関連した物が多く出土され、調査が行われようとしていた」


 ブルースの言葉に、ロック達が息を呑む。


「しかし、そんな時……その"リ(・)ア(・)・フ(・)ァ(・)イ(・)ル(・)"によって、"遺(・)跡(・)"に(・)あ(・)っ(・)た(・)も(・)の(・)全(・)て(・)が(・)掌(・)握(・)さ(・)れ(・)る(・)という事態が発生した」


「……それが、"へルター・スケルター"……?」


 ロックは絞り出し、ブルースが首肯し、


「そうだ……しかも、"へルター・スケルター"を中心に世界中にある"遺跡"のコントロールすべてが掌握されてしまい、"ブライトン・ロック社"は混乱した」


 ブルースの口調に淀みはないが、その内容には重さがあった。


 ロックだけでなく、サキ達もその重さを噛みしめている。


「当然、"UNTOLD(アントールド)"に関係した組織も混乱を極めた……敵対している"ホステル"、"ワールド・シェパード社"に"望楼(ヴェルヴェデーレ)"……いずれかの組織と協力関係にある、政府や行政機関も例外なく」


 ブルースが紅茶を飲み、口を潤している。


 その傍らにある可搬型演算器(ラップトップ)の中のナオトの顔色が、真実の痛みに曇っていた。


「調査を進めると"へルター・スケルター"は意思を持っていることがわかり、"ブライトン・ロック社"はコンタクトを試みた……」


 ブルースの額の脂汗が照り付ける。


「……それで、"へルター・スケルター"は?」


 龍之助が身を乗り出すと、彼の側にいる赤い少女――"アイ"の顔に苦痛の色が僅かに表れた。


「"へルター・スケルター"は、一(・)つ(・)だ(・)け(・)条(・)件(・)を(・)出(・)し(・)て(・)き(・)た(・)……」


 ブルースが紅茶の入ったマグカップをテーブルに置くと、


「"命熱波(アナーシュト・ベハ)"が、肉体の体内電気を励起しているモノから作られた……だから、そ(・)の(・)容(・)れ(・)物(・)に(・)当(・)た(・)る(・)肉(・)体(・)が(・)欲(・)し(・)い(・)と……」


 ロックはブルースの告白に言葉を失った。


 大袈裟ではないが、一瞬呼吸の方法を忘れたかのように、サキも口を開閉させている。


 サミュエルとシャロンが、自分の組織の関与していた事実に呻いていた。


「……肉体だと!?」


「シンプルに、肉体があって"命熱波(アナーシュト・ベハ)"がある状態だから、"命熱波(アナーシュト・ベハ)"に合う肉体が欲しいってやつだ」


 龍之助の抗議にも似た口調に、ブルースが肩をすくめる。


「……それで、提供したのか?」


 ロックは口を重々しく開いた。


「『提(・)供(・)は(・)す(・)る(・)』……と同意した」


「ロック、止めて!!」


 サキの制止する声が、"アルティザン"に響く。


 気づけば、自分に向かって、龍之助と一平も椅子から立とうとしていた。


 ロックは呼吸を整えると、ブルースに先を促す。


「渡すつもりはない。だが、"へルター・スケルター"を引き付ける為に、奴(・)の(・)求(・)め(・)る(・)肉(・)体(・)でお(・)び(・)き(・)寄(・)せ(・)る(・)作(・)戦(・)を(・)立(・)て(・)た(・)」


 ブルースの言葉に、龍之助の顔色が消えていく。


「待て、それでは……"そ(・)の(・)肉(・)体(・)"とは……!?」


 振り絞るような口調の龍之助を、ブルースが見据える。


 苔色の外套(コート)の男はやがて、上に目を向けた。


 ロック達も、翡翠色の視線の先を辿る。


 全員の視線が、赤い少女――"アイ"に注がれていた。

面白いと思ったら、リアクション、評価にブックマーク、よろしくお願いいたします!!


© 2026 アイセル

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。