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川は海へ続く2



その願いが叶ったのは少し経ってからの事。


体が安定すると平衡感覚を取り戻し地面に足がつく。流される事なく立つ事が出来た。


ホッ、と息を吐き若干涙目になりながら心の中で土下座するほど感謝しつつ、もう調子に乗りません、とルイはその場限りの誓いをする。


流されたせいで川の様子が少し変わって見えた。


琥珀色の枝は完全に姿を消し、今度は暁色の魚の姿が目につくようになる。川底の石には沢山の苔がついていた。


昆虫のバッタに似た足の長い生物が、頭を上下に動かしながら削るようにして食べている。見た目は不気味だが草食系で近づいても襲って来る事はなかった。


蝶の羽に丸い球体がついたような生物もヒラヒラと優雅に泳いでいる。


川の流れも早くないので下流の方が上流よりも穏やかに見えた。


海まで思ったよりも時間はかからないかもしれない。そんな事を思いながらルイは休憩をとり、楽しく歩き出す。気分は良くなっていた。


魔海獣も当然いて、周辺を我がもの顔で歩いている。

今、前を横切っていった魔海獣はヒレの生えた芋虫に似ていたのでルイの背中が寒くなった。


そんな事が何度もありながらも進んで行くと、ようやく海に辿り着く。海面から顔を出して確認したので川ではない事は確かだった。


遠くの岩の上で魔海獣が飛び回り、海に飛び込んで行き、足の太い鳥が海面に下降して魚を掴んで上昇するのも見える。


川の中で回転した時にはどうなるかと思ったが、こうして無事にここまで来れた事にルイはもう一度感謝した。


それから海の中にまた戻り、辺りを見渡す。


「やっぱり海は良いわね」


目の前には海の魚が泳ぎ、岩も沢山ある。その間から貝などが見え、魔海獣も闊歩し、甲殻のあるものから軟体のものなど様々だった。


陸よりも海が得意なルイは瞳を輝かせる。


このまま行ける所まで行こう、と思いながら楽しそうに歩いた。


浅い場所は空からの光が海に降り注いでとても綺麗だ。その中で尾びれの長い魚が優雅に泳いでいる。細く赤い紐を組み合わせたような細長い生物が、転がるようにして移動していた。


行く手を阻むように、首を出す蛇の頭を持つ亀のような生物が岩の中に逃げる。見た目と違って臆病なようでルイは安心した。


そんな風に注意しながら進むと、糸のような細い足がついた赤いウニのような魔海獣に出会う。そのウニの魔海獣は、上下に体を揺すると自分の針を何本も飛ばし、ルイの足に攻撃をしかけてきた。


「っ!?」


真っ赤な針は足に刺さる事なく砕け散る。


海の中を赤い粉のようなものが漂うと、魔海獣はルイから距離をとり逃げて行った。


「あっぶないわねぇ」


運良く無傷だった針が一つ海の中を漂っていたので、それを手に入れ手の平に乗せてみる。


ルビーに似た赤色の宝石のような針だ。


「爪楊枝・・にしては贅沢ね」


果物を食べる時に使おうかしら、とルイは考えながら収納した。






採取できそうな珠や鉱石は見えないので少し落胆しながら歩く。


食用になりそうなものは沢山あったが高そうなものは見当たらなかった。


周囲を見渡し行きたい方向に進んでいると、昆布に毛が生えたような生物が地面から生え、海面まで伸びている。


その隙間から大きな岩が見えた。


その岩を避けながら進むと、さらにルイの進行を妨げるような岩の壁があったので、そこまで歩いて登ってみる。


岩の頂上まで登ってから下がると、そのまま足元がなくなった。


「ええ!?」


焦ったルイは慌てて泳ぎに変え、海水を体の後ろに運ぶように両手を動かす。その勢いが良すぎて視界に映る光景がどんどん変わり、最後に海の上に飛び出た。


バシャ、と飛沫と共にルイの体が空中に浮く。


日の光に当たり驚いた表情のまま固まっていると、海水と共に下に落ちた。


音を立てルイの体が再び海へと戻ると、ゆっくりと沈みながら冷静さを取り戻す。


「慌てると力の加減が難しいわね」


海中なので落下する心配はなく慌てる必要もなかった事に思い至った。


完全に落ち着いてから足元がなくなった場所まで戻ると、底は真っ暗で見えない。黒い霧のようなものがあるので、それが光を遮っているように感じた。


「シュラドの海が危ないって言うのは、これも理由の一つなのかもね・・」


フェルミの海はもっと歩きやすかったなぁ、とルイは思う。崖のような場所も少しはあったが、ほとんどの場所は安全で移動しやすく、極稀に浅い場所に強い魔海獣が出るぐらいで危険を感じた事はなかった。


深海が危ないのはどこも変わらないとは思うが、海の中の様子を見ているとフェルミの海よりもシュラドの海の方が、全体的に暗い感じがする。


歩いている魔海獣を見ても、攻撃的なのはシュラドの方だった。


「もっと下に行きたいわ」


ルイは下に行く道を探る。すると偶然、崖に何かついているのが見えた。


「あれ何?」


目を凝らすと、暗かった周囲が明るく見えてくる。丸い珠が岩に挟まるようにして輝いていた。


「いいかも!」


歓喜の声を上げ、かなりの数があるので青真珠のように売れるのではないかとルイは考える。


「ではさっそく取りに行くわよー!」


喜び勇んで、そのまま下に降りて回収に行こうとした。

その時、優雅に泳いできた巨大な魚が崖に卵を産み付け、ルイは笑顔のまま硬直する。


魚は自分の産んだ卵を何度か確認した後、泳ぎ去ろうとしていた。


しかし別の魚がやってきたので反転して追い払いに向かい、己の体を大きく見せ相手の魚と競い合う。体の大きな方が勝ちのようで、体を横にして背びれや尾びれを伸ばして威嚇していた。


それを無言でみつめるルイ。


魚は美味しそうだが卵は必要なかった。


もしかすると珍味かもしれないが、今のルイには欲しいとは思えず、卵は放置する事に決める。


威嚇し合っている魚を見ないようにして、気持ちを切り替えた。


「よし、進もう」


崖に沿ってルイは歩き出す。

売れるものを探した。



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