シュラドまでの道9
山の上は岩が多く高い木があまり生えていない。
その代わり低い木が多く、枯れたように乾燥していた。
巨大な大岩同士が被さり合っている場所があり、歪なアーチのようになっている。
前と後ろが開いているので洞窟のように行き止まりになっている訳ではなく、風が吹くと通り抜けていく構造になっていた為、片方の外の部分に風が吹き抜けにくいように障害物用の岩が重ねられ積み上げられていた。
荷馬車の馬は雨が降った時に、この場所に避難するようになってる。
体力を失ったり、病気になれば移動に支障がでるので、山の上では人間よりも馬の方が重要視されていた。
このような山の上で助け合いをするにも限度があるので、皆が安全に街に移動できるように決められている事もある。
体力のある者が、低木から落ちた枝を岩のアーチの中に集める事だった。
こうしていれば雨が降った時に使えるので、他人に頼りすぎて喧嘩になる騒動も起きずにすんだ。
アーチ状の岩の周りは広場のようになっている。
他の荷馬車も休む為に集まっており、今日は雨が降っていないので馬は外に繋がれていた。
食事と餌が与えられて、馬もリラックスした状態で水を飲んでいる。その周りには荷馬車の持ち主である御者や、商人や冒険者などが盗まれないように近くにいて、食事やテントの用意をしていた。
冒険者ギルドで話していたようにルイ達の荷馬車は多いので、広場からはみ出し、道まで並んで止まっている。
他の荷馬車の商人達が、入っているのは冒険者だけという荷馬車を見て驚き、観察するようにジロジロと見てきたがロウフェンが事情を説明すると、今度はルイの方を生暖かい目で見ていた。
「とっても怖がりだと思われてるわね」
「そうだね」
フラミーとメルナが言っている。
確かにその通りだとルイも思った。
金持ちの嬢ちゃんは怖がりだと思われたらしく、ルイは商人から慰められるように芋飴の入った箱を貰う。
「嬢ちゃん、今日一日頑張れば明日にはつくぞ」
「ありがとうございます」
それに丁寧に対応した後、ルイも長持ちする乾燥させた果物の入った箱を、皆でどうぞ、と渡すと商人の好感度が上がったらしく、それからは普通に対応してくれるようになった。
荷馬車の持ち主達も、冒険者や仲間が多い方が安全なので、金銭を多く支払って雇う者は邪険にしない。ルイがどんな人物なのか見極めた後は、冒険者を沢山雇っている事に感謝していた。
皆、自分の命がかかっているので慎重に行動している。
冒険者を雇わず、自分達の持ち物も全く持ってこずに他人から借りようとする迷惑者もいるらしく、そういう者は目をつけられ距離を置かれるようになるらしい。
慈善行為をする為にこの場にいる訳ではないので、自分の面倒を自分でみれない者は嫌われ、何があっても見捨てられるようになり自然と淘汰されていく事を、ルイは商人から聞いた。
死人に口無しなので、誰もが口を閉ざせば分からないらしい。
「こわっ」
商人がいなくなったので鳥肌がたった腕をルイは擦るが、フラミーとメルナは苦笑していた。
「そうやって怖がりそうだから教えなかったのに。わざわざ話を聞くからそうなるのよ」
「話を聞きたかったら、私達が優しく教えてあげるよ」
「ありがとうメルナ。今度からそうする」
商人から聞くのは注意しようとルイは思う。
これ以上、過激な事は知りたくなかった。
ルイはきちんと冒険者も沢山連れているし、話のわかる人物だと認定されたので対応はとても優しくされている。
商人は利益を与えてくれる者にはとても敏感なので、ルイがどこに行っても危険がないか見守っていてくれた。
これは確実に、何かあった時はよろしく、と思われているんだろうなと思う。
それはそれで助け合いだから良いわよね、とルイは思っていた。
並んだ荷馬車から全員下りて食事の用意をしたり、枝を拾ってきたりしている。
テントも数個用意されているがそれは女性用のテントで、男性陣は今回は荷馬車が空なのでそちらに泊まる事になっていた。
ルイ達以外の荷馬車は大荷物を積んでいるので、必ず外にテントを用意している。手慣れた様子で素早くテントを組み立てて、他の事をしていた。
まだ辺りが明るかったのでルイは崖の方に行ってみる。
見晴らしが良すぎて下に森があって、川が流れているのもきちんと見えた。
鹿のような生物を追って魔獣が走りぬける。
そんなのを見ていると後ろから声がかかった。
「ちょっとルイ、危ないわよ」
「大丈夫だよ、フラミー。もう止めるわ」
そう言いながらもルイは移動していく。
商人達の荷馬車の横を通り抜け、岩のアーチを越えた先に、広く見渡せる場所があった。
良い場所を見つけたルイは走ってそこに行き、立ち止まる。
陽が海に沈むのが見えた。
「綺麗ね」
ルイの全身に陽があたり、崖の上なので少し強い風が吹いている。
しばらくそうして見ていた。




