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準備万端



自身の想像と違っていた彼の様子に声をかけようとした瞬間、マリアの目の前にあった景色がぐるりと変わった。



一瞬だけ、ほんの一瞬だけ靴の底と地面との間に何センチかの空白を私は踏んだ気がした。


…眩暈などの発作が再び起きたわけでもなさそうだ。

どちらかと言えば、私自身が何処かへと移動したように感じる。


だが周囲を見渡しても、部屋自体にこれといって大きく変化したものはないようだ。


しいて言うなら、私は部屋の外に追い出されていた。

場所だって、先程の牢の中に入る前の位置だ。

(…そういえば、アルベルトとクラウスは?)


「……はっ!…クラウス!?」


「…ここにいますよ?お嬢様」


「アルベルトもいない、よね?それに、いっ、いまテレポーt……空間移動したわよね?」


「…はい、その認識で間違いないっすよ。団長もここにはいません」


「じゃあ、いよいよ…ご対面なのね」


「お嬢、ここで注意事項をいくつか話しますよ…まず、俺と団長はこの中に入ることができません。なので、必然的にお嬢が一人で対面することになります…まぁ。理由に関して、知りたければ後ほど聞いてください。…俺が覚えていればの、話ですけど」


「あらら、クラウス…それはここに来る前に話しておくべきことではないのかしら?」


「うっ…弁明しようがないほどの、ど正論……そのお嬢…それもこれも含めてのっぴきならない事情があるので今回は見逃して下さいっす」


「………もしかして……お父様の仕業?」


「…………ノーコメントでお願いします」


「………………………………………………………ふぅ…仕方がないわね…今回は許します。……後で、きちんと教えてくれるわよね?」


「………俺が覚えていたら、です」


「………」


「あと、彼と話すときは近くに行っても構いませんが、なるべく近くに行きすぎないようにしてくださいね?」


「…分かったわ。忠告ありがとう、クラウス」


クラウスが言った通り、長時間の滞在はあまりしない方がよさそうなので、とりあえずテレポート云々は後で聞くことにした。


俺が覚えていれば…なんて小声で言っていたけれど、そこはマリアが覚えれいればではないのね…。

そこも後で確実に聞いておきたいけど教えてはくれなさそうよね…。



彼が少し心配しすぎなだけかと思ったが、そういえば今は子供の姿だったと気がつく。

それならば仕方がない…もしも私の立場が逆だとしたら彼と同じことをしていただろう。

納得はいくが、なんだか複雑な気分だ。

それでもクラウスに忠告として言いきかせられてしまうと、自身が子供ながらに危険な行為をしているのだと改めて実感させられる。


自身の胸に手を当てると、ドクドクと血管の血と血が溢れだしそうな音が聞こえるくらいに緊張していた。

肺をいったん空っぽにし、少し時間をおいて新しい空気で満たす。

冷ややかな空気達が無数の棘となり、私の胸を突き刺した。


——心の準備も、戦う覚悟ももうできた。殺してくるなら、かかってこいやー!いつだって私は受けて立つ!


「たのもー!!」


そう言いながら、扉?らしきものを蹴り破る……わけにもいかないので普通に手で押し開く。

(クラウスも見ている手前、というかお嬢様的にアウト)




——あれ、案外軽い?


扉の軽さに対しても若干驚いたが中に入ると、マリアはさらにビックリすることとなった。


「…内観が違う、よね?……え、あれ?…」



扉を開けた先の部屋の中は、全然違うと言い切れるほど別の場所だ。

まさにその心情は、ビックリ箱だと思って警戒していたのに開けてみればただの普通の箱で拍子抜けしたときの感覚とそっくりだった。


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