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陰キャに魔法少女は厳しいです!【第二部開始】  作者: 黒葉 傘
第二部:復讐の造花

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31/33

星の付いた少女たち

「う……また連絡きてる」


 ゆらゆら揺れる金魚のププちゃん、その自由気ままなその姿に癒されていたのに……聞き慣れた電子音が私を咎めるように鳴った。

 自室の机に頬杖を突き、電子音を奏でる魔法少女の端末を睨みつける。

 以前だったらその連絡はリリィからだっただろう。

 チームメイトとして魔法少女活動のお話、友達としての遊びのお誘い。

 くだらないことでも彼女は沢山連絡をくれた。

 でも彼女が意識を失って、このデバイスはめっきりと音を奏でなくなっていた……はずだった。

 だけど静寂は破られた。

 最近になってメテルからの連絡が頻繁にくるようになったから。

 いや、嬉しいよ。

 チームメイトとして親睦を深めるべきだと私は思っているし……

 でも内容がなぁ……

 彼女の連絡は大抵配信へのお誘いだから困る。

 魔法少女ファニーダチュラ・メテルは人気配信者だ。

 そのメインコンテンツはもちろん深獣退治の配信、だけど他にも色んなことをやっている。

 歌ったり踊ったりは勿論、ゲーム実況やグルメレポート、話題の魔法少女への突撃インタビューまでやっている。

 そこまで行くとタレントに片足を突っ込んでいないかと思ってしまうのだが、あくまで配信者という体らしい。

 そんな彼女のファンから最近私とのコラボが熱望されている、らしいのだ。

 彼女との深獣討伐配信も何度もしているし、世間では私とメテルが新チームを結成したことは周知になっている。

 今や魔法少女ブラッディカメリアは配信者メテルの一番近くにいる魔法少女だ。

 だからこそ、普段の配信でも姿が見れるのでは?と思われているらしい。

 なんで!?

 私は配信者じゃないよ!一般人なんだよぉ!

 ただでさえ恥ずかしい映像がテレビで放映されてるのに!

 なぜ好き好んでインターネットにまでデジタルタトゥーを刻まなければならん。

 というわけで私とのコラボはNGと伝えているんだけど…………

 メテルはメテルで私のOKラインを探ってか色々提案してくるんだよね。

 まぁ深獣討伐の配信にOK出しちゃったから、なんで他はダメなのと思われてしまうのは分かるけど。

 私としてはこれ以上のメディア露出はさけたいなぁ。

 と……思いつつも一応連絡は確認する。


「あ……れ?メテルじゃない」


 覚悟して端末を起動したのにそこにメテルのメッセージはなかった。

 メッセージの差出人には見慣れない名前が記されていた。


「エ……ヴァー、ローズ?………………えっと」


 エヴァーローズ、なんだか聞いたことある名前だな。

 えーっと……エヴァー……誰だっけ?

 絶対聞いたことあるんだけど。

 ついこの前メテルで痛い目見たばかりだからきちんとどんな魔法少女か思い出さないと。

 頭を抱えて記憶を辿る。

 聞き覚えは……ある、だけど顔が思い浮かばないし名前だけ知っている。

 私でも聞いたことがある……ということは有名どころの魔法少女だよね……

 ん……………………?

 ちょっと待って。

 まさかそんなはず。

 ふと思い当たる記憶を思い出して携帯のブラウザを立ち上げ、検索をかける。


『魔法少女、現最強』

 

 複数のサイトがヒットする。

 そしてその名前はどのサイトでも最強候補に上がっていた。

 アコナイトに代わり、現魔法少女界のトップ牽引する存在、魔法少女エヴァーローズ。

 な……んで、そんな方からご連絡がきているのかな???

 


……………………………



…………………



……



――――――――――――――――――――


 ブラッディカメリアへ


 

 初めまして、エヴァーローズと申します。

 ごめんなさい、この連絡先はアイリスに聞きました。

 

 突然の申し出で申し訳ないのだけれど、明日星付き会議を行います。

 貴方は初参加だと記憶しているのだけれど、予定はいかがかしら?

 まさか、他の星付きのように不参加を決め込んだりしないでしょうね?

 貴方は真面目で優秀な魔法少女だと信じているわ。

 サボり癖のある星付きたちも今回は引きずってでも連れてくるつもりなの。

 貴方も不参加のつもりなら引きずることになるわ。

 でも、大丈夫よね。

 貴方は自分の足でくるのだから。


 そうよね?

 

 エヴァーローズより

 

――――――――――――――――――――


 何この怖いメッセージ?

 正直読んだ時は震えたよね。

 というかどれだけ集まりが悪いんだ星付きって?

 初参加なのにこれだけ念を押されることってある?

 怖すぎて指定された場所に予定の時間より早く着いてしまった。

 都内に建てられた花園、私のよく利用する地区のものとは違うけど、花園自体は門で繋がっているからアクセスは簡単だった。


「えっと、この部屋かな」


 とはいえ、初めて来る花園だから内部構造がよくわからないな。

 扉の横にあるプレートを確認する。

 第三会議室、うん……指定にあった場所で間違いない。

 多分……ね。

 以前のお茶会みたいに転送してくれたら道に迷わないですむし強制参加にできると思うんだけど、なんで自主性を重んじてるんだろう。

 やっぱり星付きともなると予定が多くて強制転移とはいかないのかな。

 扉を押してみるとすんなり開いた。

 早い時間だからまだ閉まっているかと思ったのに、開いてるんだ。

 中は事務的な会議室という感じだった。

 長机に椅子、天井には大きなプロジェクターが取り付けられている。

 魔法少女らしさは皆無な内装だね、こんな部屋使うの?


「あら、早いわね」


「ぴッッ!?」


 完全に自分1人だと油断していたところに声がかかり、飛び上がる。

 だ、誰?

 声を向いた方を向くけど……


「………………?」


 あれ、誰もいない?


「下、下よ」


 声に釣られて視線を下げるとそこにとても小さな女の子がいた。

 私もお世辞にも背は高くない、けど彼女は私よりさらに小さい。

 ちんちくりんを通り越して女児、そんな子が私を見上げていた。


「ぁ、ごめん、私1人だと思って」


「確かに、ちょっと早いわね」


 少女は首にかけたデバイスを手に取って時間を確認する。

 えっと、誰だろう。

 ここにいるってことは、この子も星付きの魔法少女?

 幼すぎない?星付きってこんな年齢でもなれるものなのだろうか。

 もしかして…………部屋間違えた?

 なんだか急に自信がなくなってきたな。

 だって目の前の女の子は明らかに私より年下そうだし……とても星付きには見えない。


「どうしたの?そんなにあたふたして」


 私が彼女の前で挙動不審気味に視線を彷徨わせていたからか、心配げに見上げられてしまった。


「ぁ、う、えっと……君も、星付き…………なの?」


 そんなわけないと思いながらも聞いてしまった。

 きっと彼女はこの会議室に迷い込んだ部外者に違いない。


「ええ」


「え゛?」


 しかし返って来たのは肯定の言葉。

 マジ…………?

 じゃぁ部屋を間違えたわけじゃない?


「何?私、星付きには見えないかしら?」


「ぁわ、いや、えと」


 少女の目が不満げに細められる。

 しまったな、星付きの威厳を傷つけてしまったかも。

 えーと、とりあえず言い繕わないと。


「ぃ、あ、うん!こんなに幼いのにすごいなーて…………」


「え゛?」


 今度は少女の方が裏返った声を上げた。

 え、何?なにか間違ったこと言った私?

 少女は何か言いたげに口をパクパクさせたけど、結局何も言わずに口を閉じた。

 だけどその口はくっきりと弧を描いた。

 なんで微笑んでるの?

 喜ばせるようなこと言った覚えないけど何で?

 女心ってわかんない……


「少し早かったかな〜〜まぁ当然だけどさぁ」


「あら、あなたも早いわね」


 私がコミュニケーションズエラーを起こしている間にも部屋に誰かが入ってくる。

 なんだか偉そうな態度の少女。

 こちらも見たことのない魔法少女だ。

 といっても、私の知っている魔法少女なんてたかが知れているけど。

 星付きで顔を合わせたことがあるのはアイリスただ1人だけだ。

 そもそも星付きって何人いるの?


「立って待つのもなんだし……座りましょうか」


「ぁ、うん」


 幼い少女に促され、腰をかける。

 両隣には初めましての少女たち。


「…………………………」


 きっっ……まずぅ、話すことないんだけど。

 というより誰なの?

 よく考えたらこれから私、初対面の人間に囲まれてお話しするわけ!??

 は、はやくアイリス来ないかな?

 共通の知人が私たちには必要だとっ思いませんかっ!!!

 陰キャにこれは厳しい、アイリス急いでー……!


 しかし、案の定というか…………レッドアイリスは遅刻した。




……………………………



…………………



……



「いやぁ〜だいぶ待たせちまったか?」


 はい、とっても待ちました。

 あの後も見知らぬ少女が部屋に入って来たがそこにアイリスの姿はなかった。

 全員初対面!

 勘弁してよ。

 私はもちろん一言も発せずに1人座っていましたとも。

 そんなこんなで集合から10分ほど過ぎたところでようやく彼女は現れた。


「それほどではないわ、貴方には少し早めの時間を伝えておいたから」


「あ?なにそれ」


「はっ暴君は信用されてないようだね」


「普段の行いのせいでは…………?」


 ひどい言われようである。

 でも私も異論はない、実際私との初対面だった撮影でも遅刻してたし。

 

「おう、カメリア!!調子はどうだ。そいつの隣は私の席だ、しっしっ」


「ぇ?えぇ……」


「あなたねぇ…………」


 アイリスは私の隣の幼い少女をどかして席を陣取る。

 なんで?いや、助かるけどね知り合いが隣にいる方が。

 多分……私の人見知り発言を覚えていての行動なんだろうけど、説明がないのでただの横暴になってる。


「主催が座ってんのもなんだろ。みんなの前に立って経緯でも説明したらどうだ?」


「それもそうね」


「はぇ?」


 誰が主催だって?

 私の視界の先で少女は皆の前に立ち大きく咳払いをした。

 皆の雑談が止み、視線が彼女に集まる。


「今日は皆集まってもらってありがとう。無事一名を除いて全員集まったわね」


 は、え、マジ?

 どう見ても小学生ぐらいにしか見えない少女が私たちに軽く頭を下げる。

 その言種では彼女があのエヴァーローズだと言っているように聞こえるんだけど。

 エヴァーローズって私たちのトップだよね?

 もっと威厳のある少女だとばかり……

 少女は私を一瞥すると愉快そうに口角をあげた。


「初めましてのカメリアもいるのだから自己紹介から始めましょうか。どうも、とても星付きには見えないうら若き私こそ……魔法少女エヴァーローズ、です」

 

 完全に私への当てつけで付けられたうら若きという言葉。

 マジだった……あれが現魔法少女トップの人間だった。

 先ほどの自分が放った発言、それに彼女が驚いたのも頷ける。

 随分失礼な発言をしてしまっていたみたい。


「ご、ごめんなさい……随分幼く見えたから」


 察するに彼女は見た目通りの年齢ではないのだろう。

 そうでなければこんな皮肉混じりの自己紹介なんてしないだろうから。


「あー……カメリア、こいつはな」


 なんだ?

 私の予測は間違ってはいないと思うのだけど。

 アイリスは気まずそうに口をもごもごさせている。

 なんだか言いづらそうだな、いつも快活な彼女にしては珍しい。

 なぜだか周りの少女たちも目を逸らしている。

 え、なにさ本当に。


「全魔法少女の中でも最年長。ながぁーい間魔法少女を支えた礎の魔女エヴァーローズを知らない魔法少女がいるなんて思わなかったわ」


「えッ!?」


「君!歳は聞いちゃだめよ、ブッ殺されるから」


「おほほ……何か?」


「イエ何デモナイデス…………」


 想像以上のベテランだった。

 私にアドバイスした少女はローズに睨まれ机の下に隠れた。

 あの様子から見ると彼女年齢を聞いてボコされたことあるだろ。

 私以外に聞こえないようにアイリスが私にこっそり耳打ちしてくれた。


「既婚で子持ち、少なくとも成人済みなのは確定だ。だけど見ての通り年齢の話はNGだからな」


「ぶべッ!?」


 おいおいおい、それ魔法()()って言えるのか。

 もはや魔女では?

 自分も少女とは言えなくなっている年齢だけどそれ以上がいた。

 幼いと私に言われて嬉しそうだったのも道理だ。

 魔法少女って何歳まで続けられるのかなって密かに思っていたけどどうやら成人後も可能みたい。

 

「ぉ、おほん!おほん!じゃぁ次は僕が自己紹介しようかな」


 ローズに睨まれた少女が空気を変えようと大きく咳払いをしながら立ち上がる。


「僕はティンクル・クラウンデイジー。最も気高く頼もしい魔法少女とはまさに僕のことさ!カメリア君も存分に僕を頼るといい」


「ど、どうも」

 

 自身満々に言い放つ少女。

 その頭には大きな王冠が載っていた。

 アイリスと王冠被りしてるね、まぁアイリスは変身直後に捨ててるみたいだけど。

 だけど目には眼帯してるし、包帯をあちこちに巻いてるしでなんだか厨二くさい。

 いや、サイプラスみたいに本当の怪我かもしれないけど……


「じゃぁ、私も頼ってもいいかしら?今度深淵を鎮圧したいのだけど」


「えっ!?ぁ、いや〜〜また今度でいい?」


 自信満々の少女はローズに凄まれてすぐにまた机に引っ込んだ。

 その様子に彼女の豪語するような気高さは見えず、どちらかというと小動物じみている。

 何?仲悪いの。

 なんだか2人の関係性が透けて見えてしまった。


「おい、カメリア」


 アイリスさんがまた耳打ちしてきた。


「あいつは星付きなのは確かだが、深獣の討伐記録は0だ。戦ってるとこすら誰も見たことねぇ。あんま当てにすんなよ」


 えぇ……

 一匹も深獣倒したことないの?それで星付きってなれるの?

 頼もしいと豪語する根拠どこ?


「ぇっと……マリーゴールドみたいな特殊能力持ちってこと?」


「さぁな。ただ……あいつのチームメイトではあった」


 マリーゴールドの元チームメイト……か。

 マリーゴールドは未来予知の力で魔法少女たちを導いていた。

 でも第13封印都市奪還作戦で私たちと共に戦い…………亡くなった。

 彼女、チームメイトがいたんだ。

 チームメイトなのに…………あの作戦には同行させていなかったんだ…………

 なんだか、彼女の見る目が変わりそうな話だった。


「じゃぁ次は私たちね、初めましてカメリア」


 私が故人を思って沈んでいると、次は2人の少女が同時に立ち上がった。

 お互いに左右対称にサイドテールで髪を括った少女たち。

 声上げた少女の方は親しげな表情で私の方を見ているけど、もう片方は私に興味があるのかないのか無表情で外方を向いている。


「ローフリージアと、ハイライラックよ」


 フリージアの紹介にライラックが頷く。

 魔法少女名が対になっているけど……姉妹なのかな?それにしては顔は似ていないけど。


「サポートならフリージアを、戦力ならばライラックを頼りにしてくれていいよ。ただしそれぞれ個別での起用はNG、私たちはセットだから……とライラックが言っているわ」


 フリージアの言葉に、またライラックが頷く。

 ライラックは何も言ってないけどね。

 それともフリージアには彼女の言いたいことが読み取れたりするのかな?

 今度は私の方からアイリスに耳打ちする。


「彼女たちはどんな人なの」


「いや、あいつらとはあんまし組んだことがないな……唯一チームで星付き認定された二人組ってことくらいしか知らん」


「へぇー、チームで」


 星付きの称号って魔法少女個人に与えられるものだと思ってた、例外もあるんだ。

 つまりあの2人はお互いそろって初めて真価を発揮するタイプの魔法少女なのかもしれない。

 吸魔と共魔のように相性のいい能力は他にもあるんだろうな。


「一応、これで全員ね」


 現在の星付き魔法少女、私も入れて計6人か。

 意外と少ない、てっきりもっといるのかと思っていた。

 これが深災から人々を守る魔法少女の最高戦力。

 なんというか…………イロモノ揃いだね(人のこと言えない)。


「本当は後1人、いるのだけれど」


「僕ら全員会ったこともないだろ」


 後1人、誰?

 そういえば、一名を除いて全員集まったって言ってたね。

 ということは星付きの魔法少女は本当は7人ってこと?

 だけど、会ったこともないってどういうことだろう。


「別枠で後1人いるけれど、役割が違うから共に戦うこともないみたいね」


「そ、それ誰が言ってたの?」


「一角獣の野郎だよ」


 私の問いにアイリスが答える。


「庭師が、いるんだとよ」


「庭師?」


 何それ?

 知らないことばかりだな、私は。

 だけど、これに関しては皆んなも知らないのか顔を逸らされた。

 全員の顔に知らないから聞かないで、と書いてあった。

 一角獣もだいぶ秘密主義だなぁ。


「表舞台に出ない根暗の話はいい!自己紹介はこのくらいにしておいてよ、本題に入れよ。カメリアとの顔合わせで集まったわけじゃねーだろ」


 みんなの視線が、ローズに集まる。

 本日私たちを呼び出したのは彼女だ、その理由を私たちはまだ聞けていない。

 皆の視線を受けてローズも背を伸ばした。


「そうね、もう皆知っているのかもしれないのだけど…………」


 一拍、ローズは瞬きして真面目な顔つきになった。


「いえ、星付きなら当然状況は把握しているわね。魔法少女が攻撃されているわ」


「「「……!」」」


 何も言わないながらも皆居住まいを正したのを空気で感じた。

 状況を把握していないと慌てる少女はどこにもいない。

 私も分かっていた。

 攻撃されたという魔法少女の1人はきっと私の大切な友達だから。


「未知の影のような存在による奇襲、魔法少女がその標的にされている。私が知る中でも複数の魔法少女が負傷し、戦線を離脱しているわ」


 リリィだけじゃない。

 被害は広がっていた。

 あの…………黒いナニカによって。


「この事態、星付きが動くべきではなくて?」


 異論はなかった。

 全員が頷く。

 らしくなかったイロモノ少女たちの顔が守護者のそれに変わる。


「その件は私も聞いているわ、警戒してたけどなぜか私たちの前には姿を見せないのよね」


「被害は何件だい?」


「5件。重症1名、残りは軽症だけど復帰はしていないわ」


「?軽症なのになぜ魔法少女に復帰していないの……とライラックが疑問に思っているわ」

 

「……それについては、個別に聞かないと分からないわね」


「聞けよ」


「聞いたけど、なんだか話を逸らされてしまって」


「妙だね、襲われた魔法少女たちの共通点は?」


「今のところなし、1人でいた……くらい?」


 矢継ぎ早に情報共有が行われる。

 私が知っていることも知らないことも。

 対処のための疑問を出し合い知識の空白を埋めていく。


「それで、それは結局何なの?」


 クラウンデイジーの疑問に、止まる。

 問い、魔法少女を襲ったそれは何?

 私たちはそれすら把握できていない。


「新種の深獣?それとも全く別種の脅威?正体が分からなければ具体的な対処は難しいよ」


「討伐も捕獲も、現状はできていないから何とも……」


「この中で、一目でもそれを目撃した人はいるの?」


「あ」


 アイリスの目が、私の方へ向けられる。

 私だ。

 それを間近で見た人間が1人だけいた。


「ぁ、わ、私がー…………」


「「「見たの?」」」


 星付きの魔法少女たちの視線が私へ集中した。

 こう言った場面での発言は私にはハードルが高い。

 それでもここでの発言が、事態の収束に繋がるかもしれない、リリィのような被害を減らせるかもしれない。

 だからこそ自分の性格を盾に黙る場面じゃない。


「見た……よ」


「私見でいいから聞きたいね。君はそれを何だと思う」


 リリィを傷つけた黒い何か、あれはなんだったのだろう。

 あの時は頭に血が上り、冷静じゃなかった。

 今一度考える。

 深獣と似通う黒い体躯。

 だけど存在しない深淵。

 あの女性のようなシルエットは人の模倣?それとも本当に人なの?

 だけどそのどれよりも印象的だったものは…………


「知性」


 死んだの?

 あれは私に問いかけた。

 それは人の真似でもなんでもなく、純粋な疑問だった。

 自分が傷つけた生き物が死んだのか、それは死の概念を理解していた。


「言葉を話し、それを理解するだけの知性があった。だからあれが既存の深獣だとは思えない」


 深獣との最大の相違はそこだ。

 深淵の有無なんてその違いと比べると些細なものだ。

 知性がある。

 それは即ち目的をもって魔法少女を攻撃したということ。

 ただの災害ではなく明確な意思を持って。

 殺意が、あったということ。


「面白い、ワクワクするわね」


「え?」


 小さな声、だけど私はそれを聞き逃さなかった。

 ローズが顔を手で覆う。

 隠していても笑っていると私には分かった。


「ごめんなさい。悪気はないの……性分なのよ」


「あぁ、また未知に喜んでるよこの女は」


 エヴァーローズのその目には好奇心が光っていた。

 でもそれもすぐに真面目な顔に戻った。


「そうね……フリージア、ライラック、クラウンデイジー、あなたたち3人は次の襲撃を警戒しなさい。魔法少女は単独で動かないように警告を呼びかけるのも忘れずにね」


「分かったよ」


「了解、とライラックも言っているわ」


 ローズの指示に3人は頷く。


「アイリス、あなたは襲撃に遭った魔法少女に会って詳細な情報を聞いてきなさい」


「はぁ?私に腕っぷし以外を期待すんなよ」


「適任よ。星付きの中で一番慕われているのはあなたでしょうが、大体星付きトップの座だって私はあなたが相応しいと思ってるのだけれど……」


「柄じゃないね。私はお前がいいと思う」


「はぁ……そうやって押し付けられなければ私も好きに動けるのに」


「答え出てんじゃん。好きに動けないならトップなんて御免だね」

 

 あぁ……やっぱり魔法少女トップの座、アイリスはローズに押し付けていたんだ。

 順当に考えればアコナイトが降りればトップは彼女のはずだったものね。

 変わらず自由人だね、ローズには少し同情する。


「最後にカメリア」


 ローズの目が私へ向けられる。

 私は、何をすればいいのだろう?

 正直戦力で言えば私は頼りない。

 私が真価を発揮するのは深淵の中だから。

 深淵外で襲いかかってくるモノには星付きとしての働きは期待できない。


「ちょっと私の研究に付き合ってもらえない」


「研究……?」


 なにそれ。


「えぇ、私たちで深淵の方から脅威の正体へアプローチをかけるの」


 それは、どうゆうことだろう?

 深淵内の活動なら、確かに私は適任だろうけど。

 深淵の中に果たして正体を探るヒントなんてあるんだろうか。


「それが、深獣であるかないか、一番詳しいモノに聞くのよ」


「ぃ、一番詳しいって……」


 だれ?

 深獣についてもスペシャリストが魔法少女と魔法騎士以外にいるなんて聞いたことないけど。

 そんな人いるの?しかも深淵に?


「あなたは脅威の特質として知性を上げた。だけど深獣が完全に知性なき獣ってわけじゃないのよ」


「え゛?」




「深獣のことなら、本人が一番よく知ってる。そうでしょう?」

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