01 思いがけない話
私が前世の記憶を取り戻したのは弟からの思いがけない話がきっかけだった。
「姉さん、実は俺、前世の事を思い出したんだ」
私、ヴィーセニカ=ル=フルージュワは10歳の誕生日を迎えたその日に2歳年下の弟、ロキにそう告げられた。
最初は前世なんて信じられない、と疑っていた私だったが、お調子者のロキの見たことの無い真剣な表情に、ひとまず話を聞こうと決心した。
ロキの話によると、ここは私が前世で朝から晩まで狂ったようにプレイしていた乙女ゲームの世界らしい。ヴィーセニカは主人公マリアと攻略対象との恋路を邪魔する悪役令嬢。
17歳の時に嫉妬のあまり、マリアの殺害未遂を犯し離島に流されるも、裕福な生活しかしてこなかった為体が環境に耐えられずそのまま死亡するらしい。
(そんな人生絶対に嫌だ……!)
誕生日だというのに自分の情けない末路を聞かされるとは思ってもいなかった。私はため息をついて空を見上げる。
しかし、次の瞬間、またしてもロキの口から衝撃発言が飛び出す。
あのさ、姉さんの婚約者のルーク=エストワージュっているでしょ? 姉さん、6年後にあいつから婚約破棄を言い渡されるんだよね」
「……は?」
ルーク=エストワージュとは私の婚約者であり、このエストワージュ大国の第一王子だ。表向きはぶっきらぼうながらも、兄弟思いの兄を演じていてとても人気があるのだが…。裏の顔は兄弟思いの欠片も無い嫌味な奴であった。
「姉さん、言いづらいんだけどさ…… ルークが姉さんの島流しを命じるんだよ。ついでにフルージュワ家は爵位を奪われ没落する」
「……はぁぁぁぁぁあ!?!?」
屋敷中に私の驚声が響き渡る。あまりの品の無さにお母様に叱られたのは言うまでもない。




