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『ちゃんと言わせたい』  くろん

「ふぁいとー!」

「ぼっぱつー!」

 ……うん? 

「ちょっと待って、なんて言ったのいま?」

「ぼっぱつー!」

 聞き間違いじゃなかったみたいだ。

「いっぱつー! でしょ?」

 相方はきょとんとしている。

「いっぱつね、いっぱつ。わかる?」

 まだきょとんとしている見たいだ。

「ふぁいとー! いっぱつー! ね?」

 相方はわかってるのかわかってないのかよくわからない。

「行くよ、ふぁいとー!」

「ぼっぱつー!」

 おい! わかってないの!?

「なんで、ぼっぱつー! って言うの?」

「ぼっぱつのほうがいいからっ!」

 ぼっぱつって、勃発でしょ? 物騒な響きだよね?

「なんで、ぼっぱつー! のほうがいいの?」

「なんとなくっ!」

 えー……。

「なんとなくなら違うのでもいいんじゃないの?」

「ぼっぱつ、ぼっぱつ!」

 ぼっぱつのなにがいいんだろ……。

「ぼっぱつー!」

「うん、ぼっぱつー!」

「はっくつー!」

「ぼっぱつ!」

 少し怒った感じで返された。はっくつー! ではダメらしい。

「ぼーと!」

「ぼっぱつ!」

 ボートが勃発って、少し恐怖。

「ぼうはつ!」

「ぼっぱつ!」

 暴発と勃発はどっちのほうが怖いだろうか。

「ぼうふう!」

「ぼっぱつ!」

 ぼうふうは暴風なのか防風なのか、言った自分でさえわかってない。

「ふぁいとー!」

「ぼっぱつー!」

 どうやって、いっぱつー! を言わせたらいいんだろうか。なかなか思いつかない。

「ぼっぱつ、ほんと好きだね?」

「うん!」

 うんって……。

「ぼっぱつー!」

「ぼっぱつー!」

 あたしのほうから言ってみたけど、変わらない。

「そろそろ、いっぱつー! って言わない?」

「ぼっぱつー!」

 う~ん。

「いっぱつー! って言ってくれたらお菓子あげるよ?」

「どんなのー?」

 お、食いついた食いついた。ものに釣られるなんてお子様だね。

「せんべいあげよう」

「やー」

 え、嫌なの。おいしいよせんべい。

「じゃあ、おやき」

「おやきわかんなーい」

 おやきが通じないの……。んー、こっちだとあんまり見ないから仕方ないのかな。

「じゃあ、なにがいいの?」

「どりあん!」

 …………? 

「なんて言ったの?」

「ドリアン!」

 えっと……ドリアンは果物であって、決してお菓子ではないはず。間違ってないよねあたし?

「それはお菓子じゃないよね?」

「おかしー!」

 ドリアンをお菓子扱いするなんて、どんな環境で育てられたというの!

「ほんとにお菓子?」

「おかし!」

 ドリアンなんて、一般人のあたしでは一生食べないものだろうね。下手したら実物を見ないまま一生を終えるかも……。

「ドリアンは用意できないんだ。ごめんね?」

「ぶー!」

「代わりのものなら用意できるかも?」

「ドリアンじゃなきゃやだー!」

 なんでそんなにドリアンにこだわるの? くさいよ? 実際に嗅いだことないからどれぐらいくさいのかわからないけど。

「わかった、わかった。今度用意しておくから」

「やったー!」

 用意しないけど。どうせ数日もすれば忘れてるだろうし。

「じゃあ、いくよー! ふぁいとー!」

「ぼっぱつー!」

 おい! 

「ちゃんと用意するからね? ちゃんとやってね?」

「うん!」

「ふぁいとー!」

「ぼっぱつー!」

 ちゃんとするとはなんだったのか。

「ちゃんとするんじゃなかったの?」

「ちゃんとやったよ? ぼっぱつー! って」

 この子目線だとそれがちゃんとしてるということになっちゃうのかー!

「いっぱつー! だよ? わかった?」

「わかったー」

 これで決めたい……っ!

「ふぁいとー!」

「ぼっぱつー!」

「なんでええええ」

 なんで!

「なんでやってくれないの!? ちゃんとドリアン用意するって言ったよね?」

「……ドリアンを貰うなんて一言も言ってないもん」

 ちょっと裏に行こうか。

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