表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ディグニティ・ストライド  作者: 果報寝待


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/86

第12話 千斤を負ひ、猶ほ進む


 教壇に立つササ・グラービ先生の声が響く。


「知能の高い動物には、人と同じように能力に目覚める個体がいます。これらを害をなす者は『邪獣』共存可能なものは『聖獣』と呼び分けるのが一般的で──」


 隣の席では今日もグルーは机に突っ伏して寝ている。

 もうクラスの誰もがいつもの光景として受け入れている。

 グルーが二つ星に進級できるのか、友人として不安になってきた。


「──今日の講義はここまで。来週、クラス一の生徒による『模擬戦大会』を行います。詳細は明日の朝に話します。では解散」


「大会ねえ。クラスの奴らと戦うのか?」


 いつの間にか起きたグルーが不敵な笑みを浮かべている。


「自分の実力を知るいい機会になるな」

「当たっても手加減すんなよ?」

「当たり前だよ。グルーこそ全力で来てよ」


 強い人がいたらチームに誘うのもいいかも知れない。

 俺は模擬戦大会に胸が高鳴っていた。


 大会まであと数日。

 俺達は放課後の訓練所で励んでいた。


「ふ、二人とも怪我には気をつけてね」


 ラロが心配そうに言う。

 ラロ達クラス二の生徒は、観戦と怪我人の救護が役割だそうだ。


「俺は能力使わねえし。キツい戦いになりそうだぜ」

「いい加減能力教えてよ。笑ったりしないよ?」

「やだね」


 グルーは頑なに口を割らない。

 もしかしたら差別されやすい呪詛系能力なのかも知れないな。


「大会までにクラスの奴の情報収集しようぜ」

「た、大会は来週だし。誰も教えてくれないんじゃないかな」

「それもそうか」

「じゃあグルー、俺と対人戦の練習しようよ」

「お! いいぜ」


 こうして来週の大会に備えて、訓練をしていく。

 どんな能力が来ても対応できるようにしておかないと。


 ---------


 大会当日。

 待合室には熱気と緊張が渦巻いていた。

 装備の点検をしながら俺はルールを思い出し確認する。

 

 【ルール】

 木製武器の使用、および革鎧の着用。

 殺傷行為の禁止。

 審判が危険と判断した時点で終了。

 

「次! バル君とタウル・グルットゥ君!」


 俺は名前を呼ばれ訓練所までの通路に歩み出る。 

 対戦相手のタウルは身長180cmを超える巨漢。

 手には巨大な木の斧と盾を構えている。

 力では不利そうだ、速度で翻弄するか……俺は戦い方を考えながら通路を歩く。


「まずは正面に立ち挨拶を!」

「俺はタウルだ。よろしくな」

「俺はバル。よろしく」


 俺たちは挨拶を交わし距離をとる。


「では始め!」


 俺は左手に木剣を構え、右手には木の玉を持つ。

 タウルは動かない。

 盾をどっしり構え、俺が踏み込むのを待っている。

 遠距離に攻撃出来る能力ではないのだろう。


「ふっ!」


 俺は己力投写こりょくとうしゃを木の玉に込めた。

 投げる力と能力の押す力。

 2つの推力が合わさり、空気を切り裂く鋭い音を立てて矢と化した玉がタウルに迫る。

 

 ──ゴンッ!


 盾に衝突した音が響いた。

 タウルの腕がわずかに揺れる。

 その一瞬の死角を突き、俺は一気に距離を詰める。 

 盾の横をすり抜け、側面から斬り伏せようとした時。


「──ッグ!?」


 肩に岩を置かれたような重圧が俺を襲う。

 膝が悲鳴を上げて地面に叩きつけられる。 

 

「速いな……増幅系能力か。 危ない所だった」


 地面に手を付く俺に、タウルの斧が轟音を立て振るわれる。


「ック!」


 俺は手に込めていた力を使い、地面を弾くようにして体を横へ飛ばした。

 斧をすんでのところで避ける。


「今のを避けるか! だがこれで分かっただろう、降参する気は?」

「......まさか。ここからが本番だよ」


 重くする能力。

 近接戦闘ではかなり強力だ。

 今のが全力なのか、範囲はどれくらいなのか考える。

 俺は距離を取り再び木の玉を投じる。


「無駄だ。『千斤落せんきんらく』!」


 タウルが叫ぶと同時に、放たれた玉は彼の目前で失速し地面へ垂直に叩き落とされた。

 

(やはり範囲内に入れば投擲すら落とされるか……)


 俺は足に能力を込め、タウルの背後へと高速で回り込む。

 そして再び投擲。


 ガンッ!


 今度の玉は地面に落ちずタウルの背中を捉えた。


「今のは有効打です!」


 審判のササ先生の声が飛ぶ。


「クソ!」


 タウルが苛立ちを露わにし盾を構え直す。 

 俺は確信する。

 背後が能力の死角だ。

 

 少しの静寂。

 勝負を決めるべく、足に力を込め正面から距離を詰めた。


「正面から来るとは! 潰れろ!」


 タウルの重力圏に踏み入れる直前、俺は停止した。

 能力を込めた足で地面の土砂を猛烈に蹴り上げる。

 空中へ舞い上がった土砂はタウルの能力に捕らえられ、猛烈な速度で下へと叩きつけられた。


「ぐ、目にッ!」


 急降下する土砂がタウルの視界を奪う。

 俺は背後に素早く回り込み剣を振るう。

 

千斤落せんきんらく!」


 タウルが叫んだ瞬間。

 背後にいたはずの俺の体が再び重圧に沈む。


(背後に使えないのはハッタリだったのか……!?)


「くそぉ!」


 タウルは目が見えないまま、音を頼りに背後へ向かって斧をぶん回した。

 俺の頬を斧が掠める。

 奥歯を噛み締め両足に能力を込めた。

 重力に逆らい強引に筋肉を駆動させる。

 

「うおおおぉ!!」


 全力で踏み込み剣を突き出す。  


「そこまで!」


 ササ先生の静止の声。


「勝者バル君!」


 俺の木剣の切っ先がタウルの首元で止まっていた。


「......くそ。 負けちまったか」

「ではお互い握手を!」


 俺たちは握手を交わす。


「近接で負けるとは思わなかったぜ。凄いなお前」

「木剣で軽かったからだよ、鉄製なら重くて振れなかった」

「それならそれで別の勝ち方を探したろ? 俺もまだまだだなあ」


 一回戦目からこの苦戦。

 思ったより体力も消耗してしまった。

 俺はどこまで勝ち上がれるだろうか。


 二回戦の相手がどれほど強いのか。

 恐怖よりも笑みがこぼれた。

お読みいただきありがとうございます!

おかげさまで、本日のPVが100を突破いたしました!

初投稿で不安もありましたが、こうして読んでくださる方、ブックマークや評価、リアクションをくださる方がいることに心から感謝しています!

これからも描き切っていきますので、引き続き応援いただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ