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第0話 魂の選択
村に悲鳴と怒号が響いていた。
普段は家畜の鳴き声と畑仕事の音しか聞こえない村だ。
俺は家の中で動けない母と幼い弟を背に、木剣を握りしめてドアを睨んでいた。
「大丈夫……絶対守るから……」
自分に言い聞かせるように、何度も繰り返す。
頭の中では父の言葉が響いていた。
『家族は頼んだ』
盗賊の下品な笑いが聞こえる。
聞き覚えのある声が悲鳴を上げた。
燃える家の音が嫌でも耳に入る。
「俺が……俺が守るんだ!」
その瞬間──
鍵が壊れ、ドアが蹴破られた。
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神が創り、神が観る世界。
だが、神が手を差し伸べることはない。
天上の瞳はただ足掻きを眺めるのみ。
ゆえに生ける者は血を流して戦う。
己が尊厳を守るために。




