表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
後悔で啓蒙する救世主────平和活動家だった私は、後悔を植え付ける力で神の国を作る  作者: 砂之寒天


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
17/18

第十六話 希望

 部屋に、エイブラムが入ってきた。


 エイブラムは苦い顔をして、私の花嫁衣装を見る。


「……その」


 言葉を選びながら、結局良い言葉が見つからなかったのだろう。


「……大変だったな。……悪い、良い言葉が浮かばん」

「……うん」


 エイブラムは、必要以上に、私に近づかなかった。

 その距離感が、有り難かった。


「あのな。……少しいいか?」

「……なに?」


 エイブラムは、断ってから、私の耳元に囁く。


「カイウスだが……生きているぞ」

「っえ!!」

「さ、騒ぐな。今は、牢屋に閉じ込められている。……ガルドン殿と考えたんだがな。お前には、二つの道がある」

「……なに」


 エイブラムは、二つ指を立てる。


「一つは、このままレーザとジュリオスの傀儡として生きること。これはないな」

「うん」

「もう一つは、カイウスに会いに行き、王位を譲ること。お前はその妻として、カイウスと結婚すればよい。そうすれば、お前はカイウスに囲ってもらえるし、アイツも牢屋から出られるだろう」

「……っ!!」


 その考えはなかった。考える力など、もう失っていたが。


「……そうするよ!」

「よし。じゃあ、カイウスに会いに行くぞ。そこにガルドン殿が待っておる」


 私達は部屋を後にした。


 牢屋へと向かう。


「……居るな、これは」


 ガルドンが囁く。レーザ達だろう。


「……無力化出来る?」

「鍵はある。これを貴方に託そう。俺達がレーザ達を抑えている間に、カイウスを連れ出せ」

「……分かった」


 鍵を持つ手が震える。一世一代。これが失敗すれば、私達の人生は終わりだ。


「……行くぞ!」


 ガルドンとエイブラムは剣を持って、牢屋の前に躍り出た。


「……待ってたぜ、オマエ達のことをよォ」

「……やはり来ましたね」


 レーザとジュリオスは、そこに居た。


 そしてその奥には。


「カイウス!!!」

「アリア様……! よくぞご無事で……!」

「カイウスこそ……!」


 思わず駆け寄りたくなるが、前にレーザ達がいる。危険だ。


「さァ、ちょっくら戦うか」

「……若造に、アリアの未来は渡さんぞ!」

「白狼隊の力、思い知れぃ!!!」


 キーン!!


 瞬間、金属のぶつかる音が鳴った。


 私は急いで、カイウスの元へ行く。


「させねぇぞ!!」


 レーザがこちらに来るが、ガルドンがすかさず遮る。


「お前こそな!!」


 激しい金属音を聞きながら、牢屋に近寄る。


「いけませんよ、アリア様。僕達と、部屋に戻りましょう?」


 ジュリオスが遮るが。


「ジュリオス! どけ!!」


 エイブラムが、ジュリオスを拘束した。


「くっ……」


 その隙に、今度こそ牢屋の鍵を開ける。


「カイウス!!」

「アリア様!! お待ちください、こやつらを拘束します」


 カイウスはそういうと、エイブラムとガルドンと協力して、あっという間に二人を拘束してしまった。


「っ……クッソーー!!! カイウス!!! 覚えてろよ!」

「……僕の管理された愛は、アリア様に届きませんでしたね」


 レーザは眉間に皺を寄せて、全力でカイウスを睨んだ。

 ジュリオスは、残念そうに、寂しそうにそう呟いた。


「アリア様、行きましょう」


 カイウスはそう言って、私を姫抱きした。

 その温度が、懐かしくて。私は泣きながら笑った。


 地下の牢獄から、王座の間へと駆け上がる。


「はは、きゃはは!!」


 この時ほど、人生で無邪気に笑ったことはなかっただろう。


「アリア様!!」

「ご無事でしたか!!」


 兵士達が、続々と集まる。


「急ぎ、王位をカイウスに譲る。私はカイウスと結婚する。いい?」

「はい!? は、はい!!」


 その漢気のようなものに、カイウスは思わず心臓を打たれた。


 レーザとジュリオスは一旦牢屋にて拘束し、その間に手続きを済ませる。


「私は、一人で国を背負うことに疲れました。これからはカイウスに『剣』として国を守ってもらい、私は彼の傍で、皆を愛する『心』でありたいのです」


 国民達にそう告げ。


「私は今日から、王カイウスの妻、聖妃として、この国に在ります」

「うぉー!!!」

「聖妃様ー!!!」


 久しぶりに見た国民達の笑顔。私は柔らかく微笑んだ。


 振り向く。


「そして……ジュリオス。カイウスが王になっても、国の『法』を作るのはあなたしかいない。……レーザ。私が安心して暮らせるよう、この国の『土壌』を豊かにしてほしい。貴方達も、私の大切な家族として、新しい国を支えてくれる?」


 拘束された二人に向けて、微笑む。


「……主は、甘ぇよ」

「えぇ、本当に。ですが、そんな優しい貴方を、僕達は愛しています。……仕方ありません、従いますよ、僕は」

「……レーザは?」


 暫し、黙り込み。


「……あんな事して、ごめん」


 小さく、謝った。


「……うん」

「……カイウスに、仕えてやるよ。おい、カイウス!! テメェ、主に変なことしたら許さねぇからな!!!」

「ふ、分かっている。お前達に言われるほどではない」

「カーッ!! スカシ野郎!! 良いとこ持ってきやがって!! テメェ、一生仕えてやる!!」

「ふっ、ふふ、あはははは!」


 私は思わず笑ってしまった。


 驚いたように、皆がこちらを見る。……私が無邪気に笑ったのを見ていた、カイウス以外は。


「改めて、今日からよろしくね、皆」


 バルコニーから、陽の光が降り注いで、私を照らす。


「……」


 あまりの神聖さに、思わず皆、息を飲んだ。


 空は、すっかり晴れていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ