第十二話 贖罪中毒
この辺が書きたくて仕方なかった
私も書きながら心が痛かったですが、この先に大きな光があります!
私はその日から忙しい日々を送っていた。
街中にあったサニエルの石像を撤去し、アリアの像へと置き換える作業の決裁。
サニエル金貨を、アリア白銀貨へと変える政策。これらは、輔弼卿エイブラムとも相談。
帝国の戦勝記念日を廃止し、「建国記念日」へと改める祭事の監修。
聖律審問院の拡大。罪を告白したい民が殺到するため、聖律卿ジュリオスと共に、告解のシステム作り。
旧帝国軍の中から、心からアリアに心酔し、忠誠を誓った者だけを「白狼隊」に組み込む最終面接。これはガルドンとも相談。
忙しい日々は、私の心を少しづつ削っていく。
また、何故か分からないが、私の奇跡をまた受けたいという国民が後を絶たないのだ。
だから週に一度、金曜日に、受けたい者を集めてそれは行われた。
「“神よ、なぜ私を生み給うた”……っ」
私はその度、絶句する。
狂人のようだった。目は血走っていて、私が力を使うと、叫びながら笑い出す。
彼女達の腕には、ナイフかなにかで切った跡があった。
「健やかに生き、働くことこそが最大の贖罪です」
私は震える声でそう呼びかけるが、聞こえているか分からない。
彼女達の狂い方は、私の胸を強く痛めつけた。
そして遂にある日、死者が出た。
遺書は、私の元まで届いた。
『あぁ、私は死ななければならない!! 長い間、救世主様のいるアリアージュとの戦争に声を上げず、のうのうと平和に生きてきた罪の、なんと深いことか!! アリア様、私は死にます。どうか、この死に苦しみ多からんことを、神よ、私の罪を洗い流し給え!!』
それを読んだ私は、心臓を握りつぶされるような苦しみを感じた。
「こんな、こんなこと……したかったわけじゃない」
遺書に涙が落ちる。
こんなの、あんまりだ。私は、守るべき民達を傷つけている。
「神よ、なぜ私を生み給うた……?」
口から染み出たように、呟く。慣れてしまった言葉。私の罪。
能力を民に行使するのは、それ以降やめた。
それから少しして、暗殺未遂の事件が起こった。
兵士に簡単に捉えられた彼は、自殺した女性の夫だった。
「アリア様のせいで、僕の妻は死んだんだ!!! 貴方のせいだ!!!」
その叫び声は、私の心の奥底まで届き。
「あぁ……あぁ、やっぱり、そうだよね……」
私の心は、粉々に砕けた。
私は暫く、部屋に籠った。
椅子に座って、ぼーっと過ごす日々。
空はくすんで見えて、私の目に光は映らない。
ある日、レーザが部屋にやって来た。
「主、新しい部屋用意したぞ!」
赤いお下げを揺らしてそう言うので、着いて行った。
新しい部屋は真白く、清潔感と高級感が共にあった。
「綺麗なとこだね。ところで、なんで新しい部屋なんて────────」
振り向いたが、レーザはいない。
カチャ
そして、鍵を閉められた。
「……は?」
乾いた声が漏れる。
「ごめんなさい、主。オレ達、主を失うのが怖い」
そう言って、私は軟禁された。
白髪はくすんで、陽の光は出ない。鉄格子つきの曇りガラスからは、くすんだ光しか貰えなかった。
私はそこで、自分の罪と向き合い続けた。




