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驚きの人物



ここにはいないはずの声が聞こえて、勢いよく顔を上げる。

そこにいたのは、セルシアだ。

いつどうやってここに来たんだ?


混乱する頭の中、セルシアは俺の元へと駆け寄ってくる。正確には、顔面蒼白になったエリアの元だ。


「セルシア、なんでここにいるんだ……?」

「お兄様達が乗ってきた馬車にこっそり乗ってきました。勝手なことをして申し訳ございません」

「無事なら良いんだけど……それよりも手伝うって」

「私、医療魔術の心得があるんです」



目を見開く。

医療魔術は、魔術の中でも高度なものに入る。

理由としては、医療に使える魔獣は数が少ないだけではなく、とても気性が荒いのでたとえ召喚できても上手く使いこなせず、逆に自分か大怪我を負うこともざらだからだ。


今まで使ったところを一度も見たことがなかったせいか、かなり驚いた。


けど、今この場で確かな希望であることは間違いない。


「セルシア頼めないか?」

「はい」


力強く頷いたセルシアは、エリアの前で両手を翳し呪文を唱える。

そこで違和感に気づく。


魔術に使う呪文は、アルボルの知識として俺の中にあるが……医療魔術に使う呪文はもう少しニュアンスの違う呪文だったような。


まぁ、魔術と言っても、多種多様と聞くしアルボルの知らないものをセルシアが知っていてもおかしくないか。


暫くすると、目の前にふわりと緑の光が舞い始める。蛍のようなそれは、エリアの上にと降り注ぐと彼女を包み込んでいく。


そして、一瞬強く光ったかと思うと、パンっという音と共に弾け飛ぶ。


思わず閉じた目を開くと、そこには先程まで蝋のような肌をしていたエリアの頬に赤みが戻ってきていた。


慌てて脈などを測ると、正常に戻りつつあった。


「これが……魔術」


思わず呟いてしまう。

この世界が異世界であることを改めて思い知らされた気分だ。凄いと思うと同時に、ほんの少し恐怖すら抱く。

けど、この奇跡が無ければ……エリアもお腹の子供も助からなかった。


「ありがとう。セルシア」

「いえ、お役に立てたなら、なによりです」


その後、娼婦が呼んでくれた医師が無事到着し、エリアは男の子を出産した。

ひとまず出産騒動は治まったのだった。



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