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I am Aegis Mors 3  作者: アジフライ
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第28話【地に堕ちた天の使い】

前回からの続き……

『死ねぇェェェ! ! 』

天使がそう叫ぶと槍は一斉に清火の方へ飛んできた。

……マジか……また私……死ぬっての……?

視界に映る無数の槍を見て清火は死を覚悟し、 目を瞑る。

すると次の瞬間……

『バキキキキキキキッ! ! ! ! 』

黒い槍が一瞬にして何かに砕かれ、 消え去った。

何が起こったのかと清火は目を開けるとそこにいたのは

「ふぅ……間一髪と言ったところでしょう……」

白いドレスのような布がはためく鎧を身に纏う黒く長い髪の女性が背を向けている……

その手には一本の大剣が握られていた……

あの人は……ザヴァラム!

「ザヴァラム……さん……? 」

清火はそう呟くとザヴァラムは清火の方を見る。

「遅れてごめんなさい、 ここまでよく頑張ってくれたわね……」

そう言いながらザヴァラムは微笑む。

するとそこに

「いやぁ危なかったなぁモルスさん! 」

イージスが清火の背後に現れ、 肩をポンポンと叩く。

「イージスさんまで……どうしてここに……? 」

清火は二人が現世にいる事に困惑する。

するとイージスは背中の剣を抜き、 清火の方を振り向き

「詳しい話は後だ……今はあの天使を倒すぞ」

そう言って笑顔を浮かべた。

「行くぞ……ラム! 」

「ハッ! 」

イージスの掛け声と同時にザヴァラムは飛び上がり、 天使の方へ突進した。

天使は二人に反応し、 目にも留まらぬ速さで空中を飛び回り始めた。

二人はそれを追いながら剣で攻撃する。

しかし天使の周囲には謎のバリアが張られており、 二人の攻撃が届かない。

天使は宙を飛び回りながらも両手に黒い槍を取り出し、 振り回すように二人に攻撃を仕掛けてくる。

二人も負けじとその動きに付いて来ている。

凄まじい闘いのせいか、 上空では雲が渦を巻き、 激しい金属音のような音が重なるように響き渡る。

「……凄い……あの二人……」

清火は空で繰り広げられる激戦に圧倒される。

全快の私でもあんな事……出来るかどうか……

清火の目でも追えない速度で天使と二人は宙を飛び回る。

そしてしばらくするとイージスが空から落ちてきた。

それを見た清火は慌てる。

「だ、 大丈夫ですか! 」

しかしイージスは

「ッつつ……あぁ大丈夫大丈夫! ……ったく、 年は取りたくないもんだな……! 」

ケロッとした様子で立ち上がり、 再び空へ飛び上がった。

が……頑丈過ぎない……? 地面にクレーター出来てるのに……

清火はイージスの頑丈さに唖然とする。

…………

上空にて……

「……」

『妬ましい妬ましい妬ましいぃぃ! ! 』

ザヴァラムは戦いながら天使の顔を見て何か思う様子を見せる。

天使は相変わらず憎悪が籠った声で叫び続ける。

そして槍を振り回し、 ザヴァラムに攻撃する。

ザヴァラムは一本の大剣で天使の攻撃を捌く。

「……速い……私の速度に追い付くなんて……これは……何かに力を与えられている……? 」

ザヴァラムは天使の強さに異常性を感じる。

すると

『うわぁぁぁぁ! ! ! 』

天使は発狂しながら槍を振り回す。

それと同時にザヴァラムの周囲に竜巻が発生し、 一斉に襲い掛かってきた。

(……まずい……! )

ザヴァラムは危険を察知し、 防御しようとすると

「うおらぁ! ! 」

イージスの声と共に複数の竜巻が一斉に横に真っ二つに斬れ、 竜巻は消えてしまった。

ザヴァラムの目の前にはイージスの姿があり、 剣を薙ぎ払った体制で構えていた。

「……大丈夫かラム! 」

「はい、 助かりました! 」

「一人じゃ駄目だ、 二人で一点集中で掛かるぞ! 」

「はい! 」

そして二人は天使に向かっていく。

二人は息を合わせるように斬撃を繰り出す。

しかし、 天使はその猛攻を諸ともせず、 両手に持つ二本の槍で攻撃を防御する。

「くっ……! 」

「こいつ……! 」

『……お前達……夫婦か……』

唐突に天使は二人に話し掛ける。

「あぁ……それが何だ? 」

攻撃しながらもイージスは答えると天使は憎悪に溢れた表情に変わる。

『あぁ……妬ましい……妬ましいぞ……私は……私の愛する御方に……見向きもされず……地に堕とされたというのに……』

すると突然天使は槍を捨て、 自身の体を引っ掻き始めた。

身に付けている服は爪で裂け、 血で滲む。

顔中には引っ掻き傷が出来、 血がだらだらと流れ出る。

しかしその傷から黒い炎が噴き出し、 瞬く間に再生した。

『やはりこの世界は憎い……私に唯一残された王も……私から奪って行った……許せない……お前達も……この世界の全ても……全て焼き尽くしてやる! 』

完全に狂ってる様子の天使を見たザヴァラムは少し悲しげな表情を浮かべる。

すると次の瞬間……

「ラム、 危ない! 」

イージスがそう叫ぶと同時にザヴァラムは体全身を何かに叩きつけられたような感覚に襲われる。

天使がザヴァラムの頭上に瞬間移動し、 拳でザヴァラムを地上へ叩き落したのだ。

空かさずイージスは天使に攻撃を仕掛ける。

…………

地上へ落とされたザヴァラムはすぐさま起き上がる。

「……ッチ……あともう一本……あの大剣があれば……」

ザヴァラムはそう呟く。

それを聞いていた清火は思い出す。

……そう言えば……ゼヴァに持たせていたあの大剣……今ザヴァラムさんが持っている大剣と同じ形……まさか……

察した清火は徐にあの大剣を出す。

それを見たザヴァラムは驚きの表情を浮かべる。

「その大剣……私の……どうしてあなたが? 」

「……分かりません……でも……この大剣……ザヴァラムさんのと同じですよね? 」

聞かれたザヴァラムは黙って頷き、 清火から大剣を受け取る。

するとザヴァラムは受け取った大剣を見つめる。

「……そう……ずっと持っててくれたのね……ありがとう……」

ザヴァラムはそう呟くと両手に大剣を構え、 振り回す。

そして大剣を地面に叩きつけると凄まじい威力の風圧が起き、 ザヴァラムの左右の地面が抉れた。

……え……ザヴァラムさん……凄い筋力……

清火が圧倒されているのを余所にザヴァラムは

「……やっぱり……私にはこれが一番よく馴染む! 」

そう言い、 再び上空へ飛び上がった。

…………

その頃、 上空では……

「……」

『ッ……』

イージスと天使が一対一で闘っていた。

天使は戦闘のやり方を変え、 槍の他に雷や炎の球、 氷の竜巻などを発生させ、 様々な魔法で攻撃する。

しかし、 イージスはそんな攻撃をたった一本の剣で斬り裂くようにかき消してしまった。

それを見た天使は

『まさか……お前かぁぁ! 剣の英雄! ! 』

そう叫ぶ。

「剣の英雄か……何だか色んな呼び名が付けられて覚えきれないなぁ……」

イージスはそう言うと天使に斬りかかる。

天使は素早く槍で防御し、 後方へ弾き飛ばされる。

すると天使は黒い槍を出現させ、 そこに雷を落とす。

凄まじい威力の電気を纏った槍は天使の手から放たれ、 まるで稲妻のような軌道を描きながらイージスの方へ飛んでいく。

しかし、 槍がイージスのすぐ目の前まで来た瞬間、 イージスは凄まじい速度で剣を振るい、 槍を斬り落としてしまった。

(……見えない程ではないか……でも……明らかにこの火力は異常だ……これも奴の……)

イージスは天使の力に何か思い当たる様子を見せる。

すると次の瞬間、 天使はイージスの背後に現れ、 片手を手刀の様に構え、 黒い炎を纏わせて刃を形成した。

そしてその手をイージスに突き刺そうとした瞬間

「……そんな俺ばっかり見てて大丈夫か? 」

『ッ! 』

イージスは天使の方を振り向き、 そう呟くと

「……フンッ! 」

ザヴァラムがイージスの前から現れ、 両手の大剣を天使に向かって振りかざす。

イージスは瞬間移動でその場から離れるとザヴァラムは思い切り大剣を振り下ろした。

すると二本の大剣から巨大な空気の刃が発生し、 爆発のような凄まじい轟音と共に天使の方へ飛ぶ。

天使は両手に槍を出し、 防御するも、 そのまま雲の上へ吹き飛ばされてしまった。

「……ラム……その剣……」

ザヴァラムの横に現れたイージスはザヴァラムの二本の大剣を見る。

「……あの子が持っていたんです……経緯は分かりませんが……」

それを聞いたイージスは少し驚く様子を見せるも

「……そうか……何だろうなぁ……複雑な気持ちだな……」

それだけしか言わなかった。

「……えぇ……本当に……」

ザヴァラムはそう言うと再び構える。

すると……

『……憎い……憎いぃぃぃぃ! 』

雲の中から天使の声が響き、 渦巻く雲が形を変える。

その形はまるで巨大な怪物のようになり、 二人を睨み付ける。

『オ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛……! 』

怪物のような雲は唸り声を上げ、 二人に雷を食らわせる。

しかし……

「……ふん……この程度……かの神器、 電気マッサージャーにも及ばん……」

「その例えはどうかと思うけど……まっ、 この程度何ともないのは同感だな! 」

そんな会話をしながら二人は平然としていた。

二人の様子を見た天使は驚く。

『何……馬鹿な……今までのは茶番だとでも言うのか! 』

そう言う天使に二人は

「まぁそうね……ウォーミングアップには最適な相手かもしれないわね……」

「悪いな……あの子にちょっとかっこいい所を見せたくてつい焦らしてしまったよ」

冷静な様子でそう返す。

すると天使は怒り狂う。

『ふざけるなぁぁぁぁ! ! 』

そして天使は次なる攻撃をしようとした次の瞬間……

「もうここまでにしよう……剣技……」




「神殺し……」




イージスは剣を収めて構え、 青い炎と共に姿を消した。

すると気付かぬうちに雲は縦に真っ二つに斬られていた。

イージスは剣を天に掲げた体制で静止していた。

「ラム! 畳みかけろ! 」

「承知致しました! 」

イージスの指示を受けたザヴァラムは瞬間移動し、 雲の中から姿が顕わになった天使の目の前に現れ、 大剣を突き出した。

天使は焦った様子で槍で防御する。

しかし、 天使の槍はいとも簡単に砕かれ、 ザヴァラムの大剣が天使の胸を翼諸とも貫いた。

天使は口から大量の血を吐き出す。

『……ゴフッ……こ……この力……お前は……! 』

そう言うと天使はザヴァラムの大剣を握る。

しかし当然ビクともしない……

するとザヴァラムは語り始める……

「……懐かしいわね……昔あなたと出会ったばかりの頃……こうして喧嘩もしていたわね……その度に悉くあなたは私にボコボコにされて……よく泣いていたわね……」

ザヴァラムは少し寂しげに微笑む。

それを見た天使は

『……ッ……何だ……この感情……』

そう呟きながら涙を溢していた。

「……今まで……あの国を守ってくれていたのね……ありがとう……」




「レフィナス……」




「そして……ごめんなさい……あなた達を……置き去りにしてしまって……」

ザヴァラムがそう言った次の瞬間、 ザヴァラムは大剣を思いきり左右に開き、 天使の体を斬り裂いた。

天使の体は上半身と下半身で真っ二つになり、 落ちていく。

「……ゆっくり休んで……もう苦しまなくていいから……」

落ちながら体が消えていく天使を見ながらザヴァラムはそう呟いた。

『……あぁ……ザヴァ……ラム……』

天使はそう呟くと灰のようになって消えてしまった。

その灰と一緒に……涙のような水滴も散っていた……

…………

戦いを終え、 清火の元へ戻ってきたザヴァラムとイージスは武器を収める。

「……お二人とも……強いんですね……あの天使の攻撃に諸ともしていなかった……」

戦いに圧倒された清火に二人は

「ハハッ……まぁ、 若い頃には及ばないけどね……」

「私も……少し体が鈍ってしまったみたい……」

苦笑しながらそう言う。

……嘘だ……二人にはまだ余裕があった……この二人……一体……

清火は二人がまだ本気でない事を見抜いていた。

するとイージスは思い出したように話し始める。

「あぁそうそう、 今すぐ攻略者協会の本部に来てもらえるかな? 」

「会長からお話があるそうよ……」

「え……まぁいいですけど……それよりも二人の話も……」

「それは後から説明するよ……」

二人の事が気になって仕方がない清火にイージスはそう言い、 三人は攻略者協会本部へと向かった。

夕暮れ時、 三人は攻略者協会本部へと到着した。

そこにはいつも通り拳一が出迎え、 会長室へと案内した。

……二人がすんなり通れたという事は……既に会長とも会っているのか……となると結構前にここに戻ってきていたのか……

清火は自身が思っているよりも前に二人が現世に戻ってきた事に気付く。

そして三人は会長室へ入る。

「おぉイージス君にザヴァラム君、 そして今回の騒動を収めてくれた英雄、 モルス君! よく来た」

修次郎は三人を歓迎し、 ソファーに座らせる。

「……さて……どこから話したらいいものかな? 」

修次郎は早速清火に質問すると

「まず、 二人がここへ戻ってきた理由を聞かせて欲しいです……」

清火は迷わず二人に聞いた。

するとイージスが口を開く。

「俺から話そう……」

そしてイージスは語り始めた……ザヴァラムと共にあの不思議な空間で見たモノを……

続く……

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