第29話【諸悪】
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それはイージスとザヴァラムがあの空間で謎の遺跡に潜っていた時の事……
「……イージス様、 やはりこの遺跡……底がありません……」
二人は遺跡に湧いてくる謎の魔物達を倒しながら下へ続く階段を探していた。
しかし、 いくら進めど底が見えてこないのに不思議に感じていた。
「うーん……やっぱりこの遺跡……無限ループしてるのか……」
イージスは遺跡の通路が無限に続いている事を推測する。
(……隠し部屋とかあると思うんだけど……どこの壁を探っても何も出てこない……完全に煮詰まってしまってるなぁ……)
そう思いながらもイージスは遺跡の床や壁を探りながら進んでいく。
そして最終的には下へ続く階段がある行き止まりに着いてしまう。
「……行きましょう、 イージス様」
「待ってくれラム……きっとこの下に行ってもまた同じ通路が続いてるだけだ……何かあるとしたら……ここにあるはず……」
先に進もうとするザヴァラムをイージスは止め、 周囲の壁や天井を探り始めた。
数十分後……
イージスはツタに覆われた壁を探るとそこに不思議な形で生えているコケを見つけた。
その形はまるで剣のようだった。
「……このコケの形……今までツタで隠されてて分かりづらかったけど……変な形をしてるな……」
そしてイージスはコケを取り除いた。
するとそこには剣の形をしたくぼみが現れた。
それはイージスの剣とぴったり合う大きさをしていた。
(……まさかな……)
イージスは背中の剣を手に取り、 くぼみにかざす。
すると剣は磁石の様に引き寄せられ、 くぼみにはまった。
次の瞬間、 二人の足元から触手のような形をした棘が生え、 二人を取り囲んだ。
「イージス様! 」
「これは……! 」
そして瞬く間に二人はその棘に覆われ、 床の中に呑み込まれてしまった。
…………
「……ラム……大丈夫か……」
「はい……しかしここは一体……」
気が付くと二人は真っ暗で何も無い空間にいた。
しばらくすると……
『ようやくここへ辿り着いたか……選ばれた一族とシュラスの欠片よ……』
少女のような声と共に二人の前に一筋の光が差し込む。
その光の中にイージスの剣が浮いていた。
すると……
『おっと……この姿では話しづらかろう……ちょっと待っておれ……』
謎の声はそう言うと剣が輝き出す。
光に包まれた剣は徐々に形を変え、 人のような形になっていく。
光が消えるとそこには不思議な服装をした一人の少女がいた。
脚のつま先まであろう長い髪は赤と黒が混ざったような不思議な色をしており、 いくつもの束になるように結ばれている。
そしてその眼を開けると星空のような何とも言えない美しさを放つ不思議な瞳が覗かせる。
少女は二人を見ると微笑む
『うむ……この姿になるのは初めてであるが……中々上出来じゃな……』
そう言いながら少女は宙に浮きながら胡坐をかき、 頬杖をつく。
「……えっと……まさかとは思うけど……君は……あの剣? 」
イージスは少女に驚きながらもそう聞くと少女は笑う。
『かっかっかっ! ! 先の変化を見た通りじゃよ、 妾は名無しの剣じゃ……まぁ名を持たぬ故、 好きに呼ぶが良い……それよりこの時を待っておったぞ……イージス……選ばれた一族よ』
「マジか……今まで生きてる感じはあると思っていたが……まさか話せたなんて……」
(しかも……のじゃロリか……)
突然の出来事に彼が困惑していると少女は不敵な笑みを浮かべながら一つ咳払いする。
すると……
『う゛ッぅん……あ~……主様……え~……ごほんッ! ……スキル、 能力透視を発動します……これで分かるかのぅ? 』
「……え……えぇッ! ! ! ジースさん! ? 」
剣の少女が出した声は紛れもなくジースの声だったのだ。(ジースについては『I am Aegis』をご覧ください)
「マジかよ……今までずっと俺の中で話してたのって……君だったのか……」
『かっかっかっ! ! 中々上手い演技じゃったろう? お主が妾を気兼ねなく使えるようにと思うてのぅ、 悟らせぬようにしておったのよ! 』
(ジースさんについては色々謎が多かったけど……こっちの世界で剣を手にした時からまた声が聞こえるようになったのはそういう事だったのか……)
「じゃあ……その姿は? 」
『この姿はお主らのような者でも馴染みやすいと思うて繕うたのじゃ……これならちとは話やすかろうて』
(変形できるのは知ってたけどまさか人にまでなれたなんてな……)
そしてしばらく雑談した剣の少女は本題に入る。
『さて……ここまで来るのに随分と時間を使うてしもうたのぅ……じゃから手っ取り早く話すぞ』
「あ……はい……」
『えぇ、 こほん……ではイージスよ……まずお主が知りたがっていたこの次元迷宮の根源じゃが……まぁこれが何とも面倒な相手でのぅ……』
『全ての起源……シュラス……』
『そ奴から生まれた影が……この次元迷宮と言う忌まわしきモノを生み出す原因となってしもうたのじゃ……』
「全ての……起源……? 」
二人は困惑すると剣の少女は説明する。
『うむ……全ての起源シュラス……それは文字通り全ての起源となったこの世の絶対的存在……それは神々すらも想像の出来ぬ事を成せる力と知を持ち……文字通り『全て』を作り出した者じゃ……』
「シュラス……思い出した……昔見たあの紙……」
そう言うイージスに剣の少女は頷く。
『如何にも……あれは正しくシュラスの名を語り継ぐための……一種の手紙じゃな……』
「え……もしかして……今までずっと……」
『うむ、 見ておったぞ? お主のありとあらゆるもの……心の中まで全て知っておるわい……アレをしている時も……のぅ……』
そう言いながら剣の少女はにやける。
「だぁぁ! ! そういうのは言わなくていいんだよ! ! 話を戻せ話を! 」
『かっかっかっ! ! 若造とはそういうモノじゃ、 恥ずかしがる事でもあるまい……して、 話を戻そう……そのシュラスじゃが……大昔……ある悲劇を起こしてしもうてのぅ……』
そして剣の少女は全てを語った。
『この世』に『生命』という概念が生まれたばかりの頃……シュラスという存在は何をしたのかを……
神々の暮らす世界で起きた悲劇を……
そして……この次元迷宮の根源となった存在の全てを……
(『I am Aegis / Origin』へ続く……)
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『……まぁ……という事じゃ……次元迷宮とは言わば記憶の欠片……お主の住む世界にそこの守護竜が住んでいた世界が繋がったと思っていたようじゃがそれは間違いじゃ……全てはお主達の記憶を元に影が創造し、 力を与えられた操り人形じゃ……中には取り込まれてしもうた魂もあるとは思うがの』
話を聞いた二人は戦慄する。
(そんな……大規模な事を……)
次元迷宮を生み出す根源となった存在の圧倒的力、 そして自身の思っていたよりも遥かに上回る強大さを知って身震いする。
そこでふとザヴァラムがある質問をする。
「その……先程も言っていましたが、 私の事をシュラスの欠片と呼んだのは……? 」
『うむ……さっき話した様に、 シュラスは『この世』のありとあらゆる世界線を旅してきた……それはもう途方も無い長き旅じゃ……そんな中でひょんな事からシュラスの一部が零れ落ちる事も珍しくも無い……シュラスはただ思うだけでも新たな『世界線』を生み出す程じゃからのぅ……それで『この世』に鏤められている欠片の一つがお主なのじゃ、 言うなればシュラスの子と言っても間違いないじゃろな……』
それを聞いたザヴァラムは絶句する。
考えてもみればそれらしき片鱗がある事を彼女は自覚していたのだ。
何故剣を持つイージスと出会い、 何も違和感を持たずに忠誠を誓う事が出来たのか……そして彼が別世界に行っても尚、 世界を渡り追いかけたのか……
全ては剣を持つ者を守る為の本能……彼女は無意識的にシュラスの意志に影響されていたのだ……
そう考える彼女が自分を見失いそうになっていると
『案ずる事は無い……お主の『心』はお主の物……お主の『魂』も間違いなくここにある……故にお主の想いはシュラスのモノではない……その『想い』の主は間違いなくお主じゃ』
「俺もそう思う、 今までラムがしてきた事は間違いなくラムの意志だよ……本能だけで世界を渡ろうなんて普通はならないよ」
剣の少女とイージスがそう諭した。
それを聞いたザヴァラムは冷静を取り戻す。
「……ありがとうございます……イージス様……」
そう言うザヴァラムにイージスは優しく微笑み掛ける。
「……本題に戻ろうか……要はこの次元迷宮を消したければ……そのシュラスの力を持つ影という存在を倒せ……って事か……」
『そういう事じゃ……奴はシュラスが大昔にこの世のありとあらゆるモノに分散させたお陰で今まで復活は叶わずにおったが……奴もしぶといモノでのぉ……たった数千年の時でもう肉体を取り戻しおったのじゃ……復活は時間の問題じゃろうな』
「……その影を倒す手段は……」
『無論、 妾の力を扱える者が妾でその影を貫く事じゃ……じゃがシュラスでは力が噛み合わぬ上……どんなに力を持つ神でも妾が許さなければ扱えぬから他の者から適合者を探さねばならぬがのぅ』
それを聞いたイージスはある疑問を抱く。
「それじゃあ……君が許せばいいんじゃ? 」
『うぅむ……それもおいそれと簡単に行くようなモノではない……奴らは心と言う概念を持たぬからのぅ……心を持たぬ者……もしくは心がそれ相応の強さを持たぬ者でなければ妾を扱えぬ……前提の問題なんじゃよ』
「でも……なんでそんな中で……俺を? 」
すると剣の少女は少し間を空け、 笑みを浮かべながら言う。
『お主は中々に面白そうだったからじゃ、 心の強さも中々であったのもあるが……妾は許す者を気分で決めておるのじゃよ』
それを聞いたイージスは拍子抜けする。
(き……気分かよ……てっきり運命だとかなんだとか言うのかと思った……)
すると一通り話し終えた剣の少女はイージスの目の前に寄る。
『妾の教えるべき事はこれで以上じゃ……あとは何をするもお主の望むままにするが良い……妾はお主と共に戦うのみじゃ……』
そう囁くと剣の少女は光に包まれる。
『……時間じゃな……さて……妾に課せられた宿命を果たすのは……果たしてお主か……面白い事になりそうじゃ……存分に見せておくれ……』
「ま、 待ってくれ! 最後に聞きたい事がある! 」
消えかかる少女にイージスは最後の質問をする。
「剣を持つ者を守る者について教えてくれないか? 」
それはかつてイージスが聞いた剣を持つ者を守る宿命を背負った者についてだった。
その者は一体何者なのか……イージスはそれがずっと気になっていたのだ。
すると少女は少し考え込むと
『……エル・メルフィーラ……その者がかつてシュラスと約束したのじゃ……この世の全てを滅ぼさんとする影を消す助けになると……そして妾を扱える者を見つけ、 守り抜くと……』
「約束……」
『時間が押しているでのぉ……詳しくは話せぬのじゃが……これだけは言えるぞ』
『もう既に……その者はお主達のすぐ側におるぞ』
「……へ? 」
『あぁそれと最後に……影の復活が間近になっているでの……今頃現世では化け物共が暴れ回っておるぞ……時空にズレがあるとは言え早く戻った方が良いかもしれんぞぉ』
それを最後に剣の少女は姿を変え、 剣に戻ってしまった。
それを聞いた二人は驚愕する。
「えぇ! ちょっ! マジかぁぁ! ! 」
「イージス様、 現世へ戻りましょう! 」
気が付くと二人は遺跡の中へと戻っていた。
そして二人は慌てた様子で遺跡を後にし、 現世へ戻る亀裂へと飛び込んだのだ……
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「で、 俺達は当初の目的を果たしたからここに戻ってきたって事……」
「そうだったんですね……」
「ごめんなさい、もっと早く駆け付けるべきだったのに……」
事態の収拾をほぼ一人で果たした清火に二人は申し訳なさそうに頭を下げる。
「片付いた事はもう良しとしましょう……それよりも……次元迷宮の根源がそんな奴だったなんて……」
するとその時、 清火は激しい頭痛に襲われる。
ッ! ……またか……ずっと戦っていたから無理も無いか……にしても……この感覚……何か妙だ……
頭痛で頭を抑える清火に三人は慌てる。
「モルスさん! 大丈夫ですか? 」
「無理も無いわ……ずっと戦えば疲れるものよ……」
「とりあえず医務室で休みなさい……拳一君! 」
そして修次郎は拳一に指示を出し、 清火を医務室で休ませる事にした。
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医務室のベッドで清火は眠っていた……
相変わらず頭痛が清火を襲う……
その時……
『……お姉ちゃん……』
真っ暗な意識の中、 清火の目の前にあの少女が姿を現す。
……またアンタ? ……今度は何……
すると清火を見るや少女は涙を溢した。
『お姉ちゃん……あなたの家族はもう……すぐ側にいるよ……』
突然少女はそんな事を言った。
側にいる……って……私の家族が……?
困惑する清火に続けて少女は言う。
『そして……気を付けて……これから近い未来……お姉ちゃんにとって……最悪な事が起こる……』
……え……どういう……
『でも……どうか絶望しないで……例え大きな影が全てを覆い尽くしても……必ずそこに光がある……この言葉を……忘れないで……』
その言葉を最後に少女は清火の前から姿を消す。
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清火は医務室のベッドの上で目が覚める。
「……私の家族が……すぐ側に……」
清火はそう呟くとベッドから起き上がる。
……まさか……ね……
そう思いながら清火は再び会長室へと向かった……
続く……




