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元王子クロイツとその弟子達の軌跡-史上初のSSランクを従える男-  作者: 焼納豆


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記憶が……

 リサとリージョの話は止まらない。


「……で、私は師匠にブサ村で助けて頂けたのです」


「そうですか。やはりリサは私の妹で間違いないですね。私の調査によれば、父さんと母さんは逃亡を図って死亡した。リサもその話は聞いていたのでしょう?それがブサ村だったのですね。でも、その後が酷い。惨い扱いを受けていたのだね……リサ。助けてあげられなくて、ごめんね」


「ううん。お兄ちゃんに比べれば何て事ないですよ。師匠が助けてくれましたし、ブサ村の村民にも罰を受けさせましたからね。お兄ちゃんも理解しているでしょう?師匠の凄さを。最初から師匠の助力によって強さを手に入れた私と違って、お兄ちゃんは本当にその身一つでAランカーにまでなっているのだから、凄いですよ!尊敬します!!」


「……少し照れるけど、ありがとう。私は父さんと母さんを拉致して赤の紋章を付けた人物を探し出す為に修行を続けていました。リサも冒険者として師匠と共に依頼を受けていたのでしょう?」


「そうです!でも、師匠はあれでいて結構寂しがり屋で、隠しているつもりなのでしょうが女性に目がないんですよ。しょっちゅう視線が泳いでいて……私が単独で行動している間にお兄ちゃんをいつの間にか弟子にしていましたが、その間に色々な女性に目移りしていませんでしたか?」


「??い、いや。そんな事はない様な、そうでないような……」


 突然歯切れが悪くなるリージョ。


 今迄特段意識した事はないが、確かにリサの指摘を聞けば綺麗な女性を目で追っている事があったと思い出したリージョなのだが、ここで明確にリサの発言を肯定するのは危険だと本能が苛烈に訴えていた。


 Aランカーにまで自力で上り詰めていたリージョは、この本能に何度も命を救われた経験があり、その経験に従って行動し、曖昧な返事をした。


 少しだけ不穏な空気が流れたが、リサは納得してくれたようだ。


「……そうですか。まぁ良いです。今は特定の方はいないのですよね?」


「そ、それは間違いないですね。そもそも私の修行の為に忙しく、誰かと個人的に仲良くなる事もありませんでしたよ」


「そうですか!」


 パッと花が咲くかのような笑顔を見て危機的状態からは脱する事が出来たと安堵するリージョは、再び今までの体験等の話をする。


「リサは、初めて受付から依頼を受注する時、達成報告をする時、微妙に緊張しませんでしたか?」


「あ!わかります。私は師匠がいたからそれほどでもなかったのですが、やっぱり緊張しますよね?それに、初めて対処して頂いた方はリベラ王国のミューテルさんと言う方ですが……あっ、そう言えば……」


「ミューテル!」


 リサの話の途中で大声を出し、手を顎に当てて深く考え込んでしまうリージョ。


 何かあるのかと思い、リサは話しかけるわけでもなく自分の話を続けるでもなく黙ってリージョの反応を待っている。


 リサ本人も話の途中でミューテルが信頼できない人物である事を改めて説明しようとしたのだが、その名前を口にした瞬間にリージョが思考の海に沈んでしまったのだ。


 長い沈黙の後に、漸くリージョは口を開く。


「何だか少し前の師匠との会話の中でも、ミューテルと言う名前に違和感があったのですよ。漸く、本当に漸く思い出す事ができました。もし私の知っているミューテルであれば、その者は私達の叔母ですね。さっき説明したグアトロ王国で家が襲われて両親が拉致された後、いつの間にか家にいて全てを持ち去って行った。そう、そうです、思い出しましたよ!ミューテル!!」


 全く期待していなかった妹(リサ)との再会、そこから語られたミューテルと言う言葉を複数回耳にする事により、幼い頃に無意識下で閉じ込めてしまった記憶を再び思い出す事ができたリージョ。


「ですが、そのミューテルが私の知っているミューテルかはわかりませんし、正直会ってもさすがに顔や声は覚えていません。それにミューテルが両親の仇かまでは確証がないので、ギルド職員であるミューテルを拉致する……できないでしょうね」


「そうですか?私達の力ならば問題ないと思いますけれど?それに、どう見てもミューテルさんは……って、お兄ちゃんの知っているミューテルさんじゃないにしても、まっとうな人ではありませんから」


 確かにSランカー二人とSランカーのリサに近い力を手に入れているAランカーのリージョ一人の三人共に、各自単独で動いたとしても、ミューテル一人攫う程度であれば証拠を一切残さないで完遂する事は可能だ。


「フフフ、リサも物騒ですね。って、私も師匠に同じ事を言われた気がします。落ち着かないといけませんね」


「やっぱり兄妹は似るんですね!」


 第三者が聞けばそんな恐ろしい部分は似なくて良いと誰しもが言うだろうが、長い間引き裂かれていた兄妹であれば、そんな言葉さえうれしくなって互いにニコニコしている。


「私達二人が師匠の弟子になっている事は周知の事実。ですから、私達の悪評は師匠の悪評になってしまいます。そこだけは避けなくてはなりません。わかりますね?リサ」


「もちろんです!じゃあ、師匠に相談しましょうか?」


 どれほど長い時間会話していたのかはわからないが、本当の兄妹として、兄妹弟子として互いを認め合う事が出来た二人は、清々しい顔でクロイツの元に転移……ポチに転移してもらう。


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