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元王子クロイツとその弟子達の軌跡-史上初のSSランクを従える男-  作者: 焼納豆


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冒険者ギルドの受付(7)

 ベータは、この場での今後の自分の生活が非常に厳しくなる事をミュラから告げられる。


 ミュラが経験している事も説明されており、相当長い期間肉体労働を続けているが、休みはないし、食事はギリギリ。


 植物の育成に必要な疑似的な光はあるが外の日の光など拝める事はなく、サボろうものならどこからともなく現れた魔獣によって激しい攻撃が行われると言う事を……


 絶望しているベータ。


「ベータ殿。一体何をしてここに送り込まれたのですか?私は恥ずかしながら、赤の紋章用の人材確保・運搬要因だったのですが、それでここに連れて来られまして」


 騎士としてはあり得ない事を言っており、その話が外部に漏れようものならば二度と騎士に復帰できないばかりか、お尋ね者になる可能性が高い。


 そこから察するに、ミュラは二度と地上には出られない覚悟があると理解できてしまったベータも、隠す事無く全てを話す。


「な、なんと!そうですか。私も赤の紋章絡みです。その……ここは一体どこなのでしょうか?」


「その説明はされていないのですか。ここは、彼らの説明を鵜呑みにすればダンジョン。相当レベルの高いダンジョンだそうです。確かに上層や下層に続く階段はあるのですが、上層に進んだ場合にはいつの間にか魔獣による罰が与えられた上で、この階層に戻されています。数回試しましたが……絶望ですよ。我らの力など、どれほど束になっても一匹の魔獣にすら歯が立ちません。ベータ殿も、変な夢は見ない方が良いでしょう」


 惨たらしい怪我の痕を見せながら話すミュラの言葉を聞き、予想はしていたが、明確に絶望に落とされたベータ。


「で、では下層には?」


「上層に向かおうとしただけでこれですよ?下層なんて恐ろしくて、とても向かう気にはなれませんよ」


 その後ミュラ達と同じく、ベータの姿を地上で見た者はいなかった。


「ベータはどうした!依頼の確認はどうなっている!!」


 いつもの報告がないので、玉座にいるドレアは非常に機嫌が悪い。


 他の騎士達や残っている王族達も、この状況を打破する何かしらのきっかけが欲しく依頼受注の一報を待ち望んでいたのだが……結果得られた情報はギルド職員二名と共にベータが行方不明と言う情報だけ。


 これだけで考えれば、ベータが二人の赤の紋章と共に逃げたと判断される。


 王族との契約がなされているベーダだが、その程度はクロイツが人知れず簡単に破棄しているので一切影響のないベータと、契約が有効であれば逃亡などできない事には気が回らないドレアだ。


「裏切ったか、ベータ!」


 結果的にドレアによって反逆者として扱われる事になったベータだが、ほぼ鎖国状態である以上は形だけとなるし、最も重要なギルドの機能が維持できずにギルド総本部も対処する事がなかったので、完全に少数の王族、騎士、その家族だけで国家に取り残される形になってしまった。


 唯一の光明は、未だポイズナックが出てくる気配がないと言う事だろう。


 そんなドタバタの中、リージョは師匠(クロイツ)からの指示通りにゼリア帝国のギルドに向かう。


「依頼は完了しましたよ。今二人は、前に見て頂いた町で家を決めているところです。先住の方とも仲良くできていますね」


「うぉ!リージョ殿。できれば普通に来てもらえるとありがたいのだが……流石だな。ありがとう」


 驚きから一瞬大きくのけ反った後、引き出しの中に用意していた多額の報酬を手渡そうとするギルドマスターのメバリアだが、リージョはその受け取りを拒否する。


「メバリアさん、今回の依頼は個人的な依頼にされていますね?つまりその報酬も貴女の個人的な物。受け取るわけにはいきませんね」


「そこまで掴んでいるのか。しかし個人だろうが何だろうが高ランカーに依頼をしたのは紛れもない事実。逆にこの程度の報酬では足りないのではないか?」


「そんな事はありませんよ。報酬に見合う労働力(ベータ)も手に入れていますので。では私はこれで失礼します。そうそう、これ(報酬拒否)師匠(クロイツ)からの指示でもありますので、安心してください」


 現れた時と同じように目の前から消え去るリージョに対して、メバリアは深く頭を下げる事しかできなかった。


 その後もリージョの修行は続くのだが、普段とそう変わらない行動なのに力だけは増加するので、気合が入って余計な魔物の討伐依頼も受けている為に結構目立ってしまう。


 そのような行動をしていると……今まで自らの存在を隠蔽して行動していた事によってついた二つ名はいつの間にか消え去り、新たな二つ名で呼ばれるようになっていた。


 同じ師匠(クロイツ)を持つ者として、そして似たような外観から、“白套のリサ”にちなんで“黒套のリージョ”……と。


 その二つ名はあっという間に広がり、街道には白い外套か黒い外套を羽織った者達で溢れかえるようになっていた。


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