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元王子クロイツとその弟子達の軌跡-史上初のSSランクを従える男-  作者: 焼納豆


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冒険者ギルドの受付(3)

 行動に大きな変化がないのに、得られる力は膨大になっている……なぜそうなっているのかは不明だが師匠(クロイツ)の力によるものである事は理解できており、その人物から指定された行動を行わないと言う選択肢はリージョには存在しなかった。


 それに依頼内容も表立っては商人の護衛だが、真の依頼は赤の紋章の救出であれば猶更で、その依頼遂行中に闇の奴隷商につながる手がかり、両親の仇が見つかる可能性もある、リージョにとっては願ってもない依頼だ。


「そうだ。実は一つ提案があるのだが……突然だが、ギルドマスターは信頼できる人材と俺は判断させてもらっている」


 未だに姿を見せていないポチから渡されている小さい狼が、目の前のメバリアに警戒感を持っていない事からも、それは確実だと判断しているクロイツ。


「そ、それはありがたい。光栄だ」


 突然自分よりも高みにいるSランカーにこのような事を言われて少々恐縮しているメバリアは、この後に何を言われるのか、何を要求されるのか戦々恐々としている。


「救出した二人だが、俺の方で責任をもって保護させて貰うと言うのはどうだろうか?これは逆に俺を信頼してもらう必要があるが」


 想像していた範囲内の提案であった事から安堵するが、今まで得ている情報では赤の紋章を持つ人々の行方が分かっていない事もあり、正直に思いを伝える事にした。


「……クロイツ殿は、赤の紋章を“白套のリサ”殿と共に多数購入していたと聞いている。その後その紋章を持つ者達を目撃した者はいない。誰一人として……だ。貴殿は信頼できるのだが、やはり少々気にはなる」


 煮え切らないように見えるメバリアだが、クロイツからしてみればやはりこの態度にも好感が持てる。


 得られている情報から判断すると、人目のつかないどこかに匿って生活させている事は想像できるのだが、その情報が一切ないし、目撃情報すらないので心配になっているのだろうと判断できるからだ。


 その心配を排除する事は最低限必要だと思ったクロイツは、メバリアにこう提案する。


「そうだな。実際に見てもらわなくては納得してもらえないだろう。当然だな。じゃあ、早速行くか?」


「え、今か?最近あの国(ナスカ王国)の二人ばかり気になっていたので、業務がたまっているのだが」


 少しだけ悲しそうに、山積みになっている書類の方に目を向けるメバリア。


「大丈夫だ。ほんの数分で終わる」


 この場所から数分で往復するとなればギルドの周辺であり、どう考えても赤の紋章を匿うような場所はない事はわかっているメバリア。


 普通に考えればクロイツが何を言っているかはわからないのだが、目の前にいるのは人類初のSランカーでありAランカーを二人も弟子にしているほどの実力者であるクロイツなので、自らの常識の範疇では測れないのだろうと思い、受け入れて立ち上がる。


「わかった。で、どこに向かえば良い?一応今でも鍛えてはいるから、二人には及ばないだろうがそれなりの速度で移動できるぞ?」


「そんなに気合入れてもらわなくてもいいぞ。ただ、座ってちょっと目を閉じていてくれるか?」


 能力を隠す意味はなくはないが、突然景色が変わってダンジョンの前に行き、ダンジョンに入って再び景色が変わる事になるので、そのあたりの動揺にいちいち対処する事が面倒だと思い椅子を少々リージョと持ち上げた状態で一気に移動する事にした。


「少し持ち上げるぞ」


「いや、自分で動いた方が早……いや、そんな事はないな。よろしく頼む」


 どう見てもレベルが違う二人の方が移動速度の方が速いので、律儀に目をつぶりながらも椅子を強く握り落ちないようにしているメバリア。


 少しの浮遊感と若干動いた感覚の直後、再び椅子が地面に下ろされる感覚があった。


 まさか自分が想像以上に重いので高ランカーの二人がこの短時間で体力を消耗したのか!と思わなくもなかったが、指示がないので目は閉じたまま焦っている……


「目を開けてくれ」


 体感で数秒しか経過していないのに目を開けろと言われたので、やはり自分が重くて何か対策をする事になるのか……と落ち込みながらも目を開けたそのメバリアの目の前に広がるのは、崖下に大きく広がっている街並みと楽しそうに生活をしている人々。


「あれが全員赤の紋章を持つ者達だ。ちなみに、もう一つ別の場所では家族になった者達が同じように暮らしている。もちろん互いに行き来は自由なので、交流もあるぞ……クッ……」


 なんで自分は一人なのにと言う思いが少々出てしまったクロイツだが、驚きに包まれているメバリアはそこには意識が向かなかった。


 リージョはクロイツの性格を理解し始めており、また残念な部分が出ているな……との思いはあるが、態度には出さないようにフードの中で少々苦笑いをしているだけだ。


「クロイツ殿、これならば納得だ。何が何だかわからないが、是非二人も仲間に加えてやってくれ!」


「わかった、全て任せておけ。実は、最近何故かこの場所の入り口(・・・)に時折赤の紋章を持った人達が放置されているからな。住民が増えるのは慣れている」


 クロイツの言う通り、今まで探しても見つからなかった赤の紋章持ちが時折ダンジョン前に置き去りにされているのだが、助けられる事に変わりはないので理由は気にしない事にしているクロイツはメバリアを同じように執務室に戻し、早速リージョと共にナスカ王国に向かい、新た弟子と話す。


「リージョの今迄の活動範囲についてはあまり聞いた事がなかったな。どのあたりを中心に活動していたんだ?」


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