リサとミーシャと騎士達(1)
少しでもクロイツの事を知りたいために、暫くはナスカ王国に留まる事にしたリサ。
最初に訪れたギルドの印象は最悪であったが、その後の冒険者達の対応は納得できるものがあり、特にいざこざもなく過ごす事が出来ている。
ある程度リサの人柄を直に感じていた冒険者の一部は、時折リサと話が出来るほどにまでなっていた。
そこでリサが聞きたいのは、やはり師匠の話だ。
しかし当時家族や騎士、更には使用人達からつまはじきにされていたクロイツの噂は良いものではなく、そこには多少イライラしつつも第一王子の情報を黙って聞き、特に容姿を確認しているリサ。
今迄集めた情報から、やはりどう考えても自分の師匠はナスカ王国の行方不明になっている第一王子はクロイツ本人で間違いないと言う結論に達している。
情報を教えてくれている冒険者や一部の受付は、クロイツの悪い噂を話す時には非常に申し訳なさそうに話すのだが、生の情報を聞かなければ何も判断できないとクロイツによく言われていたリサは蟀谷がピクピクしそうになるのを何とか堪えて、その話を聞いていた。
自分からお願いして元王族の話を聞いているのに、内容を聞いて機嫌が悪くなるわけにはいかない事も理解している。
自分の立場がある程度影響力を持っている事を知っているリサは、今後どのような流れが起きるか分からないため、第一王子が自らの師匠である可能性にすら言及しておらず、時折依頼をこなしながらもひたすら情報を集めていた。
ドルドイがクロイツと初めて会ったのであろう深淵の森も散策して、以前ギルドで少々いざこざを起こして“深淵の森”に送り込んだ冒険者であるロゼッタが持っていた剣を偶然発見したりしていたが、特に何かがある事は無かった。
冒険者達や受付からクロイツの情報を貰っている時には、ついでの情報としてBランカーであったロゼッタの悪評も溢れんばかりに出てくる。
強奪、誘拐、冒険者のパーティーに強引に入り込んで破壊、等々、目も当てられない程の傍若無人ぶりだったのだが、ここ暫く姿を見せない事に喜びつつも話を聞かせてくれたのだ。
この誘拐……ひょっとしたら赤の紋章繋がりで、闇の奴隷商関連の者であるかもしれないと気になったリサだが、既にロゼッタはこの世にいない為にこれ以上動ける事は無かった。
そんなある日、いつも通りにギルドに依頼の達成報告をしていた所で受付からこんな事を言われた。
「リサ様。前回のAランクの魔獣討伐実績の件で王城より声がかかっております」
「あ~、きっと専属の話になると思うので、遠慮させて頂きます」
もとより、クロイツに対して良くない態度で接していたこの国の王族に会うつもりはないリサ。
今までも幾度となく他国でこのような王城からの何かにかこつけたような呼び出しを受けた事があるが、その全てが結局はリサを囲い込む事が真の目的だったので、あっさりと何の迷いもなくその申し出を断る。
普通の冒険者から見れば、例えAランカーとしても王族から声がかかるのは非常に光栄で、喜び勇んでその場に臨むのが普通だ。
そのため、拒絶の言葉を迷いなく口にしたリサの言っている事を理解できなかった受付。
「え?えっと、リサ様?王城からの招待ですが?」
「そのようですね。私には興味がありませんので、遠慮しますね。依頼処理の方をお願いします」
再度確認しても、やはり明確な拒絶の言葉が聞こえて来る受付。
更には依頼処理を進める様にと軽くプレッシャーをかけられたのだから、慌てて仕事を再開する。
「こ、こちらで完了になります」
「ありがとうございました。それでは」
これ以上面倒くさい事にならないように、さっさとギルドから引き上げるリサ。
暫くボーっとしていた受付だが、隣に座っている同僚から声をかけられて再起動して王城側への回答を行った。
翌日……
「その、昨日の件ですが、査問があるとかで……登城するように命令となっておりまして。大変申し訳ありません!」
ギルドに来たリサに、言い辛そうに告げる受付。
そもそも査問となると何かをやらかした時に行われる事であり、リサとしてはロゼッタの件がバレたのかと思ったのだが、その証拠は一切ないし、そもそもバレていたとしてもこの国家の法に触れるのは勝手に深淵の森に侵入した事くらいだ。
あれだけの悪行を行い、クロイツからの餞別の指輪をもあり得ない理由で強奪しようとし、恐らく闇の奴隷商との繋がりも有ったと判断できるロゼッタ。
彼の事を突っ込まれても、別段何という事はないと思い直す。
放置する事も選択肢だが、国家相手に面倒事は避けたいと思い、渋々受諾する。
「わかりました。いつ行けば良いですか?」
「えっと、今日にでもと言うお話しですが、大丈夫でしょうか?」
「大丈夫ですよ。面倒事は早く済ませるに限りますからね。では、早速行ってきます」




