リサの冒険(ドルドイとの出会い3)
既に冒険者について知識があるリサは、Bランカーと言えば立派な強者であり引くべきところは引ける知識と経験があるはずだと知っているのだが、今回助けたドルドイはある意味無謀な依頼を受けていた。
自分を過剰に評価するような人物ではなさそうなので不思議に思っていたのだが、その疑問に対してドルドイはあっさりとこう答える。
「ま、恩人の質問だから答えるぜ。身内の恥を晒すようだが、俺の一人娘がちょっとした病でな。エクスポーションでなければ治せねーと言われたんだよ。回復魔法もそのレベルで使える奴は今のところいなかった。おかげで無駄金使っちまったが……最後の望みをかけてポーションの産地で有名なこのグアトロ王国に来たってわけだ。そんで、エクスポーションを買うための資金を集めている」
ドルドイのような人格者であり高ランカーが、どう見ても苦戦する事がわかっている魔獣の素材を入手しようと無理をしている実情を知り、再び師匠であればどうするかを考えるリサ。
正直自分は師匠の育成というあり得ない異能によるサポートによってここまでの力を楽に得ているので、地道に努力してBランクになっているドルドイを心底称賛している。
更にこちらの方が重要だが、ドルドイはクロイツに対して非常に好意的であり恩を感じている所、更にはクロイツの強さを完全ではないながらも理解できている所に好感が持てていた。
「ドルドイさん。師匠のお話を聞かせて頂いたお礼をさせて下さい」
「は?いやいや、何を言っているんだ?俺が命を救われた。あんたの師匠にも救われて未だに礼ができちゃいない。借りは有っても貸しはねーよ」
Bランカーとしてのプライドか、人柄か、お礼を拒むドルドイだが、リサにとってみれば師匠の話は値千金!そしてその内容が、褒め称える内容であれば何よりも価値がある。
「ドルドイさん、勘違いしないで下さい。価値は人それぞれです。私にとってドルドイさんからの師匠のお話しは、何よりも得難い報酬でした。結果、ダンジョンでドルドイさんを助けた際に魔獣をちょっと小突いた事、ハイポーションを渡した事を合わせても、こちらに大きな借りがあるのです。ご理解いただけますよね?」
無駄にAランカーとしての威圧を出しているので、ドルドイは首を横に振る事は出来なかった。
「あれを、ちょっと小突いたって……いや、すまない。いつか必ずこの借りは返す!」
「ですから、私が借りを返すのです。ドルドイさんの中で折り合いがつかなければ、次の機会にもう一度師匠について語り合って頂ければ私は大満足です。はい。どうぞ!」
収納袋の中からエクスポーションを出して、半ば強引にドルドイに渡すリサ。
「では私はこれで。一刻も早く娘さんの所に行ってあげて下さいね!」
これ以上この場にいてはドルドイが遠慮して行動に移せないかもしれないと思ったリサは、一気に消え去る。
「……師弟共に、泣かせてくれるじゃねーか!この恩は忘れねーよ!」
ギルド方面に去っているはずなので、姿は見えなかったがそちらに向かって深々と頭を下げるドルドイ。
この後ドルドイは、多少無理をしてグアトロ王国に同行させている一人娘が待つ宿に急いで帰る。
「帰ったぞ、シズカ!」
「ゴホッ、お帰り、お父さん」
ベッドの上に力なく横たわっているのがドルドイの一人娘であり、ドルドイが命を懸けて救おうとしている娘、シズカだ。
「喜べシズカ。ついに念願のエクスポーションが手に入った。見ろ!これでお前は治るんだ!!」
「本当!ゴホッゴホッ……」
その手にあるのはリサからもらい受けたエクスポーションで、虹色に輝いている。
「さっ、ゆっくり飲むと良い」
ベッドに腰かけてシズカを優しく支えながら起こすと、エクスポーションをその手に持たせる。
その美しさに見惚れているのか、暫く不思議そうに眺めていたシズカだが、コクコクと飲み始める。
飲んだ傍からシズカの体は淡く光り、全て飲み干す頃にはその光は消えていた。
「……どうだ、シズカ?」
「お、お父さん!苦しくない!!苦しくないの!!!」
欠損すら治すエクスポーションの威力は想像通りで、シズカの病はここに完治した。
「そうか!そうか!!これで、母さんも喜ぶぞ!」
エクスポーション購入の為に、別に働いている母親の帰りを待ち望む二人。
少々激しくシズカを抱きしめて涙するドルドイだが、実はその様子を離れた位置から気配察知で確認していたリサ。
道中良からぬ連中にエクスポーションを奪われないか、何らかの事情で病気の娘が飲めずにこぼしてしまわないか、本当に治ったのかが気になったのだ。
「これで大丈夫ですね。お幸せに!ドルドイさん、シズカさん」
彼らに聞こえる事が無いお祝いの言葉を一人呟き、消えるリサだ。




