やっぱり彼女が欲しい(2)
リサはフードを被ったままだが、その身長から幼い兄弟か何かだと判断された為に店員から軽い感じで話しかけられる。
「は……はい!」
クロイツは給仕の邪魔にならないように軽く結んだ淡い茶色の髪の毛、クリッとした茶色の目、止めは抜群のスタイルの店員に目が行き、普段の荒い言葉使いは霧散している。
……ギュー……
「痛って~!」
突然つねられるクロイツの横っ腹……もちろんリサによるものだ。
可愛らしく見える二人のやり取りをみて微笑む女性。
「あらあら、フフフ。さっ、こっちにどうぞ!」
大人の余裕を見せつつも二人を席に案内する。
こんな事は、ここ最近ではかなりの頻度で起きている。
クロイツが“彼女欲しい病”によって奇麗な女性に目移りし、リサが“師匠大好き病”によって強制的に防御する一連の流れが出来上がっているのだ。
クロイツとしては、朧気ながらも前世からの野望である彼女を何としてもゲットしたいと言う思いでいるのだが、経験が無いためにそうそう上手く行くわけもなく、自分の魅力がないのか……と少々落ち込んでいたりする。
こんな日々を過ごしつつも日々赤い紋章を持つ人の救助……と言うよりも、最近は救助する機会はなくなってしまっているのだが、奴隷商から購入すると言う方法で救い出しては村に送り続けていた。
相当な数を送っているので、既に闇の奴隷商関連から巻き上げた金子は底をつきかけており、冒険者として得られた報酬をその費用に充てているのだが、実力が桁違いの二人にとっては何の苦労もなかった。
こうして依頼・救出・移動のサイクルと繰り返している中で、クロイツは一つの結論に辿り着いた。
『俺、中途半端じゃ彼女なんて出来ねーよな。今までさんざん欲しい欲しいと言ってできてねーんだから。前世も同じっぽいしな。良し!そうと分かれば考えを変えるか!この一連の動き、赤の紋章の件が一区切りつくまでは、自分から彼女を作ろうとする行動は封印だ』
今までも彼女ができなかったのに、赤の紋章の件と並行して動くのは不可能だと判断するのだが、向こうからアタックしてくれる分には全く問題ないと自分に言い聞かせている。
今までただの一度もそのようなことはなかったのだが……
そんなある日、資金調達の為に依頼を受けている時に実力不足なのか、予定外に急襲されたのか、女性パーティーを魔獣の脅威からリサと二人で救出した。
「ありがとう!二人共……強いのね」
「本当に、助かったわ。なんで私達よりも小さいのに、それ程強いのかしら?」
「そうそう。そこの所、お姉さんはとっても気になるわ~」
クロイツ達も依頼を終了しているので共にギルドに戻っているが、これは救出した三人がクロイツの後を話しかけながら勝手についてきているので、逃げるわけにもいかずに同行している状態だ。
本来クロイツやリサの力であれば既にギルドに到着して処理を終えてダンジョンに到着している時間なのだが、未だ町にも入れていない。
その事もあるが、いかんせん自分よりもかなり年上の大人の魅力を漂わせた女性三人がクロイツに纏わりついているのを見させられているリサの機嫌はすこぶる悪い。
クロイツもその気配は十二分に気が付いているのだが、女性の扱いに対する能力が極めて低いので躱す事が出来なかった。
何故かクロイツの理想ともいえる状況になりつつあるのだが、心から喜ぶことができなかったのだ。
おそらく話の内容が、リサやクロイツの力に関する質問が多くなってきたからだろう。
通常冒険者は自らの能力を秘匿するのが一般的なのだが、そこを無視して色々と詮索するように聞いて来るのでクロイツ自身の機嫌も少々悪くなり始める。
どうやってリサと二人で無難に離脱するかを考えている所、一人の女性がこのような事を口にした後に、残りの二人も続いた。
「本当に今回は助かったわ。今までなら赤の紋章を連れて冒険に行くから、ピンチになったら囮にして逃げていたけれど……」
「そうね。何故かわからないけど、最近赤の紋章を買えないのよね」
「噂によれば、誰かが買い占めているらしいわよ。迷惑よね?」
少しだけ浮かれていた気分になっていたクロイツだが、彼女達の言葉を聞いて助けなければ良かったと後悔しつつリサと視線を合わせると、一気に加速して三人を取り残してギルドに向かった。
二人はかなり強めの魔獣が近接してきた事に気が付いていたのだが、どうやって力を隠して始末するか、女性三人の安全を守るかを考えていたが、その必要が一切なくなったとばかりに去っていく。
残された三人は危険な魔獣が近接している事などわからないので、突然一瞬で消えた二人を探していたほどだ。
「師匠!見た目に騙されてはいけませんよ!」
「は、はい」
こうしてクロイツの“彼女欲しい病”は強制的に抑えられる事になった。




