Bランクへ(2)
戦力は十分以上だが交渉力はまだまだだと眉を顰めるクロイツをよそに、リサは話を続ける。
「先ずは、お二人に事情を聞きたいのですが」
不安そうな表情をしている女性二人だが、ここで再び逃げても目の前の白い外套を羽織った人物からは決して逃げられないと悟ったのか、口を開く。
「旅の途中で襲われたので、隙を見て逃げたのです」
短い一言であったため、追っていた冒険者達が口を挟む余裕すらなかった。
漸く冒険者達もどうしてこうなったかは分からないが、現状は把握したようで攻撃的になる。
「うるせーぞ。そこの真っ白なお前も、余計な事をすりゃー赤い紋章の仲間入りだ。そうなりたくなければ、さっさと消えろ!」
赤い紋章……つまりは強制的な奴隷紋と言う言葉を聞いて、リサは二人の女性に対して詳細な情報を掴むべく強く気配察知を実施すると、確かに首筋に奴隷紋が刻まれている事に気が付いた。
残念ながら今のリサの力ではその色が何色なのかまでは把握できないが、ここまで条件が揃っていれば、間違いなく赤だろうと判断する。
つまり、目の前の冒険者四人が悪である……と。
「つかぬ事を聞きますが、お二人の主の登録はされているのですか?」
「何だ?お前が欲しいのか?」
「そうだな、二人で虹金貨四枚(4,000万円)で良いぞ?主人は未登録で貴重だが、格安にしておいてやるぜ?」
どうせ払えないだろうと思っているので、目撃者は消すつもりの冒険者達は適当な金額を告げるが、主が未登録と言う部分は本当だ。
主が設定されている場合に主が命じた命令に背くと、場合によっては、奴隷は死に至る。
取り敢えずその可能性は低そうだと判断したリサだが、敢えて自らの指先を短剣で切り血を滲ませると、瞬間で女性二人の背後に移動して、その血を軽く首筋の奴隷紋に付着させる。
こうする事によって、主が登録されていなければ無条件で契約がなされるのだ。
主となった場合には奴隷を得た感覚が流れて来るので、その感覚で今この時点では二人の女性の主は自分になったと判断したリサ。
リサの動きを一切追えない女生と冒険者達だが、女性に関しては突然奴隷契約がなされたとは理解できている。
その女性二人を安心させられるかどうかは不明だが、念のため声かけだけはしておくリサだ。
「皆さん、後で開放しますので少しだけここで待っていて下さいね」
主が奴隷解放の意思を持って再び奴隷紋に血液を付ければ、奴隷は解放される。
奴隷紋は消えないが……
後で開放した上であの場所だな……と考えつつも、リサは冒険者と女性の間に移動する。
冒険者としてはこの一連の流れは一切把握できないが、目の前の白い外套を羽織った人物が敵対する意思がある事位は分かる。
問答無用で一気に四人が攻撃してきたのだが……魔法を含めた全ての攻撃は空を切ったかと思うと、四人がタイミングを計ったかのように纏めて倒れた。
「上出来だ、リサ。どちらが正義かの確認、女性の安全確保、全て及第点だぞ!」
「ありがとうございます、師匠!フフフ、嬉しいな!」
女性達にしてみれば突然現れた男だが、明らかに自分を助けてくれた人物が師匠と呼んで慕っている雰囲気なので、怯える事は無かった。
その後に少しこの場で事情を聞いたクロイツとリサだが、この二人はかなり前に拉致された人物であり、どこに捕らえられていたかもわからず突然馬車に積まれて移動し始めて数日経ち、偶然外が見えた時に森の中の街道にいると分かって逃げたと言う事だった。
「つまり……大元には辿れないと言う事ですかね、師匠?」
「そうだな。どうせこいつらに聞いても何も知らねーだろうからな。労働力……になってもらうしかねーだろ」
クロイツは、そう言いつつ倒れている四人の冒険者から冒険者ギルドのカードを剥ぎ取る。
「こいつは、偶然森で見つけたカード。一応ギルドに届けておいてやるか」
この四人が戻ってくる事を期待している人物がいるのかもしれないので、森の中でギルドカードを見つけたとギルドに届ける事により、死亡していると広く知らしめることができる。
当然二度と地上の日の光を浴びる事はなく騎士のミュラ達と同様に強制労働に就く事になるのだが、クロイツの知った事ではない。
「で、今後だが……リサ、頼む」
ある程度二人から事情を聞いたのだが想像通り帰る場所はないとの事で、既にフードを外してその素顔を曝け出している同性のリサに説明を丸投げする事にしたクロイツ。
「……と言う訳で、皆さんと同じ環境にいた方が安全に楽しく生活されている場所があります。そちらに移住されては如何でしょうか?」
赤い奴隷紋を持つ人物は主の有無にかかわらず自由は無くなったと理解しており、そこに自由に楽しく生活できると言われては、それ以上を望む事はない。




