クロイツのダンジョン攻略(1)
当然誰一人としてダンジョン制覇を成し遂げた者はいないのでその後どうなるかも知らないのだが、その辺りの知識は何故か前世の朧げな知識で持っているクロイツ。
最下層迄辿り着ければ、そのダンジョンは思いのままに制御できると知っていた。
「でも師匠、あの方達も一緒に潜るのですか?」
「それはちょっと厳しいな。俺が一日かけて全力で攻略してくるから、それまではリサがここで護衛をしてくれないか?」
クロイツの言う事は尤もで、同行できるかもしれないと喜んだリサは一瞬落胆するも、クロイツの全力には絶対について行けない事も事実である事、少なくとも護衛としての自分を信頼してくれている事から、気持ちを切り替える。
「はい。お任せください、師匠!ですが、申し訳ないですが食料だけは出しておいていただけると助かります」
リサ一人では護衛をしつつ近辺の魔獣を狩るだけの能力はまだないので、食料現地調達ができないのだ。
一日程度は食べなくとも死にはしないが、劣悪な環境にある彼女達には少しでも良い生活をしてもらいたかったのだ。
「あぁ、日持ちしそうな物……これを渡しておく」
数々の食糧を収納魔法から出し、リサの収納袋にしまう。
当然五人の女性からは見えない位置での作業を行っている。
「ここから近くて、そこそこ深そうなダンジョンは……良し、見つけたぜ。深さは分からねーが、良さそうだ。じゃ、ちょっくら行ってくるからな。恐らく明日のこの時間には戻ってこられるから、その頃には出かけられるように準備しておいてくれ」
「わかりました。大丈夫だとは分かっていますが、気を付けて下さいね、師匠!」
その言葉を聞いて笑顔になったクロイツはポンポンとリサの頭を軽く叩くと、五人の視線がこちらにない事を確認すると、転移を使ってこの場から消える。
既に昼は過ぎており、一泊とは言え夜の準備をする必要があると考えたリサは、周囲の安全を確認してくると五人に伝えたその足で各家にある布団や食器・家具等の生活用品を入るだけ収納袋にしまった。
あまり五人の視界から外れると心配されるかもしれないと思い、ある程度収納した後で急ぎ五人の元に戻り、クロイツが新しい場所、安全な場所を獲得しに行っており、明日の今頃には入手できると言い切るが、そこがダンジョンとは決して口にはしなかった。
そのクロイツは、早々にダンジョンに到着して攻略を開始する事にしている。
「ここか。ここもゼリア帝国で間違いねーのか?ま、どこでも良いな。どうせどこの国家にあろうが、関係ねーからな」
そう言いつつ、誰にも発見されていないだろう外部からの人の侵入形跡が一切ないダンジョンにズンズンと入り込む。
侵入直後の1階層は、ここがダンジョンとは分からない程に外と同じ環境であり、森があり、平野があり……の階層だった。
「こっちか……」
全力で気配察知を行っているので次階層への道は分かるが、何故か下階層への転移は出来なかったクロイツ。
「流石に甘くはねーな」
そう言いつつも、背後から飛んでくる矢を必要な分だけ躱しつつも進む。
矢を射っていた魔獣には目もくれず、ひたすら進む事に集中している。
リサに一日で戻ると言い切った手前、師匠としてその言葉を違えるわけにはいかないので、何階層有るか分からないこのダンジョンを全力で攻略しにかかる。
ほぼ全ての魔獣の攻撃や罠を避けて、一気に2階層への階段に繋がる部屋に入るクロイツ。
「ここで扉が閉まって、ボスが出て来る……と」
この辺りは、前世の知識でなくとも冒険者であれば一応誰しもが知っていて当然の知識になっている。
階層のボスとの戦闘に勝利すれば次階層に進めるのだ。
出てきたのは、とてつもなく大きなゴブリンが五体。
一般的に良く知られているゴブリンは人型で、もちろん背丈が大きくても人族の大人と大して変わらないが、戦闘力は高くなく、FランクからEランクに位置付けられている。
その常識を覆すゴブリンに似た魔獣が1階層から現れた。
攻略する側からすると悪夢のようなダンジョンだが、攻略して制御する側に回れば、中にかくまう予定の五人の女性、今後も増える予定だが、その人達を守るのにはこれ以上ない程に素晴らしいダンジョンになる。
鑑定して弱点を探してとまどろっこしい事はせず、雷魔法一発で仕留めてさっさと階段を下りるクロイツ。
魔獣の体内には貴重な素材となる魔獣の心臓とも言える魔核が含まれているし、強い魔獣であればあるほどその体が貴重な素材になり得るのだが、目もくれずに先に進む。
ここまでの所要時間は、侵入してから二十分程度。
同じCランカーがこのダンジョンに侵入した場合には1階層のボス部屋どころか、入り口付近で即死亡する程のダンジョンだが、クロイツには関係がなかった。
2階層は巨大な迷路上の通路になっているのだが、これはかなりショートカットできるとクロイツは喜ぶ。




