リサの能力(3)
魔法を諦めるような提言をしたクロイツは、心配そうにリサの表情の変化を察知しようと注意を向けている。
「わかりました。次は剣術ですね!」
対してリサの回答はあっさりとしたもので、入国時に並んでいた際に話していた魔法によるメリットについて少しだけ説明した時の不安は何だったのか……と、ホッと胸をなでおろすクロイツだ。
「じゃあ、もう少し休むか。一応、気配察知は切るなよ?」
「もちろんです。お任せください、師匠!」
こうしてリサが眠りについた事を確認すると、体力があるクロイツは今リサが仕留めたグロナスの肉を収納魔法から出して火で焙り始める。
鑑定で毒ではない事は分かっているので、どのような味がするのか試しておこうと思ったのだ。
美味ければ朝からがっつりとした食事にはなってしまうが、この肉をもう少し焼いて朝食にしようと思っている。
見た感じでは木に突き刺した肉からは肉汁がこぼれ、その肉汁を受けた炎が勢いを増しているので、雰囲気は美味そうではある。
「これで外れとか、目も当てられねーな。見た目は極上、性格最悪……か」
何故かここで彼女欲しい病がぶり返して、表現がおかしくなるクロイツ。
肉に性格も何もあった物ではないのだが、病気とはそう言う物だ。
「よし、それでお味の方は……おっ、これはいけるな!」
特段調味料を使っている訳ではないのだが、溢れる肉汁に甘みがあり、食感も相当良い。
これであればいくらでも食べられそうだし、朝から食べても問題ないだろうと判断するクロイツ。
同時に、この魔獣は見つけたら即狩って収納魔法でしまい込もうと決心した。
「ここに少々塩をかければ、どうだ?」
当然王城から持ってきた中に調味料も存在しているので、収納魔法から取り出して塩を少々ふりかけた上で改めて肉を口にする。
「うっめ~!はいっ、この見かけ厳つい魔獣は発見即狩る事に異議はありません!」
勝手に一人で完結するクロイツだが、実際に王城での食事を経験しているクロイツにとっても相当美味しかったのだ。
スキー場のカレー的な部分もあるのかもしれないが、流石にそこまでの知識は無かったクロイツは、嬉しそうにリサの分の肉を焼く準備を始めた。
朝日が昇り始めた頃……
「んっ……し…しょ~……どこですか?」
危機的状況で起きたわけではないので少々寝ぼけているリサは、何をおいても最初に師匠の姿を探し始める。
「おはようリサ。ホレ、これで顔でも拭け。さっぱりするぞ」
水で濡らしたタオルを渡すクロイツ。
リサは少々寝ぼけながらも、クロイツからタオルを受け取ると顔を拭き始める。
「ふぁ~。おはようございます。師匠と一緒の野営も良いですね」
クロイツと一緒であれば何をしても良い事になるリサは、クロイツの近くに移動して焼いている肉を見る。
「これはリサが昨日仕留めた魔獣の肉だ。一応鑑定でチェックして毒見も済ませているが、相当うめーぞ。素材のまま食べた後は、こっちは塩をふっているからな。ホラ、食ってみろ」
「ありがとうございます!頂きます!!」
木を細く加工して串にした串焼き状態で肉を渡されたリサは、言われたとおりに何も味付けされていない肉から口にする。
「!!!……美味しいです、師匠!」
碌な食事をしてこなかったところにクロイツから渡された肉が余りにも美味しかったので、クロイツと共に食事をしている補正を抜きにしても相当この肉が気に入ったリサ。
「俺も同じ感動だったぜ。そんじゃ、次はこっちだ。ホレ」
塩付きの肉を頬張るリサは、目を見開いたまま無言で肉を咀嚼して飲み込む。
「し、師匠!これ程美味しいお肉は初めて食べました。次にあの魔獣を見かけたら、問答無用で始末しましょう!」
師弟は似ると良く言われるが、すっかりクロイツと同じ結論に達したリサ。
Bランクの魔獣を発見即討伐と言う、少々一般的な冒険者からの常識とかけ離れてしまっている事には、第三者がいないので誰も指摘する事も補正する事も出来ない。
その後二人は美味しく朝食も済ませ、リサの故郷であるブサ村に向かうのだった。




