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元王子クロイツとその弟子達の軌跡-史上初のSSランクを従える男-  作者: 焼納豆


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クロイツの力

 この世界にはスキルと言われる特殊能力が存在する。


 長きにわたる厳しい(・・・)鍛錬・経験により得る物、先天的に持っている物があるのだが、様々なスキルが存在している。


 例えば同じ剣を扱うとしても、スキル<剣術>の有り無しで圧倒的な戦力差が存在する。


 一旦スキルを得れば失う事はないが、そのスキルの熟練度は本人の資質・修練度合いに依存する。


 もちろん冒険者は自らの力を開示すると言う事は弱みを見せる事にもなるのだが、信頼の証として自分の力を開示する事にしたクロイツ。


 王族として得ていた知識によれば、頭の中に浮かんでくる自分の能力の内<異能>と言う項目に記載されているスキルは一切の情報がなかった。


 つまり言葉通りこの世界には存在しないスキルなのだろうと判断しており、今迄の経験からそれは正しいと思っている。


 その情報を紙に書き写してリサに渡す。


異 能:収納魔法  転移魔法  育成  スキル倍化  魔力回復(極大)

    スキル剥奪

スキル:身体強化  攻撃魔法  支援(回復)魔法  剣術  体術  気配遮断

    気配察知  鑑定術  環境適応


 リサも村で何とか得られた知識、そしてクロイツと共に行動している中で得た知識によってこのスキルの数々が異常である事は理解できたのだが、単純に流石は師匠!と言う思いでいっぱいになっていた。


「良いか、リサには俺の異能の育成を使っているから既に身体強化のスキルが芽生えている。もう少しで体術と気配察知を得る事も出来るだろう。日々精進だ。出来るな?」


 ハッキリ言って普通の冒険者に言わせれば反則以外の何物でもないクロイツの能力。


 クロイツ自身でよく使うのは収納と転移の魔法であり、その魔法の行使を可能にしているのが魔力回復(極大)だ。


 これがなければ一度の転移や巨大物体の収納を行った時点で魔力が枯渇するのだが、スキル倍化の力で魔力回復(極大)の能力を数倍に引き上げる事により使っている傍から一気に魔力を回復させている。


 そうは言っても余りに連続して行使し過ぎると膨大な魔力を使う転移等は魔力が枯渇する可能性があるので、一応気を付けている。


 今回リサに使っている異能の育成は自分も対象に含める事が出来るが対象者を正に育成する異能であり、数日行動を共にしただけで身体強化と言うスキルを会得させてしまう程のぶっ壊れ性能だ。


「自分で今持っている能力を強く思い浮かべてみろ。身体強化がスキルに表示されているのが分かるだろ?」


「あります!ありました身体強化!あれ?気配遮断もありますね」


 思わず渋い顔をしてしまうクロイツ。


 これは自分の異能で開花させた能力ではなく、リサが長く厳しい環境で得たスキル……あの劣悪な環境下で必死に自分の存在を気取られないように気を付け続けていた結果得た物だからだ。


 思わずリサを優しく抱きよせて頭を撫でてしまうクロイツ。


「し、師匠?」


 困惑しながらも、嬉しそうに頬を緩めてオズオズとクロイツの背中に手を回すリサ。


 本当に心の底から安心しきった表情をしており少女ながらも周りの男を一瞬で虜にできる姿だったのだが、クロイツにはその表情は見えていないしこの部屋にはクロイツ以外の存在はないので騒動になる事はなく、ここでもリサに対して“彼女欲しい病”が発症する事は無かった。


 逆にリサは、一気に“師匠大好き病”が進行したとも言える。


 間もなく受付がこの部屋に戻ってくる事を察知したクロイツは、優しくリサを放してこう告げる。


「これから、俺の異能でリサの自立に必要なスキルを育成していく。自分で何が向いているか、感じた事があれば伝えてくれ」


「はい、師匠!!」


 うっすらと頬を染めて微笑むリサを見て、兄として妹が元気になってくれる姿は良いものだと感動しているクロイツだ。


「お待たせしました」


 そのタイミングで受付が入ってくるのだが、既にクロイツの能力を教えて貰っているリサは余りにも良いタイミングであった事には驚かない。


 寧ろ、いつの間にか能力を書いた紙が燃えた上に消え去った事に驚かされていた。


「クロイツ様、リサ様、ギルドマスターの許可が下りました。クロイツ様の提言通りに数人、場合によっては村長一人を捕縛して頂ければ、他の村民の生死は問いません。事前調査であの村全てが支部になっている事が確認できておりますので。ひょっとしたらリサ様は、何らかの事情で闇奴隷商人に渡す事が出来なかったのかもしれませんね」


 余計な一言ではあるが、クロイツは受付の推測は概ね正しい事を知っている。


 リサと共に行動する際に行使した鑑定では、不幸召喚と言う謎スキルを持っていた。


 既にクロイツの異能であるスキル剥奪によって消去してはいるのだが、言葉の通り不幸が起こる何の得にもならないスキルなのだろう。


 奴隷商人ともなれば鑑定を持っているのが普通で、クロイツはそのような人物を引き取る事を拒否したのが真相だろうと思っていた。


「良く分かりませんが、師匠に出会えたので結果オーライです!」


 最近はクロイツの異能の影響もあって一気に肉付きも良くなり、笑顔でいる時間が増えたリサ。


 明るい雰囲気になっているので、口数も増えてきており良い兆候だと安心しているクロイツ。


「よし、じゃあ善は急げ!だ。あのふざけた村民……に扮した連中に復讐だな!」


「えっと、復讐かどうかは良く分かりませんが頑張ります、師匠!」


 どこまで優しいのだと、思わず頭を軽くポンと叩くクロイツ。


 その様子を見て、受付はこの信頼関係とクロイツの実績から今回の依頼は間違いなく成功するだろうと思っていたが、何があるかが分からないのが冒険者稼業だ。


「では行ってらっしゃいませ。依頼書は指名依頼の上に秘匿任務の為に今回はございません。村民に扮した者達の亡骸はその場に放置して頂いて結構です。後程ギルドが責任を持って処理致します。捕縛対象者が引き渡された時点で依頼達成となります。どうぞお気をつけて」


 立ち上がり深く一礼する受付は、仲睦まじい師弟を見送った。


「言ってくる(来ます!)」


 決して気負わず、まるで普段通りの低ランクの依頼を達成しに行くかの様な態度で、二人は個室から出るとそのままギルドを後にした。


「依頼を無事に達成できると良いですね……」


 思わず漏れた受付の言葉は、二人には聞こえない。


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