シス連合国(2)
最近は、家族となっている赤の紋章以外の人々は地上にいる恐怖を緩和するべく集合して食事をする事が多くなっているようで、結構な頻度でその場所に顔を出すようにしているクロイツ一行。
今日はダンジョン内部には行ったがこの町から出ていないクロイツがポチと共に食堂に行き、好みの食事を盛り付けて席に座る。
「クロイツ様、リサ様とリージョ様、今日は出かけられたようですが、お戻りは遅いのでしょうか?」
「ん?いや、今日中には帰ってくると思うぞ?っと、リージョは戻ってきたようだ。リサは……まだ少しだけ時間が必要だが、帰路にはついているな」
何やら少し不安そうな表情をしているので、敢えて戦力となり得る自分達は間もなく揃うと気配察知とポチを通した情報から伝えるクロイツ。
「そ、そうですか。ありがとうございます」
「いや、なんて事はね~が、どうした?この中にいりゃー絶対に安全だって事はわかるだろ?狼の魔獣も複数いるし、何ならダンジョンからもっと魔獣を地上に出すか?」
「いいえ、大丈夫ですが……その、シス連合国とはどう言った状況なのでしょうか?」
自分が漏らしていない情報を知っている事に少々驚いたのだが、よく考えればこの町には厳しいチェックを通過した行商人を少し前から受け入れているので、そこから情報を掴んだのだろうと理解したクロイツ。
商人としては町の中に入れば見た事も無い魔獣を見つけて驚愕したのだが、その部分は秘匿する事も交易の条件に入っていたので、非常に高価な素材を降ろしてくれるこの町との交流が途絶える事を恐れて誰にも伝えるような事はしなかった。
その商人であれば、先日建国宣言した事程度は情報として仕入れているだろうなと思いつつも、変に隠す必要はないと思い正直に話す。
中途半端に秘匿すると、余計に不安を煽る事になりかねない事を知っていたからだ。
「小国の集まりで、昨日建国の宣言をしたらしいな。こっちも情報が不足しているから、実は今リージョに情報を集めてもらいに行っていたんだ。だから、何も心配する事はねーぞ。安心して生活してくれ」
「あ、ありがとうございます!」
不安そうだった女性が離れると、気配察知で把握していた通りにリージョが戻ってくる。
「戻りました、師匠!」
「お疲れ。その表情から察するに、こっちには今の所害はなさそうだな。まっ、飯でも食って後で話そう。リサは今ナスカ王国に向かって戻ってきている最中だ。あと数分ほどで着くだろうから、待つか?」
「私は待っても良いのですが、師匠は目の前にてんこ盛りの食事があるじゃないですか。冷める前に食べたほうが良いと思いますよ?その方がリサも喜びます」
「そうだな。じゃあ悪りーが、先に頂くぜ」
リサと少しでも共に食事をするために少し遅く食べているクロイツは、今日の事をリージョに話す。
「……そう言えばよ、今日久しぶりにあの階層に行ったわけよ。そしたら全員が只管作業に没頭していてな。ここも自治権を持つ町として正式に動く事になった祝として、食事の量を少しだけ増やすように指示をしたところだ」
「寛大ですね。まぁ、この食材も彼等が仕事をしているおかげで入手できると言えなくもないですから、許容範囲でしょうか。ミューテルはどうでしたか?」
実際にはポチの力を使えば、ミーシャやミュラ達の代わりとなる魔獣が比較にならない程効率的に作業する事ができるのだが……リージョとしては自分の仇であるミューテルの状況の方がよほど気になっていた。
「あぁ、あいつは体力がね~のか、フラフラしながら作業していたぜ?あの様子なら、何度かノルマ未達成で罰を受けているだろうな」
「そうですか。っと、リサも戻って来たようですね。私も食事をとってきます」
「戻りました!師匠、ちょっと待っていてくださいね。私も食事をとってきますから!」
リージョの言葉位は聞き取れているリサは、瞬時に状況を把握して自分も食事を取り、三人……時折町人が話しかけてきながらも楽しく夕食を食べる事が出来た。
「じゃあ、早速教えてくれ、リージョ」
その後自宅に戻り、リージョの報告を受ける。
「はい。あの国家は建国を宣言したのは良いですが、一枚岩ではありません。特に現時点で国家元首となっているラトル王国と、武闘派が多いベナマス王国との確執がありますね。特にベナマス王国の国王は自らが連合国の国主に相応しいと未だに訴えているようで、その根拠が……あの国がAランカーであるミーシャの出身国だったからです」
「おいおい、今はダンジョンの深層で日の光を浴びる事の出来ない行方知れずを担いでいるのかよ。碌なモンじゃねーな。そいつ等、ベナマス王国か?ちょっと注意しておいた方が良さそうだ」
「私も師匠の指摘の通りだと思いました。対してラトル王国の国王、シス連合国の国家元首は比較的大局を見通す力が有りそうで、配下に他国との火種を起こさないようにベナマス国王の動向を注視するように指示していましたね」
あっさりと伝えている内容だが、普通は国家中枢……国家元首の命令がなされる場所に第三者が侵入できる事など有り得ないが、そこはSSランカーであるリージョの力のなせる業だ。
「ある意味内戦になりかねない状況って事か。良くそんな状態で建国を宣言したもんだな」
「それも、ベナマス王国の暴挙を抑える事が最大の目的であったようです」
リージョの説明を聞いて、頭痛がし始めるクロイツだ。




