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3-12.「フルマルンの総評」

 ガーベラ王女達の元に戻ったがフルマルンの顔は暗い。

 だが彼女は一国の王女に仕える者だ。彼女体裁を取り繕ろい、彼女が俺に完敗した事を知らない者なら気分が落ちこんでいると分からない程に。


 結局手合わせは俺の圧勝。

 後半に『零前階』というカッコいい名前の魔法を使って来たけど、今まで積み上げてきた俺の剣の前に完敗した。



 まあ彼女をフォローするなら、俺と同年代でありながら並みの騎士以上の強さを持っていて、咄嗟の自衛に優れていて、切り札らしき魔法がある。


 筋肉量が少ない腕は慣れでカバーしているみたいだし、守りながらの先頭が不得意そうな事以外欠点らしい欠点が無い。

 メルティと同じく、筋肉量の少ない腕は女騎士としての見栄えの問題があるだろうが、 

 俺からすれば低スペックだが纏まった性能。



「お前、本気で戦っていたのか?」


「はい。ですが申し訳ございません、私の実力では遠く及びませんでした」


「その通り。お前はこの程度の実力で有事の際は、どのようにしてガーベラ様を守るつもりだった?」


「それは……」



 結界を解除している間に、俺が最も重要視していることを聞いてみた。


 彼女の謝罪の理由は分からないが、具体的な対策は出てこない。

あもしかしたらイルシックスの王城は我が国の王城よりもセキュリティ対策が万全で、ジークハイル王国に来るまで危険はなかったのかもしれない。

 というか俺は、王子なのに命の危険多くない?


 そう考えながら俺は結界を解除し、この観覧席で勝負を見ていたガーベラ王女達と合流した。

 ちなみに音を遮断する結界は張っていないので、この会話は筒抜けである。



「ジークエンス様。フルマルンへの御指導ありがとうございます」


「私が言い出した事ですから構いませんよ。ですが、彼女に関して一つお願いしたい事があります」


「なんでしょう」



 感謝は本人から聞いているのでそれで十分。

 だが、俺がフルマルンの事で彼女に許可して欲しい事は彼女を強くすること。


 具体的には俺やメルティ、信用できる騎士達がフルマルンの相手をする実践方式の訓練。

 もし実力が然程変わらなくても、パターン毎に分ける実戦訓練で敵との差を埋めて欲しい。


 この前、フルマルンにはここに来て剣を振るってもいいと伝えていたが彼女はガーベラ王女の護衛。

 勿論ここに来る時間はない。その事に気付かなかったよ。



「彼女にガーベラ様を守れる強さを付けさせる為に、私とメルティ。及び私の信用する騎士でフルマルンの相手をさせて頂きたいのです」


「ジークエンス様が直々に、ですか? よろしいのでしたら勿論、私の騎士を強くしていただきたいです。お願いします」


「分かりました。彼女を強くしましょう」



 婚約者の騎士に完勝し、その騎士を強くすると伝えるとガーベラ王女からは了承を貰えた。


 具体的な強さの目標は、今の彼女十人と対峙して、背後にいるガーベラ王女を守りながら勝てるくらいが理想だ。

 護衛なら多対一で勝てないと。


 だが俺が出来ることは、たまに成長を確認しつつ実践練習のパターンを考えるくらい。

 何故なら俺は結婚を控えた身。婚約者のガーベラ王女と一緒に居るべきだし、そうでなくとも女騎士より婚約者と一緒に居たいからね。



「ありがとうございます、ガーベラ様。ジークエンス殿下!」



 目が少し潤ませながら、俺に感謝の気持ちを告げるフルマルン。



「早速ですがガーベラ様とフルマルンには、私と私の騎士となるメルティの試合を見て貰いたい」


「分かりました。またこの場所で見守っております」



 今思いついた、俺の騎士候補メルティとの試合。

 メルティは俺の騎士として防御寄りの剣技も扱えるし、自分よりも強い者同士の戦いは参考になるだろう。

 ガーベラ王女にはレベルの高い戦いで俺の力を見せつける事で、俺の強さを信用してくれるようになるだろう。


 見送るガーベラ王女の頬には汗が垂れている。今の勝負でドキドキしてくれたのだろう。


 さっきまで密かに、ガーベラ王女が暇そうにしていないか心配だったが杞憂だったようだ。

 まあ自分の騎士と婚約者が剣を使ってバトルをしたんだ。気にならない訳ないよね。





 時間もあるしガーベラ王女とフルマルンに、俺とメルティの戦いを見せようって事になった。


 見送られた俺ことジークエンスと、一緒に戻ってきていたメルティ。

 メルティは初耳のはずだけど、勿論不服や反論は言わず、結界を閉じて再び演習場に向かう俺に付いてくる。


 メルティは、現在では老騎士レイス・ブランドーに代わり俺の剣の相手をしている俺唯一の騎士候補だ。

 彼女は守護する為の『守護剣法』と、先天性の魔法『上弦の月』の使用者。

 3年前はよく剣の相手をしていて、お互いの手の内や癖、攻め方や攻略法を知っている同士の対決だ。



 フルマルンは黒いスーツで俺も上着を脱がずに戦っていたが、次は運動量的に暑くなりそうだったので先にローザに上着を預る。

 黒いズボンに白いシャツのスタイルの俺。普段使いの革鎧のメルティ。


 使用する剣は、さっきと同じ聖銀性の片手長剣だ。

 さっき使った剣はかなり乱暴に扱ったけど変形なし。だが新品の剣を二本用意させ、先と同じ魔術をかけ、互いに5メートルずつ距離をとった。



「メルティ! フルマルンにはまず防御を覚えて貰う。まずは私の攻撃を全て止めろ、その後は自由だ」


「了解致しました!」



 いつもの戦闘開始の合図。

 水魔術で生成した少量の水を空中に浮かべ、互いに柄に手をかけ準備完了したところでその水滴を離した。

 落ちる水滴は、正面を見据える俺たちの目線の先を通り地面に落ちた。


 その瞬間互いに地面を蹴り、鞘に収まっている剣を抜きながら一瞬で距離を詰め、剣を打ち合わせた。

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