2-24.「再戦のダエーワ(2)」
なんだ、アレは。
体が巻き戻された様に再生して、あの悪魔は無傷のままだ。
前に倒した時は、四肢の関節部分を斬って心臓部を突いて追い詰めた。
その時はそのまま動かなくなっていたけど、あの悪魔を倒すには動けなくする方法を取らないといけないのか?
「必要とする血液量は、人間の致死量。勝利の後回収する」
そう言った悪魔は体から、何かの容器を出した。
話の流れ的に、俺の血をあの中に入れて持って帰る気だろう。
良い気はしない。
「挑発してるのか?」
「だが、思ったよりも強かった。取引きも考えねばならん」
「……何だ?」
話しながら、足音を立てずに向かって来る。
俺としては、間合いに入られたら嫌なので隙を見て斬れる様に悪魔を見据える。
悪魔もそれに命の危険があると分かっている様で、刀を正面に構えている。
そして互いに一定の距離を保つが、俺は後ろに妹を置いていないといけないので、グルグル周ったりはしない。
「私は1人ではない。今は見張りを排除しているが終わる。1対1ではなくなる」
「そうか」
「血を献上する契約を結ぶのだ。そして再戦だ、互いに強くなれる余地がある」
この悪魔、もっと強くなりたいから互いに高め合おうぜ! てな事を言っている。
個人的には御免なのだが、命の危険なく帰ってくれるとらしい。
前に狙われたアシュレイ姉にも有効ならば、俺が断ったら悪魔はまたアシュレイ姉を襲撃してくるかもしれない。
「その前に質問がある。貴様らは、アシュレイ姉様を再度襲撃する予定はあるのか?」
「ーーない。アシュレイ・リートの血は回収済みだ。よって『神通力の他心通』は不要、襲う理由が存在しない」
「よかった。ならば……」
王城に住むアシュレイ姉が襲われる理由が無いならば
「今ここで貴様を斬り、お前の仲間と契約を結ぼう。これ以降私に命の危機は必要ない」
俺は王位継承第三位の王子だ。俺に命をかけて戦う理由は無い。
いや、いつか戦う時は来るかも知れないが、俺は好き好んで戦う程、戦闘狂じゃないんだよ。
5メートル程の間合いを一つの踏み込みで詰める。
悪魔もそれに対応して斬りかかるが、それと俺の抜いた刀が重なり合う。
繊細な金属音が鳴る。
悪魔は左手の刀で俺の右腕を狙ってくるが、俺は鍔迫り合っている刀に加える力を緩めて、体勢を崩させ、迫る右手の刀を避け左の攻撃を受け止める。
「来い、白羽の剣!」
チェリンの前に挿した白羽の剣を呼ぶ。
それと同時に、攻撃が地面に向かっていた右手の刀を蹴り飛ばす。
左手で手にした、飛来した白羽の剣。
体重を左に乗せ、崩れた体勢でも俺と拮抗する悪魔。
その左手の刀を白羽の剣で飛ばし、悪魔は、腕を伸ばして胴体を無防備な体勢となった。
白羽の剣で右、左の順番で突く。
右手の刀で右、左の足の付け根を斬る。
やはりここは弱点の様で、吹き飛ばされながら斬られた悪魔は、人形の様に手足がダラりとなっている。
最後に心臓を一突き。
だがそれが来るのはわかっている様で、胸部に力が集まっているのを感じる。
右肩から剣を抜き、踏み込み、また突くまでに1秒もかからないが、それだと待ち合わない。
「俺のーー」
だが、この剣は白羽の剣。
俺は白羽の剣から手を離し、手を後ろに引く。
悪魔は刀を生成して反撃を狙うようだ。
何かを呟きながら黒色の体が蠢き、左手に持つ刀が生えてくる。
「ーー来い」
白羽の剣は即座に俺の手に収まり、一瞬速く心臓を突いた。
◇
「俺の勝ちだ」
四肢の関節を斬られ、心臓を突かれた悪魔ダエーワはぐったりとしている。
俺は心臓部から剣を引き抜き、悪魔は地面に倒れた。死んだのか、体を支えられずに倒れただけなのかは分からない。
最後は俺の突きに合わせて心臓を守ろうとしていたのだろうが、この一瞬の攻防に間に合わなかったのか。
そして距離をとった場所で2つの剣を確認する。
体を斬ったはずなのに黒色赤色の血はついておらず、血払いをしてみるが結局血はついてはいなかった。
残ったのは、あの悪魔の死体と血を入れる容器だけ。
俺は水魔術+氷結魔法で作り出した氷の腕で容器を持ち、チェリンの元に戻る。
わざわざ歩いて向かわなかったのは、悪魔がもし死んでなかった場合、チェリンとの距離を俺が離されるから。
「確か、これに入れれば良いんだよなあ」
氷の腕で容器を抱えて観察していた。
そこに前方後方から攻撃が襲い、俺の氷の腕が落とされた。




