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最終話 アリッサ王女


「なるほどねー。リッカルはイベントを発生させている私よりもアリッサ様の方がまだ好きかぁ。」


「ね?なんだか変でしょ?それにアルベルト様の事も。ガーネット様はちゃんと出会いのイベントをしたのに再会イベントは起こらなかった。それどころか私の事をずっと思っていたというのは、これでは私がヒロインとしてアルベルト様に出会ってしまったみたいではない?」


しばらく難しい顔をしていたガーネットはこそこそ話でもするように私の顔に近寄ってこう言った。


「ねえ。このゲームの外伝小説があるの知ってる?」


「え!?知らない!!聞いたこともない!!」


「私も発売前に死んでしまったから内容までは知らないんどけど、事前情報ではあるモブキャラのサイドストーリー的な物らしいのよね。」


「え……それって……」


「アリッサが主人公のお話じゃないかしら?」


「な、なんて事!?そんな事がありえるの!?」


「外伝だから、どこまで本編とリンクされているのか分からないけど、もしかしたら、ここは本編ではなく外伝の方の世界かも知れないわ。」


「まさか……。」

外伝本についての情報が一切なかった私は新たな可能性に不安が募る。


「それから、正式に私達の結婚の日取りが決まったわ。3ヶ月後の今日よ。ねえ、アリッサ様。ゲームでは結婚式でエンディングだけれど、もし外伝ならそのあともなにかしらの困難があるのかもしれないわよ?しかも主役はあなた!!」


えー……。ガーネットみたいに身体張ったイベント嫌なんですけどー……。





そして、ユハルテットお兄様とガーネットは着々と結婚の準備を整えていく。


私とアルベルト様も今度は誰に遠慮することもなく二人の仲を深めていった。

しかし、私の心配をよそに順調すぎるアルベルト様との仲……。


先日、挨拶の為に、シュトラスト国へも行ってきたが、皆様すごく歓迎ムード。


あっれー?ゲームだともっと継母であるモベリアからの攻撃とか口撃とかあったよね?

もっとギスギスした兄弟関係だったよね?

めっちゃお兄様!お兄様!って慕われてたじゃん!


それになによりアルベルト様、スッゴイ穏やかじゃない?


もっとこうもがき苦しむ感じじゃなかったか?ガーネットと別れて次期王になるべきかそれとも王になるのは諦めガーネットを取るべきかとか苦悩してたよね?

というか再会時点で既に心に闇を抱えてたアルベルト様はガーネットに心を許すに連れてその闇も出てくるんじゃなかったか?

そんなアルベルト様を気遣ってガーネットがいつも優しい笑顔と心遣いで癒してアルベルトはさらにガーネットを盲目に愛していくというハズでは……?


そう、アルベルトを癒してあげられるのも支えてあげられるのも私だけなのよ!!という思いでヒロイン、ガーネットとして前世の私も含め乙女達がアルベルトに嵌まっていったんじゃないのか!?


てか元々、再会した時からあんまり病んでる感じないのよねー。


もしこの世界が外伝だとして、外伝ではそういう設定がないのかしら?でも、モブキャラのサイドストーリーなら本編に沿ってこっそり見守る感じの話しじゃないのか?


そんな感じで私は本編なのか?外伝なのか?今後の展開はどうなるんだー!!と先行きの分からぬままお兄様とガーネットの結婚式の日が近付いてくる。



お兄様達の結婚式が1週間後に迫ったある日、アルベルト様は今日も私との仲を深めにやってくる。


「アリッサ姫!遠乗りに行きませんか?」


「アルベルト様。ご一緒致します。」


馬で駆けるとかまず、前世ではやったことないけど、これがけっこう楽しいのよねー。運動神経も良いアリッサは幼い頃から馬乗りも得意で、前世の記憶を取り戻した今、さらに楽しんでいる。


「アリッサ姫は本当に乗馬がお上手ですね。」


「お褒め頂きありがとうございます。身体を動かすのが好きですから。ほら、基本的にお姫様っておしとやかにしていないといけないでしょ?けっこう窮屈なので、こうやって自由に駆けるのはとっても楽しいわ!!」


私達は馬を降りると森の近くの川沿いでいつも休憩をしながら語らうというのが最近の流れだった。


私は意を決して気になっている事を聞いてみることにした。


「あの、シュトラスト王国の皆様、特にモベリア様は私の事を何か言っていたりしませんか?」


本当はこんな事を私から聞くのは失礼だろうけど、私の今後の展開にかかってくるのよー!!


「ん?何か気になる所がありましたか?」


「い、いえ。皆様とても歓迎して下さってすごく嬉しかったのだけれど、あ、あのでも……その、モベリア様は第二、第三王子に後を継がせたいとかそんなことはないのかなーって?前に侍女達が話していたのを聞いたことが……」


そんな話は今世では聞いたことがないけどね!


するとアルベルト様は物凄く驚いた顔をした後、アハハハハと笑い始めた。


あなたもゲームの中じゃこんなにすぐ笑う人じゃなかったはずよね。


「確かに弟達が産まれた頃は継母に冷たく当たられるようになり、王宮でもそんな噂は立ちましたね。ですが、私の結婚相手は他でもないミシューラット国のアリッサ王女ですよ。あなたを妃に迎えられるなら私が次期王になることに誰も反対などしません。」


「え?どういうことですか?」


「資源豊かで経済も安定しており治安も良いミシューラット国とはたくさんの国が友好関係を結びたいと思っております。なによりアリッサ王女はその可憐で美しい容姿と淑女としての素晴らしい立ち居振る舞い、男性顔負けの豊富な知識を持つ完璧な女性です。そんな貴方を妃として迎えたい国はごまんとあります。アリッサ姫も身に覚えがありますでしょ?そんなあなたを射止める事ができたのですから私が王になることに異を唱えるものなどおりません。ですから、私が王になれるのは全てあなたのお陰なのです。」

そう言って笑った優しい笑顔にとてもゲームの時のように闇を抱えているようには見えなかった。そして、アルベルト様にとってはもしかしたら、ガーネットよりも最適な相手はアリッサだったのではないかという気がしてきた。

私の存在自体がアルベルト様を救ったということ……?それはこれ以上ない喜びだった。

私がアリッサに転生したのはきっと必然だったんだわ!!






そして、1週間後――


ユハルテット王子とガーネット様の結婚式が行われました。


ガーネット様が過ごされた下町をお兄様とガーネット様を乗せた馬車が走りその後ろを私達王族が馬車で走るという前世でいうパレードが行われました。


ガーネットの自宅前では馬車が止まり下町の方々に笑顔で手を振る私達。


もちろん私の隣にはアリッサの婚約者シュトラスト王国のアルベルト王子が笑顔で手を振っております。



ん?

誰だ!?あの赤髪のちょいワルイケメンは!?

そのイケメンがこちらを見て手を振ってきた。

クッッッソカッコいい!!


知り合いか!?イヤイヤ!そんなわけない!!


私が赤髪のイケメンに心奪われていると私の腰を抱く力強い腕。サラサラの黒髪を今日はオールバックにしていつもより大人っぽい彼は黒い瞳で私を甘く見つめる。そして、耳元で囁くイケメンボイス!!

「私が隣にいるのに、他の男に気を取られるなんて許さないよ。」


「はいぃぃぃ!」


「ほら、笑顔で手を振ってね。」


やっぱりアルベルト様だよ!私のストライクど真ん中!!






鈴木 綾――彼女が亡くなって数年後……


某ショップのゲーム売り場にて2人の女の子が新たなゲームを求めてやって来た。


「なんか新しい乙女ゲームやりたいなぁ!!」


「あ!これは?今日発売だよ。」


「なにこれー?夢のイケメン再び集結!?あ!この後ろにいる赤い髪の男の子メッチャ好みかも!!」


「あー。そのキャラ今回なんでか凄いイケメンになってるんだよねー。これ、10年くらい前に発売されたゲームの新装版なんだよ。なんか新装版は従来のヒロインと外伝の小説で主人公だった王子の妹のWヒロインなんだってー。外伝の小説はモブの妹がヒロインと攻略対象の恋を見守るだけだからあんまり面白くなかったなあ……。」


「へー。こういうのって改悪されてて面白くなくなったりするよねー。つかタイトルダサくない?買う人、いるのかなー。」



彼女達はまだ知らない。

このゲームの面白さを――――。




~夢のイケメン再び集結!!~


『乙女はイケメンと結婚する為に身体を張る!!』


NOW ON SALE!!


ブックマークや評価、感想を下さった読者の皆様、そして、この作品を読んで下さった全ての読者の皆様に感謝致します。

最後まで、読んで下さりありがとうございました。

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