第壱話:日常1
食事前にいただいきますを言いますか?それとも何も言わずに食べますか?
ゴーン、ゴーン、ゴーン。
(いつものようにきこえるかな。まだおひさまがでてきっていない、さむいひのあさ。わたしはなにもしないで「れーはいどー」っていうところにいかないとダメみたい。なんでかはわからない。
でもとりあえず、せんせーがまいにちあさにおいのり……っていう、おててをあわせてかみさまににおねがいごとをすることをやるの。けど、そんなことしていみあるのかな?)
タッタッタッ、ドーン!
「るーぜ!」
「きゃっ! もー、とめちゃん。やめてよー」
「えへへ、ごめーん」
「ほーんと、つぎはやめてよ?」
「んー、るぜがげんきなかったらどーしよーかなー」
「もー」
「ふふふ」
困り顔な縷是に対し、とても楽しそうな留女。
「おーい、君たち! 急がないと間に合わないですよー」
他愛もない話をしている縷是と留女に、少し離れたところから男が声をかける。
「あ、はーい」
「わかりました、いんちょー!」
そう言って走り出す2人。
2人が中へ入り、少しの間ののち礼拝が始まった。
礼拝堂の中では私語をしてはならず、もし喋ったら院長によるお説教(本人曰く貴重なお話)が行われる。ちなみに縷是と留女はほぼ毎日怒られていた。
礼拝堂は東から光が入る構造になっており、その窓に向かって顔を両手で覆い、見た夢や今日やることを神に報告して安全を願う。それがこの礼拝堂での礼拝の仕方である。
縷是は両手で顔を覆いながら思った。
(きょうは、いつもみたいにとめにはなしかけられてもむししよ)
すると、隣から小声が聞こえてくる。
「ねーね、るーぜ。はーなそー」
(……)
「ねーえー、るーぜー」
(うるさいなー。けどがまん、がまん。きょうこそはおこられないぞ。ん? まぶし……)
パンッ!
「はい、みんなおしまい。体を清めたらすぐ食堂に来るように。あと、留女は残りなさい」
ちょうど窓から光が差し込んだ瞬間、院長は手を叩いて解散の合図をした。
「えー! いんちょー、なんでー?」
「何度言えばわかるんですか? 礼拝中の私語はいけません」
「なんでー、ぶーぶー」
「文句を言わないの」
「えー、るーぜー。たすけてー」
「ふふ、がんばれー」
「えーっ」
不服そうな留女と、楽しそうな縷是。
そして少し困り顔の院長を礼拝堂に残し、子どもたちは喋りながら清め場へと向かった。縷是も遅れてそのあとに続いた。
* * *
体を清めた子どもたちは、全員食堂に集まった。
食事は子どもたちが協力し合い、不平等がないよう1人ずつ分配される。
「みんな、手をあわせて」
「「「「いただきます!」」」」
食べきれない場合は食べられる子が食べても良く、双方の同意があれば自由にして良いルールになっている。子どもたちはなぜこんな規則なのかよく分かっていない。
ちなみに縷是はいつも半分くらいしか食べられず、逆にたくさん食べる留女にいつも分けていた。
「わー、るぜ、いつもありがとー!」
「ぜんぜんいいよ。ごめんね、わたしのぶんまでたべてもらって」
「るぜがあやまることじゃないよー! たべきれないのはしかたないことって、いんちょーもいつもいってるじゃん」
「んー、そう? でもいつもありがとう」
「んはは!」
そんな会話をしているうちに、子どもたちは食事を終えていく。
「みんな、手をあわせて」
「「「「ごちそうさまでした!」」」」
「みなさーん、片付けたら講堂に集まってくださいねー」
「「「「はーい!」」」」
食堂全体に響き渡る声で連絡する院長と、食器を下げながら元気よく返事をする子どもたち。
……そして、食堂の中央でひとりうずくまる留女であった。
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