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拝啓 地獄でお待ちしております!!  作者: 刀伊槌 蓉真


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悪党 一人目 

 今回の調査は、社員12人の会社のため、人間になってもぐりこむことがむずかしい。大きな会社であれば1人、2人、増えても少々、バレない。

 姿がみえないのでそのまま会社の中で調査を始めることにした。このほうが気楽だ。

 一人の人間になり調査をするとストレスなどの嫌な思いを実体験するようになるため精神的にも体力的にもつらい。


 1日目。

『いつも勤務表は当日の17時30分までに提出しろっ!!』

「・・・」


 60代で腹が出てイガグリ頭の色黒の男が30代で気が弱そうな男に高圧的に罵声を上げていた。30代の男は慌てて書類を書いていた。


 対象者はこの60代の男だ。いわゆるパワハラ男だ。


 地獄では人間の時の名前は使用不可能だ。すでにこの男は別の部署からイガグリと呼び名がついていた。

 普通、呼び名は変わらない。地獄にくるまでに悪事が増えすぎていれば別である。

 そういう時は地獄で本人が絶対に嫌がる呼び名に変更してやる。


 初日から現場に居合わせたので今回の調査は早く終わるだろうなと思っていた。


 皆、黙々と静かに仕事をしている。時折、電話や接客で会話する声が聞こえる程度である。

 静かすぎてあまり働きやすい環境ではない。

 もう少し活気がある方がいい。はっきりいって陰気臭く息がつまりそうな雰囲気だ。


 2日目。

「すみません、お茶とごみ袋の買い出しに行くのでお金をください」

『・・・』

「すみません、お願いします」

 30代の優しそうな女がイガグリに話しかけていた。

『今、忙しいから後でっ!!』

 イガグリは高圧的にきつい口調で返事した。女は困った顔をして席につき机上で伝票整理をはじめた。

 3時間後にお金を手渡しているところを確認した。


 4日目。

『総務部長の私に先ず言ってくれっ!!その後に私から指示を出すからっ!!』

「でも最近まで私がしていたことですよ。突然、今、違うと言われても・・・」

『そんなことも分からないのか!! 常識だろっ!!』

 罵声が飛ぶ。イガグリと40代ぐらいのきりっとした女が口論していた。

 周りの人は委縮してなにもできないようだ。

 しばらくの間、高圧的に言われ続けた40代のきりっとした女は体調が悪くなり早退した。


 イガグリは何もかも全て自分が把握して管理しないと気がすまない。上から目線で恩着せがましく見下してものを言う。自分は情報通だからと威張って誰もが知っている常識的なことも自慢げに話す。高圧的で威張っている、とくに女性が質問することに対して無視をするなど陰湿なところがある。


 悩みを抱えた人間はどのような方法で地獄に助けを求めるかというと電話やメールではない。

 人間は悩み苦しんだときに

(神様助けてください)と心の中でお願いするとき、あるいは

(地獄に落ちろ、絶対に地獄に落としてやる、天罰がくだってバチがあたればいい)と心の中で念じるときがあるだろう。

 後者の場合である。


 地獄の心療(しんりょう)(ねん)じ課が即座に察知して閻魔大王に報告した後、人事調査課に命令がくだされる。


 人間は死後、天国か地獄に行くと言うがそうそう天国に行けるわけがない。

 誰もが何かしら悪いことをしているからだ。些細なことであれ悪いことをすれば地獄行きだ。

 仏様のような人間はこのご時世、全く存在しなくなった。

 天国は開店休業中だ。

 地獄は人数が増え、どんどん拡大している。


 7日目。

『在庫数の報告書はまだ提出できないのかっ!!』

「忙しくてまだ作成できていないです」

『いますぐ作って出せっ!!』

「わざと提出してないわけではないです。・・・あーもう、うんざり。会社を辞めます」

 50代の気の優しそうな男が爆発した。

 机上の書類、カタログをすべて、両手でイッキにドサッと雪崩のように床に落として早退した。

 事務所内にいた全員が驚いたようだ。いままでにこんなことが無かった温厚な男のようだ。


 もう二度と会社に出社することは無かった。


 10日目。

『先月の伝票はどこにある?』

「まだ処理が終わっていないので林さんが保管しています。今日はお休みなので明日にしてください」

『・・・今すぐに確認したいんだ!!』

「そんなことを言われても私もどこにあるかわかりません」

 イガグリと50代のショートヘアの女が口論していた。


 いったいこの会社の社長やほかの役職者は何をしているのだ。


 14日目。

『このままでは不幸なことになるぞっ!!』

「私は何もしていないわけではありません。どこに移動させたか教えてもらえないのでどうすることもできない状態です」

『教えたらやるのか?』

「それは当然のことです。仕事ですから」

『本当か?やらなければ不幸なことになるぞっ!!』

「当たり前です」

 イガグリと50代のはっきりとした口調で答えている女が口論をしていた。

 イガグリはわざと50代の女に移動させたことを教えていなかった。

 またパワハラ陰湿いじめをしていた。


 誰となら仲がよいのか?

 全員と口論しているのではないだろうか?

 どうやらイガグリは入社して2~3年のようだ。中途採用での入社らしい。


 憑依した。


 以前の勤務先でも同じように高圧的、陰湿にいじめをしていたから幾度も口論になっている。


 ドライブレコーダーで社用車の管理をしていたらしく現在地を確認し誰がサボっているかチェックをしていた。サボっていた人に注意し喧嘩になっていた。

 陰湿にドライブレコーダーで調べている行為事態が暇つぶしをして遊んでいるのではないかと思った。


  『間に他人がはいると伝言ゲームになって良い結果にならないから部長の私に直接言ってくれっ、意味がないので鈴木君に話さないことっ!』脅迫するように部下に罵声を浴びせていた。


 これだからリストラになって転職してきたようだ。リストラになって当然だ。

 家庭では婿養子、息子は引きこもりで無職。相当、舅にいびられている。家庭でのストレスを職場で晴らしている。


 こいつは6年後に引きこもり息子に刺されて地獄に来る予定だ。

 それでは遅すぎる。これ以上、被害者を増やしてはいけない。

 早く地獄に帰って寿命短縮申請書を提出しよう。

 許可が取れ次第チケットを貼りつけようと支度をした。


 早くて明後日に戻れるだろう。



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