第八話 エピローグ
忙しい日々が終わり、時は学校の昼休み、薫は窓際の席で青空を見上げていた。
女子グループの一人が近づいてくる。
薫は身構えた。だが、やけにフレンドリーな挨拶をしてきた後、地下都市の話題をふってきた。
「ねえねえ。最近、竜の背中に乗る地下都市観光とか流行ってるじゃん。詳しく知らない?」
「うーん、どうだろう? 私そういうの疎くて」
「そっかぁ。うん、ありがとう。またなんか地下都市で聞きたいことあったら聞いてもいい?
「いいよ」
何だか今のでどっと疲れた。これも仲良くってことなんだろうか。私にはよくわからない。ちょっと前まで陰口を叩いていた連中が、ちょっと地下都市の印象が変わったくらいでこんなにフレンドリーにしてくるのもなんだか違和感を覚えた。というよりむかつく。まあ、地下都市の印象が良くなったのは良いことだと思うけれど。
さっきの会話の疲れから、机に突っ伏していると、
「薫ちゃん! 一緒にお昼ご飯食べない?」
吉田さんだ。それに悠ちゃんも一緒にいる。
この二人との関係は変わらない。今も昔も。この二人とはこんな関係がずっと続けばいいなと薫は思った。
私は罪を犯そうとした人間であり、心も相当に歪んでいた。でも真由美さん、いやお母さんのおかげで、吉田さんや悠ちゃんと今も仲良くできている。竜が最期に言った、これでいい、という言葉、思い出す度に悲しくなるけれど、でも、私を思ってくれた竜の気持ちが私をこの平和で優しい世界に連れてってくれたのだ。私はこれからも竜と人間が友好な関係を築き続けられるよう努力するだろう。
みんなでお弁当を開けて、おかずの交換をしたりする。平和だ。
青空には雲がところどころにあって、太陽の光を浴びて気持ちよさそうに泳いでいる。あの茶色い竜にもこの青空を見せてあげたいな。そして名もなき私の愛した竜にも見せてあげたかった。