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ハロルドの場合(後編)

(2/2)本日2つ目

 六歳になられた主は王都の孤児院の改革に乗り出しました。陛下に計画書を出し、それを受理されるという形で。


 少しずつ王都にあるスラム街の治安が良くなるにつれ、周りの、今まで主を見ていなかった者達からも注目されるようになって来ました。

 それに伴い王太子妃殿下に連れられ、王室の御茶会に出席するようになられました。

 一回一回ドレスが変わる事に嫌気がさしたのか、ある日お針子を呼びつけると、ドレスから鞄とコサージュを作る様に命じました。


 主が格安で売る鞄とコサージュは下級貴族の間で流行り出し、大貴族の令嬢の中にも真似する者が現れました。

 主は利益の半分を孤児院に当て、お針子達の給金も弾ませました。


 主が八歳なった年、孤児院に慰問すると、孤児院に見なれない者と良く見知った者がいました。

 見なれぬ者は銀髪金眼の美少年でした。歳の頃は主の一つ二つ上、見知った者は私の兄でした。

 少年が主に見惚れていると、主が心の中で盛大に文句を言っていた。

 主の言葉で隣国シュッティルトの皇太子だと知る事ができました。

 主より見張る様に言われ、二人を見張ります。

 この愚兄如何してくれましょう。暗殺の危険があったとはいえ隣国に逃れて来るとは、もし此処で何かあれば主の責任問題にもなりかねないというのに。


 王城に戻り、王太子殿下の占族に王太子殿下に取り次いでもらう為、面会の申し込みをしました。


「今日は如何したんだい?」


「今日は猫を拾いましたの。銀の毛並みに黄金の瞳の、北の血を引く血統の良い猫です」


「ほう。その猫は病弱ではないのかね」


「聞いた話より健康そうですわ。そうお爺様にお伝え下さい」


「ああ、私から伝えておこう」


 王太子殿下と主の会話は楽しそうに過ぎて行きます。

 内容は黒いですが。


 ロデインとシュッティルトをユーリッヒ様が行ききする様に成り、その世話に主が翻弄されるようになりました。ユーリッヒ様が主の事を好いているのは周りから見れば丸分かりです。ですが、主の手を煩わせるのは許しませんよ。今は嫌がっていないから良いですが、主が嫌がったら制裁しに行きますよ。愚兄にはよくよく言い聞かせて置かなければなりませんね。


 主は十二歳になり、初潮を済まされました。身体の形も女性らしくなって来ました。流石に男の私が四六時中一緒に居るのはどうかと思っていると、主が話があると呼んでいます。


「ハロルド、占族の女性に心当たりはないかしら?」


「心当たりは御座いますよ。と言う事は占族を増やす御積りですか?」


「そうよ、流石にハロルドだけだとお風呂の時や着替えの時に困るもの」


「御意に。心当たりを探らせていただきます」


「そう、宜しくね」


 私はこうして占族の係りの者に渡りを着けました。

 そうしてエリアと言う女性の占族が主の前にやって来ました。


「エリアと申します。契約の為にやって来ました」


「仮契約ではなくて良いの?」


「はい。ヴェロニカ様の噂はかねがね伺っておりますから」


「そう、では宜しくね」


「はい。私の方こそ宜しくお願い致します」


 こうしてエリアも主と契約を交わしました。

 主よりリアナ・シリテ子爵令嬢を調べて来るように仰せつかりました。

 そして、私がリアナ嬢の報告をすると、主はホッとなさいました。


 主が学園に主席入学を果たすと、上位貴族の間からアルフ・シリテ子爵令息がお見えになりました。


「は、初めましてヴェロニカ殿下、僕をで、弟子にして下さい」


 最初子爵家の者が勝手に王女殿下に話しかけるとは、と眉を顰めていた令息令嬢がたも、アルフ様の弟子発言に吃驚しています。


「アルフ・シリテ様ですね。私で宜しいのですか?」


「は、はい。ぜ、是非お願いしたく」


「宜しいですわ。宜しくねアルフ様」


「是非アルフと呼んで下さい」


 こうしてアルフ様は主の弟子になりました。

 高位貴族の間では、アルフ様を蔑む者もいらっしゃいましたが、主の容赦ない課題の数々にその声も少なくなっていきます。


 主とアルフ様が学園のテストを一位二位で占めていると、主の弟君達が入学を果たされました。


 ユーリッヒ様が本国の内乱を未然に防いだ頃、主は学園を卒業なさいました。そして、ユーリッヒ様との婚約が取り沙汰されました。

 アルフ様は国の中枢に進まれました。機会さえあれば占族と契約も成るでしょう。


 主も十九歳になられ、シュッティルトへの輿入れの話が持ち上がっています。主は少し困ったように微笑むと、言葉を紡ぎます。


「少ししなければならない事があるので……」


 それだけで声高に言う者が鳴りを潜めました。

 新たに占族として押し掛けて来たフェリクとルイスが急ぎ伝えたい事があると帰って来ました。はて、あの二人はリアナ嬢に着いていたのでは?

 二人の報告でリアナ嬢の人格が入れ替わった事が分かりました。主はこれを見越していたのでしょうか。


「フェリク、ルイス。注意してリアナ嬢を見張ってちょうだい。僅かでも変化があったら伝えてちょうだい」


「「はっ」」


 主より、より注意してリアナ嬢を見張る様に命令を下され、フェリクとルイスはリアナ嬢の元に向かって行った。


 主が他人の個人情報を読む事に罪悪感を持っている様なので、エリアと顔を見合わせ励ましの言葉を紡ぐ。


「トップに立つのが御辛いようでしたら、是非占族の養成所に」


「……結構よ」


「さようですか」


 主の顔を見ると憮然としてはいるものの罪悪感は消えていた。エリアの方は驚いた顔で固まっている。

 そんなに驚く事だろうか……。


 リアナ嬢と入れ替わった人物は好き勝手に動いている様だ。カーロン殿下シュレイン殿下を始め、高位貴族の令息に粉をかけている。

 騒ぎを聞きつけ動こうとする輩には、主が「何かあれば私が動くから」と伝え動きを止めている。

 それだけで動きを止めるのは信頼の証でしょう。


 学園が夏季休暇を迎える前にユーリッヒ様が見えられ、弟君達と話を詰めている様です。主が皆様が動きやすいよう場を整えているのです。間違えないで下さいね。


 皆様が断罪されると聞き、主は学園にリアナ嬢の自宅療養の書類を通されました。

 アルフ様を連れ学園に乗り込む主、主が学園のサロンに顔を出すと、皆様固まってしまいました。主がリアナ嬢に自宅療養を言い渡し、アルフ様に連れて行くように命じます。そうして、騒ぎ出そうとするリアナ嬢にアルフ様が当て身を食らわせ、連れて行きます。


 そして声を荒げるユーリッヒ様に、主は取りなしユーリッヒ様の元に行くと伝えます。


「ローズ! ……本当だな? 取り下げさせぬぞ」


「ええ、本当ですわ。取り下げたり致しません。どうぞこれからもよ……ッン、……っもう! 最後まで言わせて下さいませ」


「すまぬ」


 当然ですが私達は着いて行きますよ。




 お幸せに。






お読みいただきありがとうございます。

誤字脱字等ございましたら感想までお願いします。

感想ありがとうございました。多くの方に読んでもらってると知り吃驚しています。

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