転職魔女、泉の仕掛けを理解する
よく見ると、この木だけで無く近くの岩や石ころにも刻まれていた。
私はこの場所の位置をしっかり暗記すると、帰りましょう、とだけ言うと、村の方向へ歩き始める。
「何か分かったんですか?」
「今日はもう遅いです。明日、全てを話します」
私はサーニャにそう告げると、それ以降は泉に関連することを全く話すことなく一日を終えた。
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私は水と食料をパンパンに詰めた鞄を持って、ユイちゃん、シャネル、サーニャ、セルフィーさんを昨日の場所に連れて来た。
「レイカ、これって……!」
ユイちゃんが何かに気づく。
「そう、きっとここが泉の場所」
「え? 泉なんてどこにも……」
私とユイちゃんは同時に1点を指差す。指の先には、魔女のマークが刻まれた葉をぶら下げた大木がある。そして、その大木の真下には、小さい穴があった。
「これは?」
「これが泉です。隠されし存在よ、我が力を借りてその姿を現せ『隠蔽解除』」
次の瞬間、その小さな穴から透明な水が勢い良く噴出し、あっという間に半径2メートル程の小さい泉ができた。
ユイちゃんの説明を引き継ぎ、今度は私が口を開く。
「昔、私の他にも魔女がいて、きっとこれはその魔女の隠蔽だと思います。何故こんなことをしたのかは分かりませんが、何らかの意図があったのでしょう」
昨日この場所に来た時、私は既視感を抱いていた。風景にも見覚えがあったし、前にこの場所に訪れた感覚も鮮明にある。そして、それは私の内部の情報では無く、外部から入ってきた情報であった。
私があの日、愛していた人に婚約を破棄され、ファルオード王国を追放され、魔女になったあの日、私は『転職の書』を通じて前代の魔女の見た情報を受け取ったのだ。それに気づいたのが昨日この場所に来た時だった。
しかし、それは記憶ではない。前代の魔女の気持ちや思惑、そんなものは一切無く、唯ここに来た時の情報だけだった。
「魔女は前にここに来ています。きっと、私達のように災害を止めるために来たのだと思います」
そして私がここに来た時に前代の魔女の情報が頭の中に送り込まれていることに気づき、裏世界へ入れるように仕向けたのだ。
つまり、前代の魔女が『転職の書』を作った理由は、裏世界での災害を止めるためと推測出来る。
「兎に角、これでやっと泉を見つけることが出来ました。セルフィーさんにサーニャ、ありがとうございます。村のエルフ達にもありがとうと伝えてください」
私達3人が泉に飛び込もうとすると、セルフィーさんが口を開く。
「でしたら、サーニャを連れて行って貰えませんか? 私はエルフクイーンとしてこの森から離れることは出来ませんが、サーニャならお役に立てると思います」
その言葉を聞くと、サーニャも「私、意外と強いんですよ!」とぷよぷよの二の腕を見せる。
「サーニャは少しですが回復魔法を使うことが出来ます。それにサーニャももっとファーナさんという人の話を聞きたいらしく、どうか連れて行って貰えませんか?」
「サーニャが良いなら、こちらとしても有難いです」
「では、サーニャのことをよろしくお願いします」
「はい。じゃあいっせーのーでで泉にダイブするよ? いっせーのーはいっ!」
私達4人はセルフィーさんに見送られながらも、合図と共に裏世界へと繋がる泉へダイブした。
明日は休載致します。




