転職魔女、枕を当てられる
「今日の夜はこの部屋をお使いください」
「何から何まで、本当にありがとうございます」
私は扉を閉めて部屋を出ていくセルフィーさんを見送り、私達のために貸してくれた部屋に設置されているふわふわのソファに飛び乗る。
「このふわふわ気持ちい〜!」
「セルフィーさんって良い人よね」
セルフィーさんが用意してくれた3人分のベッドに寝転がってぐでーんとしているシャネルは、枕に肘を乗せながら足をバタバタさせる。
「そうね。ちょっと怖いところもあるけど……」
「そうそう! 初めに会った時の切り刻み宣言はかなり……ひゃっ!」
シャネルは突然驚きの声を上げる。
「どうしたの?」
「い、今そこのクローゼットが動いた気が……ほらっ、また動いた!」
シャネルは私の後ろにある茶色のクローゼットを指さす。
「もう、そんなことある訳ないでしょう?」
「本当なの、見て来てよ!」
なんで私が……と呟きながら、私は堂々とクローゼットの前に立つ。別に何かしらの心霊現象が起きる訳も無く、私はため息を1つついてから躊躇無くクローゼットの扉を開けた。
「っバア!」
私が扉を開けたと同時に、ユイちゃんが勢い良く飛び出てきた。
「「きっ……きゃあああ!」」
私は腰が抜けてその場から動けず、シャネルに至っては半泣き状態に……いや、もう泣いている。
「ゆ、ユイちゃんかあ……もう、脅かさないでよ! シャネルも泣いちゃってるし……」
「一応私もゴーストですので。それに、人を驚かすと魔力が回復するので、少しでも魔女様のお役に立てればと……ダメ……ですか?」
かっ……可愛い! あれだけ可愛いと言われるのを嫌がっていたユイちゃんがまさか自分で可愛いセリフ、ポーズを決めるとは衝撃的だ。
私は精一杯の笑顔で許してあげようとする甘い誘惑をどうにか押し込む。
「そう言って私達を驚かせたいだけなんでしょ? こういうのは心臓に悪いから駄目!」
ユイちゃんはバレたか、というかのようにぺろっと舌を出すと、「すみません……」と謝ってくれた。
「さて、それで明日の作戦のことだけど……ぐはっ!」
私が気を取り直して真面目な話を切り出そうとした時、シャネルの投げた枕が私の顔に激突する。
「何すんのよ、シャネルゥ〜!」
「ばーか、ばーか!」
シャネルは私の怒りの表情が面白かったらしく、調子に乗って2つの枕を同時に投げる。そして、その両方がユイちゃんにヒットし、小さい体は枕の重さに耐え切れず、その場で倒れ込んでしまった。
「あ、すみませんユイ師匠!」
ユイちゃんは無言のまま立ち上がると、魔法を唱えて2つの枕を宙に浮かせる。
「シャネル、何の罰も受けずに許してもらえると思うなよ? 望むままに増殖せよ『無限増殖』!」
宙に浮いている枕は瞬く間に分裂し、8つに変化した。そして、その全ての枕がシャネルを目掛けて飛んで行く。
「ぎゃあああ!」
ユイちゃんは、見事に全枕がヒットして倒れ込んだシャネルの背中に立ち、ゆっくりとガッツポーズを決めて戦いに幕を下ろした。
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