鉛玉、食うてみるかぁ
ピストルを手に、にやにやとにやつく男。
「鉛玉、食うてみるかぁ」
その瞬間、辺りにアンモニア臭が立ち込め、男たちの笑い声が響いた。
川岡がずいっと前に出て、嘲笑いながら、山本に言った。
「お前、馬鹿やとは思うてたけど、おしっこする場所も知らんかったんか。
おしっこはなぁ、トイレでするもんや。
この馬鹿!」
山本は抑えようにもとまらない震えに襲われ、がたがたと震え、視点も定まっておらず、その川岡の言葉が届いてもいない。
川岡が山本の取り巻き連中を見渡し、恫喝する。
「お前ら、死にたなかったら、この事は言うなよ。
ええな」
「はい」
取り巻き連中が助かりたい一心で、川岡に忠誠を誓うかのような態度と声で、答えた。
川岡が右手を上げて、軽く振ると、男たちが軽く一礼して引き揚げて行く。
「そいつ、教室に連れて行けや」
川岡がさっきまで山本の取り巻きだった連中に命じると、ずっと前から忠犬だったかのように、ズボンをぐっしょりと濡らし異臭を放つ山本を抱きかかえて、歩き出す。
お昼休み。
教室の中では、机を寄せ合いお弁当を食べながら、楽しく会話が弾んでいる。
そんな中、上田はお弁当に手も付けず、心配そうに廊下に視線を送っている。
やがて、教室のドアが開くと、山本とその取り巻き連中の姿が現れた。
上田は山本が最初に現れた事で、一瞬がくりと肩を落としたが、視点が定まらずこわばった表情の山本に気付き、川岡が勝ったのではと思いなおした瞬間、教室の前の方の席の生徒たちがざわめき始めた。
何か臭い物を避けようとするような表情。
上田のところにも、ぷーんとアンモニア臭が漂ってきた。
全員が山本の姿に注目し、ひそひそと会話が始まり、前の方の生徒たちは少しでも遠ざかろうと、体をよじっている。




