破壊された日常2
凄まじい熱気を感じ目を開けてみる
取り囲む炎に思わず飛び起き辺りを見渡す
目を疑うがそこには何も無い
いや正確にいうなら昨日まで平和に存在していた筈の村は丸焦げで何も残って無いのだ
辺りを埋め尽くす異臭と屍
何があったのか全く理解出来ない
自分はどうやら祖母の残してくれた魔法結界に守られ命は取り留めたらしいが家は燃えつきてしまっている
突然の出来事に言葉も出ないクリスだったがふっと目線の先にまだ生きているらしい子供が大きな樹木の下敷きになっているのをみつけ急いで駆け寄った
魔法で樹木を浮かせるとその男の子を引っ張り出して様子を確認する
どうやら大きな怪我は無いようだ
クリスは安心して微笑むと子供についた汚れを払ってやった
「ぶっ無礼者!!俺様に安易に触れるのでない!!」
5歳くらいのその子供は何故か怒っているようでクリスは苛っとした
「御両親から助けて貰ったらまず御礼を言うことも教わってないのか?
お前可哀相なガキだな…」
見下ろす呆れ顔に子供は益々頬を膨らませた
「俺様は龍神族第一皇子のレイ様だぞ!?皇子に向かってお前だのガキだのと…なんと無礼な奴だ!!」
龍神族の第一皇子という言葉にクリスはクスクスと笑い出す
龍神族とはこの世界でもかなり有名な気高く由緒正しい種族である
確かに皇子がいるとは耳にした事くらいあるがこんな品の無い子供の筈がない
「あのなぁ龍神族様の皇子がこんな田舎に護衛もつけずにいる筈ないだろ?」
溜め息をつくクリスにレイと名乗った子供は瞬時に身体から龍神族特有の翼を大きく広げて見せた
どうやら龍神族というのは嘘では無いらしいが何やら力不足らしくすぐに小さく引っ込めてしまった
「お前如きに俺様の高貴な翼を見せてやったのだ感謝しろ…」
そう言いながらフッと糸が切れたように倒れ込んでくる身体を慌てて支え抱えるとクリスは放って置くわけにもいかずひとまず村外れの被害の無かったらしい川辺まで歩いた
心地良い水のせせらぎに暫くしてレイは目を覚ます
汚れきっていた筈の服はすっかり綺麗になっていて先程こと切れてしまった体力も心なしか戻っている
「これはお前の魔法か?」
レイは驚いたように クリスを見た
「当たり前だろ?少しは礼を言う気になったかよ?龍神族様ってのが偉いことくらい承知してるが礼くらいきっちり言え!!」
睨みつけるクリスの手を取りレイは目を輝かせている
「お前俺様の家来にしてやるよ!!」
駄目だコイツ話が伝わらないってか意味不明
「あのなぁなんで僕が礼もまともに言えない糞ガキの家来にならなきゃいけないんだよ!?」
クリスは手を振り払って怒鳴りつけた
「お前は無礼者だが若いくせに魔法の腕は良いようだ
俺様に黙って触れた件とガキ呼ばわりして怒鳴りつけた件に関しては礼がわりに特別に許してやってもいい…黙って家来になれよ!!」
言い放ったレイの紅い瞳が益々紅く輝くのを見てしまいクリスはしまったと思ったが遅かった
龍神族の瞳には人を縛る力がある
その瞳がより紅く輝く時その者をけして見てはいけない
目を見たら最後その者が呪縛を解いてくれるまでその者の命令に逆らえば命を落とす恐ろしい呪い
「ガキの癖に一丁前に人を呪うなんて生意気な奴…いっとくけど僕を無理やり家来にしたところでお前にかかってるらしい祟り魔法なんか解く術知らないぞ?」
祟り魔法と言われレイは顔をしかめている
「…煩い!!ともかくお前は今から俺様の家来なんだ!!レイ様と呼んで俺様を護衛しろ!!」
クリスは激しく断りたかったが龍神族の呪縛はどうやら本当に強力で口も身体も拒否は認めてくれないらしいので仕方無く肯定する
「分かったよレイ様その代わり僕のこともクリスって呼べよ…年下にお前呼ばわりされんの大嫌いなんだよね」
クリスは精一杯睨みつけている
「これからともに旅路につくのだからそのような反抗的な目はやめておけ…それに云っておくが俺様は年上だ!!」
レイは少しムキになったように睨み返したがクリスは笑ってしまった
「いやいやレイ様のどこが僕より年上だっていうんだ!?僕は一応これでも16歳だよ?」