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圧倒的男

リィエンの戦術は単純明快で、ただひたすら突っ込んでくるだけの戦法に見えた。

身体能力をフルに活かすために、超近距離の肉弾戦を仕掛けてくる。

だが、それが逆に玄森にとっては厄介だった。

ブレードの適正間隔に満たない間隔で攻めてくるため、威力を発揮できず防戦一方になっていた。

高速で放たれるうえに手数も多く、ブレード以外の形状に変える隙が与えられない。

「その程度なのか、貴様は!」

リィエンがいかにも余裕があるようにニッタリと笑いながら煽りをかけてくる。

これだけの高速攻撃をしてきても、リィエンは何も苦にする様子を見せない。対して玄森は防戦一方でストレスを溜め、お世辞にも平静を保っているとは言えなかった。

頭の中では冷静になり、リィエンの隙を見つけ出し斬り込まなければ勝てないというのは分かっている。

だが今自分にできることは、バグナウの爪で身体を抉られぬよう防ぐことだけだ。

それだけ基礎身体能力に差があるのを感じさせられている。

元来の玄森の戦法も、基本的にはブレードで近距離戦に持ち込み斬り伏せるという直線的なもので、リィエンと酷似している。

必死に勝機を見出そうとする玄森が滑稽に見えたのか、リィエンは攻撃をやめて一度距離を取った。

「…退屈だ、貴様は。やっと骨のある相手に会えたと思ったが、見込み違いだった」

その一言が、玄森の殺人者としてのプライドを沸点まで刺激する。

距離をとった今なら、銃にも変えられる。

両手をガトリング銃に変質させると、リィエンは鼻で笑うようにその間の刹那の時間を待っていた。

「屠る…」

「やってみろ」

余裕をかますリィエンに両手で一斉射撃を放つ。能力で作り出したガトリング銃は弾は無尽蔵。

いくらでも打ち込めるうえに、威力は既製品よりも殺傷能力が高い。

弾にはマキビシと爆破の性能を追加した。一弾でも当たれば、生身の人間なら致命傷だ。

「くたばれ、スイ・リィエン!」

爆破の効果で、宇宙空間に白煙が立ち込める。手ごたえありだった。

「なるほど、追加効果も付随できる。確かに一人で十分脅威だな」

「お前…今の、どうやって受け切った…!?」

リィエンは弾圧で後退しただけで、目立った外傷は一つも負っていなかった。

「ん、この相棒で全部受け止めただけさ」

バグナウ一つで、弾丸を全部受け止めた?そんな馬鹿な話があるのだろうか。

「おっと、我々はまた散らなければならないようだ。ここまで私に食らいついた礼だ。一撃を当てて去らせてもらうよ」

「ふざけr」

再び銃を構えたときには、リィエンは既に間合いを詰めていた。

バグナウに付いている太く短い二本の爪が、玄森の腹部ど真ん中に沈んでいた。

「見込み違いだった、というのはウソだ。また貴様と闘りたいよ。では、さらばだ」

既に一撃で意識を失っている玄森を置き去りに、宇宙空間を解除しリィエンは何処かへ行ってしまった。


「…玄森特殊隊員、生きてる?」

宇宙空間だった場所は、跳宰が将校と戦った場所のような何の変哲もない広間に変わっていた。

「ん…?アンタは…は、ね、つかさ…?」

玄森が起き上がろうとすると、腹部が猛烈に痛む。

側にいたのは、跳宰と他の能力者全員だった。

「貴方が時間稼ぎをしてくれたお蔭で、ターゲットは駆逐できたけど…今回はこちらが嵌められたみたい」

「どういう、ことだ…?」

「全部私たちの力をチェックするための、貴方が対峙したスイ・リィエンの策略だった。そして

彼の本当の攻撃は、本土にミサイルの雨を降らせること。桜井司令官が居たから、ミサイルは着弾する前に全て撃ち落とすことができたけど…」

今のプレスキーエリアの本当のリーダーは、玄森が対峙したリィエンという男。駆逐対象だった統領は、リィエンが不要と断じわざと目標に仕立て上げた軍幹部。

全てリィエンに踊らされていたと跳宰は苦虫を噛み潰したような顔をした。

「スイ・リィエンは何かをを狙っている。これから諜報局を総動員して奴を探すわ。私たちは国防に力を入れると司令官から通達があったわ。とりあえず治療も必要だから、二ホンエリアに戻るわよ。地上に移動機が到着してるから、貴方を運ぶわね」

そう言って跳宰はゴーレムを出現させ、玄森を担がせ下のフロアに通じるエレベーターで地上に降りた。

全員移動機に乗り込むと、機体は爆速で空を飛ぶのだった。




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