突然の連絡
知らせを受けたのは、なんでもない平日のことだった。
自宅でサオリと退屈しのぎにテレビを見ていると、呼び鈴が鳴る。
少し応対が遅れただけで、呼び鈴が連打されるのだからただ事ではない。
ボサボサの頭のまま玄関を開けると、既に呼び鈴を押す誰かは姿を消しており、ポストに真っ黒な封筒が突っ込まれていた。
黒い封筒。それは研究施設若しくは軍の者から何か通達があるときに使われるものだ。
封筒を抜き取り、封を開ける。中には一枚の紙が三つ折りにされて入っていた。
『黄瀬由季人上級研究員、研究中の事故により退職。本人が連絡先通達を希望し、当書類を送る』
黄瀬が研究中の事故により退職ということは、能力者実験に巻き込まれた?
退職するということは、状態が良いとは言えないだろう。
連絡先はストレスカウンターの個別番号と、療養先と思われる総合病院の住所が記されていた。
黄瀬には色々世話になった。一度、会いに行かねばならない。
封筒に手紙をしまい、リビングでまだテレビを見ているサオリに声をかける。
「サオリさん、私の恩人が体調が思わしくないようで…。お見舞いに行ってきます」
サオリさんも、と言いかけて、詠斗は言葉を止めた。
街中はともかく、総合病院に連れて行くのはよろしくないような気がしたのだ。
「エイトの大事な人、病気なの?」
サオリは少し気を揉むような表情をする。詠斗が焦っているのを察しているようだ。
詠斗が焦るということは、日常では考えられないことなのだ。
「一緒に、行っていい?」
サオリの方が、先に切り出した。
この数日一緒に居るだけで、サオリの精神はゆっくり肉体年齢に合うように成長しているようで、その成長の一環で孤独を嫌う面が出てきていた。
「…いいですよ」
サオリから切り出すのなら、連れて行こう。
今のサオリなら、我慢が効かないこともなさそうだし、平静も装えるだろうと踏んだ。
総合病院は、中央エリアの主要エリアにある。
治療できない病気やケガはないとまで言われている病院だ。
セレリタス号をすっ飛ばし、駐車場に止めると、急ぎ足で病院受付に向かう。
受付の事務員は体力切れで息の荒い詠斗を引くように見ながらも、黄瀬の病室を教えてくれた。
5階の505号室。個室であるらしい。
サオリは初めて見る病院でも、以前のように挙動不審になることはなく、淡々と詠斗についてきた。
個室は扉が閉まっていたため、ノックをする。
「黄瀬さん、入りますよ」
『どうぞ』という弱弱しい声が、聞こえたような気がする。
横にスライドするドアを開けて、黄瀬のいるベッドへ足を運んだ。




