表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/285

約束だから、守りますよ

「やあ、詠斗君!待っていたよ」

桜井が執務机から大きく手を振ったのを、永瀬が冷ややかな目で見ている。

「…失礼します」

一礼して詠斗は室内に足を踏み入れ、執務机の前に立った。

「して、何用でしょうか?」

「相も変わらず死んだ目をしてるねー。そんな詠斗君も興味深いけど。今日呼んだのは、サオリさん…あの紛い物のこと。もう少し話を聞けないかなーって」

桜井の目が本気だ。いよいよサオリに関して何か突っ込んでくるのだろうか。

「単刀直入に言うのならば、穏便にサオリさんをこちらに引き渡してもらいたいんだけど」

桜井の眼の色は鮮やかな紫に変色し、雷光を迸らせている。

「それを私が同意するとでも?」

詠斗は動じない。崎下の遺言の通りにすると、一番初めに心に決めてあるのだ。不遜な態度に、永瀬も引力の渦を作りかけていたが、桜井がそれを手で合図して止めさせる。

「じゃあなんで、逆に同意しないのかな?詠斗君はサオリさんなんて、本来はどうでもいいんでしょ?」

パキュン、と雷が走る音がすると思うと、いつの間にか桜井は詠斗の背後に立ち首に手刀を押し当てる。

「…」

「君が全てに関心を持たないのは、ユタカから聞いてるよ。君もユタカと同じ、創られた人間だってこともね。詠斗君にとってサオリさんはお荷物以外の何物でもないはずだ」

桜井は本来の詠斗の心理に戻そうと囁いた。身体には電子を取り込ませ、思考の中でそれに関する感情になるように既に仕向けていた。

これで詠斗はサオリを放棄するだろう。そう桜井は考えていた。

「私にとって、サオリさんは特別です」

「へえ!詠斗君にとって特別なのか」

改竄をもってしても、詠斗の心は揺るがなかった。

「サオリさんを貴方たちには渡しません」

固い口調で、詠斗の決意が込められている。それを能力で感じ取った桜井は、手刀を収め、また神速で執務机に戻った。

「詠斗君の気持ちはよくわかったよ!…詠斗君に命令を下すね。君は司令官の権限で今日から無期限停職にする」

「停職、ですか」

「…サオリさんと、居てあげて。僕ができるのはそこまで」

「先ほど、サオリさんを寄こせといったのはなんだったんですか」

詠斗が呆れ気味に言っても、桜井は少し微笑むだけだった。

「僕から言えるのはここまで。まあ、君なら何か考えれば気付くかもね。それじゃ、バイバイ!」

桜井がストレスカウンターに触れると、部屋の中に軍人が3名入ってきた。

「あと、よろしくね」

「ハッ」

2人が詠斗の両脇を抱え、もう1人は背後から銃を突き付けて前進する。

そして施設の外まで行くと、玄関先で詠斗は放り出されたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ