雷主(らいてい)
はあ、そうですかと詠斗は適当な相槌を打つ。カラカラと笑う桜井司令官は、どこかで見たことがあるような気がする。
記憶を巡らすと、そういえば書庫でみた桜井拓の顔によく似ている。髪の印象も瓜二つだ。顔の作りは、若干司令官の方が幼いが。
「拘束してまでお聞きしたいことがあるとか」
「あー、立場上拘束って言い方しかできなくてね。ごめんね。僕が聞きたいのは、詠斗君が昨日の夜に一緒にいた女性のこと」
やはり監視カメラの映像を、桜井は確認している。
「一緒にいた女性ですか」
一応要領の得ない返事をしておくが、桜井の目つきが真剣みを帯びる。
「僕が探している人にそっくりなんだよ。同じ姿をした二人の女性。もう言いたいことは分かるよね?」
サオリと白藤の存在を、桜井は知っている。知っているから確認のために聞くのだろう。
「…白藤さおりのことですか」
「黄瀬上級研究員に、極秘書庫の入室を許されてるのは知ってる。50年前の資料を、君は見たでしょう?入室していた時間は4時間以上だよね?まあそれはいいや。僕はね、さおりさんに…恋をしているんだ」
思わぬ桜井の言葉に、詠斗はズッコケる。
「恋…ですか?私は彼女の能力に注視していると思っていましたが」
「だって可愛いでしょ、さおりさん。能力も確かに無限の可能性を持っているけどね。僕の本心では兵器としてはあんまり見てないよ。あ、これは内緒ね。上の人たちにどつかれる」
桜井がどこまで本気なのかが分からない。だが恋をしているのも事実なのか、白藤の名前を呟く度に顔を赤面させている。まるで恋する乙女のようだ。その様子を冷ややかな目で永瀬が見つめているのが、温度差を感じる。
「でもさ、一つ紛い物がいるんだ~。君と一緒に公園に行った、さおりさんと瓜二つの人」
赤面をやめると、少々ピリッとした空気が漂い始める。いや実際に、静電気のようなものが漂っている?桜井の周りに閃光が不規則に発生している。桜井は能力者のようだ。
「彼女は一体何者なのかな?詠斗君なら、知ってるよね?彼女と家から出てきたのも映ってるし!まさか何も素性を知らないなんてことはないでしょ?」
満面の笑顔ではあるが、それが逆に不気味さを感じさせる。
「彼女は…たまたま出会った行き倒れですよ」
とりあえず嘘をつくと、身体に落雷を落とされたような激しい痛みを受けた。
「グアッ…!」
「んー。嘘ついたみたいだね。僕のチカラは稲妻。既に微粒の電子が詠斗君の中に入ってる。嘘を感知すると集合して雷を生むから、発言には気を付けた方がいいよー。それに」
桜井は倒れこんだ詠斗の首を上げさせ、ニッコリと笑った。
「僕直々に雷を落とすことにもなるでしょ?」




