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【調整会議再び】

世界が変わり続けて数年の月日が目まぐるしく過ぎ去っていく。


人々の活気が目に見える形で現れている点の一つに出生率の増加が挙げられる。


人の成長は早い、子どもであってもその手に武器を取りイマジニアに潜っていく。


良い武器が生産され、画一的な戦闘訓練を受け、センスのある者はどんどん深くに進入していく。


自分や家族がよい暮らしが出来るように…ギリギリのラインを自己責任で決めていく…




しかし、すべての人間が成功できるほど、この世は甘くはない。




傷つき、疲れ、戦えなくなった者達、その数は増えていく。






『久しぶりですね。まさか、調整会議をまた行う日が来るとは…』


一同の表情は暗く、疲れが前面に出ているようだ…ただ1人を除いて。



『回りくどいのは、面倒…調整者、イマジニアはどこまでいけば攻略になる』



『解りません』


『解らないって、そんな事はないでしょう。昔、攻略度合いを知っていたのだから』

『フランさん、進行度は解ります。しかし、何を持って攻略であるかは魔王さんしか知らないのでしょうね』



『そういうことですか、それが解っても。攻略を止めれない、国の運営に鉱石の力は不可欠になっている』


『各国、負傷者の扱いに困っているのが現状だものね。ポント様も報いたいけれど難しいって』




『各国の皆様、それらの人々に「平原」に住んでいただきたいと思っています。我が国は今でもイマジニア攻略では大きく遅れています。我が国の産業は農業を中心とした食糧生産であり、人手が足りないのです…どうでしょう』



各国一同がナセキに注目する。その目は発言の真意を、裏を探るような視線…

そんな視線に晒されても、顔色1つ変えない。



『そんな旨い話しがあるはずがない』


『食糧生産は国策。その為の投資を行うのは当然…「平原」の食料は皆様の為になっていると思いますが…』



ナセキは前置きをした後、住居の提供、賃金の内容などを語り「大筋の案ですが…」

と締めくくった。





最終的に各国は希望する者の移住を支援するという事となった。




人は生きる為の道を探す…


誰も惨めな思いをしてまで生きたくはないのだから。






『では、会議を終わりにしましょう』


各国代表は調整の為に戻る者が多くあった。


『ノワール、たまには一緒に食事でもしましょう』

『わかった、そうしよう』

『姉様、ノワールさん。邪魔かと思いますがご一緒してもよろしいですか』


チラッとノワールを見る…その目は好きにするといいって言っているように見えた。



『一緒に行きましょう。どこがいいかしら』

『「島国」に落ち着いて食べられるいい店を知っています。姉様、いかがでしょう』

『ナセキに任せるわ』


移動中ナセキは穏やかな表情のまま一言も発する事もなく一軒の大きな店に入った。

その後に2人でついて行く。


『奥の個室は空いていますか』

『ナセキ様、空いております。すぐにご用意いたしますので、どうぞ』

『今日は2人客を連れてきているのでメニューもお願いしたい』

『すぐにお持ちします』


店主らしき人物とのやり取りを見る限り常連のいいお客なのだろうと感じた。


通された部屋は落ち着きのある雰囲気に白と黒で描かれた縦長の絵画が目に鮮やかだ。


『姉様、ノワールさん。お好きなものを、どんなものか解らなければ説明します。今回は僕の奢りですので遠慮なくどうぞ』


『良く解らないから、お勧めでお願いできるかしら。ノワールもそれでいい』

『…ああ…』


『そう警戒せずとも、毒を入れるような汚い真似はしませんし。僕の腕前であなたには逆立ちしても敵いませんよ…料理は僕のチョイスで頼みますね』

『俺に敵わなくとも、セントに危害を加えることは出来るとは考えないのか』

『僕には姉様に危害を加える必要がない。ゆえにその心配は無意味ですよ…義兄様…』


『俺とセントはそういう関係ではない』

『そうですか。姉様は満更ではないと思っていたのですが…僕の思い違いですかね…』


ニヤニヤしながらこちらを見るナセキは余裕と自信を身につけて今、私の目の前に居る。




『姉様に言われたあの日から、僕は良く考えるようになりました…僕は何をしたいのか』


料理が運ばれる。

ナセキは木の枡に透明な香りの良いお酒を3つ注いだ。



『僕は、王になろうと思います。僕が殺したような王に…』


背筋に冷たい汗が落ちるのがわかる…

強張る私の膝をそっと温かい感触が私を包む。



ナセキの目は怖くなかった…



決めたのね…自分で自分の道を。



『『乾杯』』


私とナセキの声は自然と重なり、その日の食事は楽しく過ぎていった。





今日はまた新しい世界の扉が開く日になったことに何人が気づいていたのだろうか…





『国を売るのですか』

『いや…違う…』

『どうであれ、それは国を売る、捨てることと同義ではないか』



『世界は変わる。今日を境に…もう新しい流れは止まらない…』


『ユーロ、いくらあなたの言葉でも国の在りかたをそう簡単に変える事など出来ないのですよ』

『時間の問題…早いか遅いか…それだけのこと』


エン様にも解らないとは…源爺はしょうがない、源爺だから。国の在りかたはそう簡単には変える事は出来ないですって…


笑わせる。


そもそも、国とは群。ホルダー時代のような国=物ではない。


これほど世界が変わっているのに、なぜ彼の提案の意図が読めないのか。


『エン様、国の在りかたは変えるのではありません。変わっていくのです。そして、遅くない時期に世界の流れは彼に向かうでしょう。良くお考えください』



エン様には恩がある。しかし、解って頂けないのであれば…



『もし…私のお話がご理解いただけないのであれば…エン様、私は「島国」を出ます』

『ユーロ、エン様を脅すというのか』

『解りました』

『エン様』



源爺は顔色をいろいろ変えながら変な動きをしている。この空気感の中でそんな面白い動きをするとは…やはり源爺は面白い。

私も表情を変えずに動きを真似してみる。



『源、落ち着きなさい。ユーロ、からかうのはお止めなさい』


もう少しでマスターできそうだったのに…


『あなたにしては解りやすく答えをくれましたね。準備は任せます、必要な事は早めに分かりやすく伝えなさい。あなたも変わったのね』


『必ず彼を抱く…あれはいい素材、是非手篭めにしたい…』

『ユーロ…あなたはその自由さが持ち味ですからね。いいでしょう』

『楽しみにしてるといい』


すでに詳細な計画書は出来ている…


『エン様、すぐに書面で送る…』





各国の「平原」への移住者はかなりの数になった。その数は今後も定期的に増えていきそうであった。


各国がいろいろな事を考える中、悩める王がここにもいた。



『みんな、少ないが貰ってやってくれ…』


『ポント様、これは国の為にお使いください。「平原」の提示した条件が本当であるのならあちらで困る事は無いでしょう。このような形で国を去るのは悔しいですが、ポント様…いままでありがとうございました』


「荒野」から「平原」へ移住する者達の第一陣をポントは強い無力感で見送った。


『…行ってしまいましたな』

『ああ…』


鉱石の力で荒れた土地は徐々に改良できている。定住できる場所も増えてきた。

「荒野」は豊かになりつつある。

彷徨いながら暮らしていた時代から、夢見ていた安住の地を作り出している。



でもそれは、いま立ち去った者達の力も使ってのこと…


あいつ等に何もしてやれず、餞別も受け取ってもらえない。



俺は、正しいのだろうか。






緑の大地、大きなオアシス、活気ある人々を見ながらも心を痛めるポントはまた、イマジニアに潜る。


ひたすらに…







「平原」では移住者の受け入れに大忙しであった。


中央のナセキ代表からの早馬で届いた指示書は国の運営に関わる1人1人に向けて対応内容が書かれてあり個人に当てられた内容だけに各人は全力を尽くすしかなく。王城に住んでいたものはナセキの母親に到るまですべてに仕事は割り振られた。


すべての指示書の冒頭にはこう書かれている…


「国を頼りにする者、すべては国を造る者である。そこに、産まれも、経歴も関係なし。想いに応えるのは想いのみ。我らを想った亡き賢王の声を忘れるな」


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