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【物事の進め方】

張り詰めた空気が場を支配し、誰も一言も発しない。




その沈黙を私が破る…


『各国のイマジニア攻略におけるポイントをお配りします。なお、攻略自体の質問には答えられません。その他いくつかの発言禁止事項が私にはありますのでご理解ください』


各国からの返事は無い。


パン、と私が手を叩くと黒いもこもこが各国の代表の隣に立つ。そしてどこからともなく数枚の用紙を取り出し代表に渡す。


『セント、質問いいかしら』

クロネさんは自然な笑顔で私の名を呼びながら片手を上げた。



『質問内容の前に。この会議の間は私の事を「調整者」と呼ぶように指示が書いてあります、皆様もよろしくお願いします。質問どうぞクロネさん』


『調整者、このモッキーは以前現れたモッキーと同じなのかしら』


『この黒いもこもこはモッキーと言うのですか。私は始めてみるので以前と同じかどうかは分からないです。席を立つ必要を無くす為と書かれています』


『話しかけてみてもいいかしら』

『どうぞ』


クロネさんはモッキーに質問をしてみるが特に返事はなく、先ほどの用紙を一枚私に届けさせた。動きの指示は出来るようだった。


『途中で内容が変わることがないか確認したい。調整者、その用紙に返答をお願いしたいわ』


私は一言、「ありがとう」と書いてモッキーに届けてもらう。



『内容も改ざんされる事は無い様ね、モッキーについては解ったわ。ありがとう』

お互いに笑顔を交わす。




『調整者、クロネさん。差し支えなければ今のやり取りの内容を聞いてもいいですか』

ゲンさんが私とクロネさんを交互に見ながら発言する。


『「緊張しているようね。表情が固いわよ」と書いたわ』

『それに対して、「ありがとう」と書きました』

『なるほど、確かに昨日お会いしたときより表情が固い、そういう方かと思っていましたが、緊張されていたとは。無粋な詮索失礼しました』

『この場で命のやり取りをするでなし。モッキーの頭でもぽんぽんしながら進めればいい』

『あなたと同意見はふに落ちませんが同意しますわ』


なんとなく、部屋の空気が緩んでいく気がした。




『皆様は余裕があるからそんな暢気な事を言っていられるのです…我々「平原」はここまで他国から後れている。お父様が最後に頑張ってくれたのに…』



全員が資料に目を落す…


各国のイマジニア攻略ポイントは「荒野」が頭一つ進んでいて、「島国」「森林」「山脈」と僅差で3ヶ国が並び、だいぶ少ないポイントで「平原」が最下位となっている。その差は「荒野」の半分以下という有様であった。


『この現状は各国の政策によるもの、今ある手札で話をするのがこの場…』

『そうですね。この差には個人的には思うところがありますが、ここは個人の場ではないので』


ナセキは俯いたまま静かに「確かに…」と呟いた。



『調整者、発言よろしいいかしら』

フランさんが真っ直ぐ手を上げる。


『どうぞ』

『ユーロさん、ゲンさん。あなた方の言うことは確かに真実でしょう』


フランさんは全員を見渡し、最後に私を見た。


『この場を、いえ…世界を調整するのは調整者の考え次第でしょう。我々がとやかく言う前にこの現状をどう考えるか話を聞くのが筋では。ないかしら』


『ふん、確かに…意見を…』



ナセキ以外が私を見る…私は…




『私の考えを話す前に、各国にお聞きしたいとこがあります。国家間で戦争は起こると思いますか。もし、起こると仮定されるのであれば私は「平原」を支援するでしょう』


『その理由を伺ってもいいですか』


『多くの命が失われるからです。「平原」だけではありません。争えばどちらにも被害は出ます』

『その理由でなぜ「平原」の支援をするのですか』



『均衡を保つ為です。ホルダーの力があった時代、力のバランスによって争いはありませんでした』

『では、均衡を保つ為に自国を豊かにしようとすることは間違っていると』

『無用な争いを避けたいだけです』




『私は亡くなったウォルン王の願い。「山脈」の国民が今より豊かに暮らせるようにと願い、今この場にいます。ほかの国の方々もそうなのではないですか。争いを望む国は現時点では少ないでしょう…「平原」は国境に兵を増やしてますよね』




『それは本当ですか』



『…はい、もしもの時に備え、民の血を流さぬようにとお父様の指示です』


『そうですか。では、私は今回どの国にも介入しないことにします』


『調整者が調整を放棄するというの…面白い』


『調整者だからと言って必ず何かをしなければならないというわけではないでしょう。魔王さんからもそのような話は伺っていません』


『では、不干渉を続けるおつもりかしら』




『いえ、私が希望することは各国に戦争の意志があるかどうかの確認と「平原」の国境付近の緊張緩和。これらを求めます』


『調整者の意志は理解したわ。「荒野」はすぐに王の確認を取りたいので退席許可を頂きたいのだけれど。いいかしら』


『クロネさん、ご理解ありがとうございます。本国との通信用装置が設置できますがいかがですか』


『詳しく聞きたいわ』


『各国の控え室に設置でき国にはお好きな場所1ケ所に設置できます。設置と使用にはイマジニア産の光る鉱石を対価として頂きます。声だけでなく装置の前の方の姿も見ることが可能です』

『いただきますわ。「森林」はすぐにでもそれを頂きたいですわ』

『フランさん、割り込むのはどうかと思うけど。調整者、それは幾つあるのか聞いてもいいかしら』


『数は全員に行き渡るくらいはありますので心配ないです。「森林」「荒野」以外の方はどうなさいますか』



『設置にかかる鉱石量と使用にかかる鉱石量を提示して欲しい…ありが…結構する』

ユーロさんが言い切る前にモッキーは説明分を各国代表に渡していた。


『ここにある、公開通信は随分と鉱石使用量が少ないですが、なぜですか』


『それはこの場の全員がいる前での使用になります、内容はこの場全ての人物に見聞きされます。それと各代表が揃っていない場合は使用できません。制限が強いので使用量が少ないのです。通信先は個人で向こうに設置されることはありません』

『私、バブエ様への公開通信を希望いたします』


他の代表達は様子を見たいのかフランさんの発言に対して特に意見は無い様子だった。


『では、他の国の方々へのお披露目も兼ねているので初回は鉱石使用の負担は私がしますね』

『感謝しますわ』


円卓中央にバブエさんの姿が映る。


「お、モッキーじゃねーか、久しぶりだな。おいおい、腹が割れてきたけどどうした、何とか言えよ」

『バブエ様、私です。あなたのフランですわ』

「お、モッキーからあたいの子猫ちゃんの声がするね」

『猿が子猫ちゃん…笑える』

「今度は違う声、ん、なんか見えてきた…」


『フランさん、相手側がこちらの姿を見るためには少し時間がかかるのです』

「その声は、セントかい。元気にしてたかい。こんなのあるならもっと早く連絡くれればよかったのに」

『バブエ様、各国代表が揃っているのです馴れ合いはおやめください』

「フランは固いんだから」


『バブエ様、この場では調整者と名乗っていますので』

『守んないとなんかあるのかい…その表情、ないね。セントはセントだろう私は私だしね。好きにさしてもらうよ』


『バブエ様、ご相談があるのですが…』


フランさんが通信の件も含め説明をする。


『それ、いるかね。「森林」は何もこそこそする必要はない、なにがあれ堂々としていればいいじゃないか。セント、今は例のあれ攻略で忙しいから他国に攻めたりしないから安心しな。あたいの名に懸けてもいい。フラン、設置するかどうかは任せる。フランが必要と感じるなら買いな、あたいはフランの判断を信じるからね。新手がきやがったからモッキー消してくれ邪魔だわ』


通信は切れた。




暫らくフランさんは恍惚の表情で考え事をしているかと思えば、ハッとした表情をした。



『「森林」はこの装置をいただきますわ。鉱石はどこへお持ちすればいいかしら』

『フランさんお待ちください。他国の方の意向を伺ってからご説明しますので』


ユーロさんが手を上げる。

『エン様に公開通信をお願いしたい』


中央にエンさんの姿が映る。

『こちらはユーロ、必要なものがある。鉱石で買い物』

『ややっモッキーからユーロ殿の…』

『お好きになさい』


通信は途切れた…


『「島国」も購入をお願いしたい』



『調整者、「山脈」のゲンム様に公開通信をお願いしたい』


中央に老人の姿が映りだす。

『ゲンム様、ゲンです。ご相談したい件がありまして』

『本物かのぅ』

『暫らくすればこちらの様子が見えるようになるかと』


中央の老人はどこかへ向かって歩いている様子だった。


『勝手についてくるとは面白い…ゲン、そちらの方々は各国の代表か』

『はい、こちらの方が調整者のセント様です』


『調整者様がこのように可愛らしい方だとは…ゲンは失礼なことをしていませんかな。融通が利かないところがありますゆえ』

『何もございませんのでご安心を』

「ゲンム様なぜモッキーがおるのです」


少し遠くで声がすると老人の隣に人のよさそうなおじ様が現れる。

『あれ、ゲンじゃねーか。元気にしてるか』

『ゲンム様、こちらをご覧ください。このような通信が出来る装置があるのですが購入をすべきかどうかご意見をいただきたく』

『俺を無視すんな。うぉ、結構な量使うなこれ』

『情報のやり取りが早く出来るなら必要であろう。この通信もタダではあるまい。購入せよ』

『ゲンム様が言うなら購入だ』

『了解しました』


『セント殿、いずれゆっくりお話したいものです。ゲンをよろしく頼みます』


優しい笑みを浮かべ老人は私に深く頭を下げたところで通信は切れた。





現時点での購入希望は「森林」、「島国」、「山脈」の3国となった。


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