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22-魔法少年と湯上り会議

 さて、湯上りパジャマな一同です。さすがにスケスケなネグリジェとかはいませんね。

「TPOはわきまえているのよ?」さいですか、ママさん。周囲の視線がその猫の着ぐるみパジャマに注目していますが?

「ゆーきママそれ暑くないんですカ?」スポーティなジャージ姿のリカルドくんがききます。

「大丈夫、夏仕様の素材だから、空冷式だし」Vサインが可愛いですね。

「そうなんだよね、これ意外と、というか結構、ひんやりとしていて快適なのですよ」同じく猫スーツのゆーき少年が答えます。ええと身長が平均よりちょっと低め、10歳くらいの美少年が、可愛らしい猫耳付きパジャパ(色は青でお腹のあたりと手足が白)を装着している様を想像してみましょう。

 ええ、いいですね。

 親猫は黒猫です。色分けは少年と同じで、どんな仕組みになっているのか、長めの黒尻尾がゆらゆらとお尻で揺れているわけです。

 それらが、ペアで「ねー」とか言って首を傾げているのです。もうね、タイトルつけて、額縁に入れて飾っておきたいですね、悩殺、親猫子猫、肉球快進撃とかいう題名がいいですかね?パネルにするとこまでは決定しました。

 はい、落ち着こうね。


 なっちゃんさんはうす紫いろのワンピース型のパジャマですね。ちょと丈が長めで膝下まで伸びてます。長めの髪を乾かして、軽く後ろでまとめています。

「ううう」そして、お風呂場での痴態を思い出して、ソファーにクッションを抱えて埋もれています。リビングは空調が効いているのちょうど良い室温ですね。

「別にそこまで衝撃を受けなくても(^ ^)可愛かったですよ♪( ´▽`)」パンツスタイルのパジャマで色は黄色な淵島さんがフォローしていますね。

 

 ショートカットのれーねいさんは、ゆったりとした和装?作務衣のようなものを着込んでますね。色は薄緑っぽい、新緑の葉みたいな色。ちょっと大きめの胸を押し込めているような感じです。でも全体的に凛々しいというか、漢っぽい感じですが。ざっくりしている印象ですね。


 ちなみ児童会長は、浴場でいろいろあって、現在ダウン。再起動中です。


「ともあれ、湯上りにはこれでしょう」と麦が主原料のホップの効いた飲料のタブを開けて、冷えたがグラスに注ぎつつ、そして躊躇なく喉に流し込んで、行きます。それと同時にちょっと早めの夕食を準備するようにゆーき少年に指示していきます。

 サクサクと、料理を食卓に用意していきますのは、ゆーき少年と、元気なリカルドくんです、ケータリングしたオードブルなどを中心にした料理を適当に食べやすいようにセッティングしていきます。それらを魚にしてつまみながらとりあえず一本飲みきってしまうゆーきママですが、見た目がローティーンにしか見えないので、なんとも言い難い感じですね。

「後輩くんも遠慮せずに飲んでね?」ヒョイと、飲料を渡していきます。あ、こちらはいいですよ、勝手にもういただいていますから。グビグビグビ、うんやはり酒精が入っている方がうまいですねぇ。

「おい、地の文が酔っ払っちまうゾ」呆れた顔でなっちゃんさんに話しかけるリカルドくんです。

「今日は、もう突っ込む気力が出てきません」疲れた顔をクッションから上げて、呻くように言葉を吐くなっちゃんさんでした、ううむ少し物足りない気がします、この気持ちをごまかすためにも、さらに飲んじゃおうっかなー。

「うん、いい飲みっぷりじゃないか!感心感心」どこかのシャチョさんみたいに鷹揚とした感じですねゆーきママ。ええ、飲みますよ、あなたのお酒を断るわけがないじゃありませんか?

「ええと、なっちゃん?食欲ないかな?よければどうぞ、美味しいよ?」ゆーき少年が猫足(手?)で器用に、料理をチョイスしたお皿を、なっちゃんさんのそばに持っていきます。

「ううう、ありがとう」頭を上げて、ゆーき少年の方を見るなっちゃんさんですが、ゆーき少年の顔というか、姿を見て、浴場での彼を思い出して、ボンと云う音が聞こえるくらいに急激にまた顔を赤くしてしまいましたね、けけけ初心だねぇ、ヒック。

「あーたちの悪い酔い方だなぁ」レーねいが苦笑しながら、言っていますね。誰が酔ってるって?俺は酔ってねーぞ(ケタケタケタ)。

「まあ、酔っている振りをして巫山戯ているだけでしょ?」ママさんひどい。まあ、そうなんですけどね。


 一通り腹ごしらえも済んで、軽くつまみと酒精(葡萄を主体にしたものと、米を主体にしたものと、麦を蒸留したものなど色々です)を、未成年者にはソフトドリンク(炭酸飲料とか、お茶とかアイスココアとか)を片手に、色々と歓談というか、お話し合いというか、状況報告とか情報交換を始めます。


「では、前提条件として、管理局側ではすでに平行次元への仮想的転移現象記憶障害症候群、いわゆる異世界(意図しないものも含む)転移現象、と云う事象について、その存在を把握しており、専門の研究チームが立ち上がって、調査中です」スイスイと、資料を提示しながら、甚平のレーねいさんが説明を始めます。

「というか、記憶障害の分類なんですね?」ゆーきママが確認していますね。

「まあ、一応、最初説明がつく範囲で認識しようとすると、そうなりまして、まあ、のちに物理的な現象がひっついてきたので、名称を変更すべきではないか?という意見も出ましたが、主たる問題が本人の記憶の混濁やら、捏造(?)なのでこの方向性で行くことになりまして」

 物理的現象はどう納得しているのでしょうかね?

「まあ、ESPやら、PKやら、PSIやらの研究者がそれらしく説明をつけるようにしていますね」

 

 それぞれ、


 ESP = Extra-sensory perception


 超感覚、通常のセンサでは認知できない事象を読み取るとか、入出力されるとか、という分類の能力で、一部解明済み、限定的に再現できている現象のことを言います。


 PK = psychokinesis

 

 思考するだけで、物体の運動に影響を与える能力で、止まっているものに対する働きかけ、動いているものに対する働きかけ、距離によるカテゴライズなど、観測される現象によって、名称が違います。これも一部限定環境下で再現済みであるけれど、運動系の位置決めにはまだ議論が尽きる気配がない。

 

 PSIはそれらの現象をまとめて総称した言語で、造語?が語源。原初世紀の古代国家で使用されていた言語とも言われる。


 でしたよね?


「おお、地の文ガ、頭良く見えますヨ」リカルドに驚愕されたね!

「まあ確かに、集団幻覚に、PKの組み合わせというのは、かなり真っ当な論理の帰結だね」ガラスのおちょこに米原料のアルコールを入れて、傾けながら、ゆーきママさんが肯定していますね。

「いろいろな人たちが、同じ世界の認識があるのはどうでしょうか?」首を傾げながらゆーき少年が聞きます。

「それこそESPの範囲でしょうかね?共通の幻想が超感覚を通じてネットワークを構築して、記憶障害(記憶の上書き?)を発生させたとか、まあ、質量が次元を超えて移動したというよりは、現実的かと?」冷静にれーねいさんが答えます。

「そんな巨大な揺らぎならセンサに引っかからないはずがないと、確かにねぇ」

「ええと、センサの次元方向がずれていたという可能性は?」ゆーきくんが間髪入れずに疑問を差し込みます。

「うーんと、時間までずれているからねぇ、さすがに”基準時計”になにか揺らぎがあると思うのだけども?それとも認識されていないだけなのかなぁ」ちんまい腕を組みつつ、思案中のママさんです。

「そもそも、肉体そのものが移動していたという証拠、未だに出てないんですよねー」サクサクとつまみ揚げ物をつまみながら、データを見ていくれーねいさんです。

 どれだけの事例があるんでしたっけ?

「ええと、この物理現象を伴う記憶障害、症候群と名付けられたくらいですから、年間数百人とかくらい?把握しているというか、表に出ているのでこれくらいですから、夢かも?というレベルならええとその1000倍くらい?は潜在的に存在するんじゃないかなぁ」

 ははあ、そのうちその型によってA型とかB型とか分類されるんですね。わかります。

「いやまあ、そういう流行り病とは違う、とも言い切れないのかな?一応流行とかもあるかもしれないですしねー、あ、そういう分類を試みているチームもありますね」

「その割には、あまりニュースにナッテいないネ」

「現象そのものに沈静化するための仕組みが組み込まれているというか、まあ、少し騒ぎになるんですけど、いつ間にか陳腐化?常態化?するようですね。狭いコミュニティで完結する傾向があるようです。あと一応管理側も情報統制、制御?かな、それをしていますしね、日常生活が脅かされない程度に」

「へーすごいんですね」尊敬の眼差しをれーねいさん向けるゆーきくんです。

「そうよ、後輩くんはすごいんだから!」胸を張るのはなぜかゆーきママです。「?」という顔をするゆーき少年に対して、

「だって、私が鍛えたんだからね!」いい笑顔と、サムズアップです。

「ええ、いろいろセンパイがやらかしてくれましたから自然とね」あ、修羅の笑みが見える。冷や汗を流しつつ、明後日の方向へ視線を向けるゆーきママさんでした。


「それで、今回のゆーき少年の件なんですが、直接私も関わりがあるので直接きました、つまりあの世界の記憶を持つ騎士レイナですね」普通この手の話では当事者は正確な判断ができなくなるかもしれないから現場から下げられるのではないですか?

「記憶障害の対象を生まれた時から知っているという特殊性が考慮されました、建前では」

 では、建前でなく本音では?

「私のゆーき君を他の人に任せるわけないじゃないですか?」あ、真顔だ。「あわよくば、他のライバルを事前に排除したかったのですが」あ、目がマジだ。

「えと、なにそれこわい(T . T)」あーガーベラさん、怖がってますね。


「ちょっと待っってよ?ESPによる共通幻想が原因の恋愛感情に従うって、何か変じゃないの!」なっちゃんさんが突っ込みますね。

「まあ、建前として?というか、無理やり科学知識に当てはめるとそう説明できるということですから、そう言っているだけで、あの世界は私たちにとって、リアルでしたしね」

「そうそう、五感とかそれを超越した感覚とかまで現実的でしたし( ´ ▽ ` )ノ」

 ねーという感じで同意しあう、勇者ゆーき御一行さまですね。


 そもそものところ、それがESPによる共通幻想であろうが、それとも本当に異世界に生きた記憶が今生に蘇ったのであろうが、それが現実と見分けがつかないのであるのならば、それは現実と変わらないのじゃないかな、と、地の文は思うのですよ。


「世界は観測することによってつくられる、とか言われていましたっけね」ゆーきママ、そこに転がっているのはイッショウ瓶でしょうか?ほんのりと頬が赤くなっていますね。

「大丈夫大丈夫、まだよってないよー」あ、酔っ払いのセリフですね。「まだ一斗も飲んでないですから大丈夫大丈夫」物理的に18Lは入らないでしょう。


「異世界という概念は、神話の時代から存在しています、只人が神域に迷い込むとか、死後の世界とか、それが時と空間を超えて、とかもっとらしい科学的な根拠らしきものを説得材料にして、お話が作られるようになってきたわけですね」れーねいも米の酒を飲みながら言います。「いいですねこの銘柄」「気鋭の酒造の新酒ですよぅ」「おかーさんおつまみの追加どうぞです」「おおいい子だねぇ」


「そもそも並行世界、parallel world とか言い出した人物は諸説ありますが、基本空想科学物語の作者が語源とか言ってそう間違いではないわけで、これをまた真面目に研究する科学者としては、量子力学の分野で引っ掛けている人が多いですね」サクサクと手元の端末を操作して資料を提示しながら、甚平のれーねいが続けます。

 量子力学とは、量子(quantum)、構成単位の最少のものの、それの振る舞いを研究している学問のことを言います。

「ほへー(´Д` )」いやおバカな対応をされても困るのですけど。

 

 ええと、いろいろな物が小さな粒の集合でできているという事は知ってますよね?とてもとても小さな粒粒が集まってできているのです。その粒はさらに小さな粒でできていて、その小さな粒粒もまたさらに小さな粒でできていて、という感じでどんどんその物を作っている粒を分解していくと、それ以上分けられない粒にたどり着きますよね?

「まあ、わかります( ´ ▽ ` )ノ」

 それら小さな粒をを量子と呼びます。その量子の様子を研究する学問のことを量子力学と言います。

「ふんふん(^ ^)」

 でそれの話題?基礎的な方程式が以下になります。


ih d/dt | ψ(t)〉=H|ψ(t)〉.


「( ? _ ? )」

 まあ、数学記号を表現するフォントを探すのが面倒くさかったので、表記はちょっといい加減ですが、シュレーディンガー方程式と思ってください。

「あー猫の人ですネ」文学的にはそちらの方が有名でしょうね、あのたとえ話もちょっと意味するところが違うのですが、意味というかシュレーディンガーさんが意図した方向とは違うという意味ですが。


「ちょっと待っってください」おや?再起動しましたか?宇喜多会長、それでなんでしょうか?

「私たちはコメディーの物語をしていたのではないのかね?」

 あーなるほど、でも、まあ、お話が明後日の方向へと行くのは何時ものことですし、この展開もまたコメディーと言えなくもないのではないでしょうかね?

「一理あるな!」あれ、あっりさ納得してしまいましね?


 それはそれで、また捻くれたくなるなぁと、不穏当な独り言を言いつつ


「「「おい」」」


 次回も量子力学のお話が続くかも知れません。







 












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