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其れは例えば宝石の様な  作者: 弦月 雪啼
雷霆の主と菫の花
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収束

コンテナルームにて、家達と秋津を送り出した数分後に怪盗が持つスマートフォンに一通の電話が入った。それは彼のものではなく、ドゥーベから預かったものだ。彼はその電話に出ると、ドゥーベの声や態度を模して話す。

「はーい。此方何でも屋Big で…」

『どうなってるんだ!毒殺に失敗し、狙撃も未だに出来ていない。この有り様じゃあ成功報酬も減らさざるを得ないなぁ!?』

「ああ、それは大変申し訳ございません。」

心にも無い様に謝罪をすると電話先の男_粟坂はヒートアップし長々とクレームを言っていた。その間に怪盗は自身の携帯で槌田へ連絡を入れた。事前に打ち合わせした通りに、携帯会社へ逆探知を依頼するためだ。

そして、クレームが口汚く理不尽な罵倒へと変化したのを聞き流していると自身のスマホに特定が完了した旨のメールで送られてきた。それを確認すると粟坂の話を適当に流して電話を切った。

粟坂の事は彼方に任せ、怪盗は本来の目的を果たす為に家達に電話を掛けた。勿論、彼等が葉山を捕らえられたであろうタイミングを見計らって。


◇◆


若い男_ドゥーベが自己紹介を済ませ、伊狩の車に乗り込み粗方の事情を話し終わった頃だった。

プルルル プルルル

不意に携帯のコール音が車内に響く。すると、車内に緊張した空気が流れる。

「来たか。」

「おう。」

しかし、意外にもドゥーべはフランクに話し始めた。

「あーもしもし?

……おう、お疲れ。んじゃまあ、パーティと洒落込みますかねぇ。場所送ってくれーい。

あ?そういやお前どうすんの?

はあ、まあいいや。

ほーい、んじゃな。」

必要最低限の情報を共有するだけの短い通話だった。とてもではないが雇主との通話とは思えない。

「今のは仲間か。」

「そそ、預けてた携帯に連絡来てな。あっちで逆探知したってさ。」

「成程、この場で電話が掛かって来たところでどうする心算なのかと思えば。」

「まあな。俺が対応するとは一言も言ってねーし。」

そんな会話をしているとドゥーベの携帯電話に一通のメールが届く。彼はそれを確認すると画面を伊狩に見せる。

「この住所だってよ。」

「了解した。」

伊狩は車を走らせ、その住所に向かった。


◇◆


「どうなってるんだ!毒殺に失敗し、狙撃も未だに出来ていない。この有り様じゃあ成功報酬も減らさざるを得ないなぁ!?」

とある雑居ビルの一室、オフィスとして使用される事が想定された部屋に男の怒鳴り声が響く。その手にスマホが握られており、どうやらその先に居る誰かに向かって怒鳴っているらしい。

「謝る暇があるならとっとと依頼を熟してくれ!間に合わなくなるだろ!」

そんな風に長々とクレームを入れ、電話を切った。苛立ちをありありと表す様にどかりと椅子に座り、貧乏ゆすりをする。そして、しきりに腕時計を確認して双眼鏡を覗いては悪態をつく。そんな事を繰り返してどれ程経っただろうか。

突如、ドゴン!という音と共にフロアが騒がしくなる。何事かと思い、男_粟坂は室外の警備をしているボディーガードに連絡をとる。

「何があった!?」

『そ、それがっ怪しい二人組の男が扉を壊して入ってきて…うわぁっ!』

「おい!どうした?応答しろ!おい!…クソっ」

通話が途切れ、状況が理解出来ずに粟坂は混乱し焦る。

(クソッ何だ?何が起こってるんだ!?)

そう思考した時だった。

ドゴンと言う破壊音と共に扉が吹き飛んだ。驚いて振り返るとそこには、大斧を担いだ赤いメッシュが入った髪のガラの悪い男がいた。粟坂には覚えのある男だ。

「おい!貴様、ドゥーベとか言ったな?どういう心算だ!?俺が雇い主だろう!」

「悪いなおっさん!嵌めさせて貰ったぜ。」

「何?」

「先約があったんだ。だから、報酬はいらねーよ。」

ドゥーベがニヤリと笑う。対して粟坂はクソッと吐き捨てると逃げる為に手前のドアを開ける。幸い、広いこの部屋には廊下へ出る為のドアが二つあるのだ。

しかし、その先には一人のガタイの良い男が立ち塞がっていた。

粟坂が驚愕に目を見開いたその瞬間。足をすくわれ、体勢を崩したところを鳩尾に一発重いパンチを入れられ気を失った。

その一部始終を見ていたドゥーベは携帯電話で依頼主に連絡を入れる。

「よお白いの、ミッションコンプリートだぜ。コイツの処遇はどうする?

あーうん。分かった、スピーカーにするわ。」

彼は耳に当てていたスマホを伊狩に向けスピーカーモードのボタンをタップした。そこから聞こえたのは伊狩にも聞き覚えのある、気の抜けた少女の声だった。

『あー聞こえるかな、伊狩さん。そこのドゥーベから事情は聞いたよね?そいつは好きにしてくれて良いから、今度ゆっくりお話ししない?』

「ほう、本当に君が糸を引いているんだな。良いだろう。こちらも話すべき事があるからな。」

そう言いながら、伊狩は目を鋭く細めた。

『よーし交渉成立!ありがとね、ドゥーベ。じゃ、またね~。』

「おう。報酬は弾んでくれよ。」

『おっけー!』

そんな会話で通話を終えると気を失った粟坂を連れてその場を離れた。


◇◆


「ごめん。ちょっと用事が出来ちゃった。」

千代木総合病院前、白い静謐からの電話を受けた采花は気まずそうに飛鳥と菫にそう謝った。

「別に良いけど、姉さん一人で大丈夫?迷わない?」

「待って飛鳥。僕を幾つだと思ってるの?」

「迷子癖は幾つになっても治らないと思ってるよ。」

「それは…そうかもだけど…と、とりあえず行って来るね!」

「はいはい、行ってらっしゃい。」

いまいち釈然としない顔の采花を飛鳥は呆れ顔で送り出す。傍から見ればどちらが年上なのか分からなくなる姉弟だ。

「飛鳥お兄ちゃん楽しそうだね!」

「まあ、久しぶりに姉さんと話したからね。」

そう答えた彼の顔は嬉しそうに笑っていた。


一方、一人で病院を後にした采花は呼び出されたマンションへと足を進めていた。閑静な住宅街の寂れたアパート、その一室が目的地である。道中、道を間違えて迷っていたところを親切な少女に助けられるというハプニングはあったもののなんとか辿り着いたのだ。

そして、とある一室のインターホンを押し声を掛ける。

「着いたよ~。」

すると、軽い足音の後に扉が開き、白い静謐が出迎えた。

「態々ありがと~入って。」

彼女の平時よりほんの少し暗い表情に気が付いた采花はストレートに疑問をぶつけた。

「ん?どした~何があった?」

「あ~っとね…ちょっと気分の良いものじゃないんだけど視て欲しいものがあってね。」

苦笑いで中に案内する白い静謐。付いて行った先には目を覆いたくなる様な凄惨な光景が広がっていた。殺風景だがごく一般的な部屋には似つかわしくない多量の弾痕に、苦悶の表情で絶命する拘束された黒い服の集団。

采花が思わず顔を顰めるのと同時に白い静謐は彼等がC.C.の実行部隊である事や、作戦は殆ど成功だった事、捕らえようとしていた彼等が突如苦しみ出した事を話した。それを聴きながら采花は遺体をじっと見つめる。

「…死因は魔術で間違い無いね。痕跡が残ってる。」

「具体的には?」

「感染呪術の類だよ。ほら、丑の刻参りみたいなやつ。相手はパペッティアかなぁ?」

「へぇ。」

白い静謐は興味深そうに目を細めた。

今回、彼女等の思惑は二つ。人工衛星ハタタガミの操作権の入手とC.C.の捕縛。田辺の暗殺を阻止すればC.C.は粟坂からの情報を得る事が難しくなると判断するだろう。ならば直接葉山に狙いを定めるのではないか。そう考えた白い静謐は葉山の潜伏先を偽装する事で彼の安全を保障し、尚且つ彼の誘拐にやって来たC.C.のメンバーを拘束しようと企んだ。その為に葉山の潜伏先を突き止め、監視カメラからその姿を消し、采花の提案で魔術的な痕跡の偽造も行った。

曰く、個人の位置を特定する魔術はそう多くなく、基本的には痕跡を追った最終地点のみが結果に反映されるのだとの事。

「しっかし口封じが早いねぇ。きっちり糸も切ってて手際が鮮やかだ~。この感じだと痕跡の偽造に気付かれるのも時間の問題かもよ。」

「ありゃま~若しや結構やるタイプの術師だった?」

「っぽいね。」

采花の忠告を聞いて、白い静謐は改めて気を引き締めた。


◇◆


DCCカンパニー本社ビルには通報により警察が駆け付け、一通りの事情聴取と現場検証を終えていた。

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